スペシャル 注目企業 東京ニューフェイス 中食の達人 季節の提案 オリジナル商品


注目企業 つくり手と売り手、両者の視点から新・農業ビジネスを発想する
農産業創造ベンチャー企業。

農業従事者の高齢化、低い自給率、TPPなど、様々な問題を抱える日本の農業界は、いま大きな転換期を迎えている。
このような時代に登場した株式会社農業総合研究所は、閉塞感漂う農業界に風穴を空ける存在と成り得るのか?
同社が展開する画期的なビジネスモデルに迫った。



株式会社農業総合研究所
「農業総合研究所」

三方よしのビジネスモデル「都会の直売所」を展開。
 株式会社農業総合研究所は、2007年の設立からわずか5年目にして、今期売上10億円を見込む急成長企業である。近年、農業系ベンチャー企業が続々と登場する中、ユニークなビジネスモデルでとりわけ注目度の高い企業のひとつといえるだろう。

 同社が展開する事業の核となっているのが「都会の直売所」である。現在全国に約1万4千以上の農産物直売所があると言われるが、そのほとんどは生産者に近い地方部に集中している。一方、都市部の消費者は、より新鮮で生産者の顔が見える農産物を求めているのだが、これまでは都市部を離れた直売所まで出かけなくてはならなかった。こうした都市部消費者のニーズに応えるために同社が開発した仕組みが、消費者の身近にあるスーパー内に直売所をそのまま移設してコーナー化する「都会の直売所」である。  
 
 現在、全国のスーパーなど50店舗以上に同社のシステムが導入されている。「生産地に農作物を集める集荷場を設け、生産者が農産物を持ち込み、価格と販売してもらいたい店舗名を記入したシールを貼っていただく。そうして集まった商品を当社が各契約スーパーの『都会の直売所』コーナーに直送します。生産者の手取りは売上の70%、残りの30%をスーパーさんと当社で分け合うというのが本事業の概要です。(及川智正CEO)」  
 
 従来の流通で販売した場合、生産者の手取りは30%以下といわれるが、「都会の直売所」では、仮に半分売れ残っても35%もの高い利益率を確保できる。生産者にとってうれしいメリットは、これだけではない。たとえばイチジクや桃などの果物は、一般的な販売ルートでは固い状態で出荷し、流通の過程で色づかせるため、せっかく熟したおいしい果物を売ることができない。ところが「都会の直売所」では、翌日には売場に並ぶので、熟れ頃の果物でも販売できる。これまで捨てていた商品が売上に変わるとあって、生産者の間で同社の評判がクチコミで広まり、当初20人の生産者からスタートした同事業は、いまや3千人の生産者が参加する事業へと拡大した。  
 
 一方、スーパーにとっても『都会の直売所』のコーナーを設けることで、売場に活気をもたらし、集客アップ、売上アップにつながるメリットがあるという。  
 
 「真夏の暑い午後1~2時頃は、どこのスーパーも閑散としているのに、レジには人を配置しなくてはならず稼働率が落ちる。ところが『都会の直売所』を導入していだいたスーパーでは、その時間帯に新鮮な野菜が届くことをお客様にアピールすることで集客アップにつながり、さらに肉や魚の特売をからめることで売上も上がったと感謝された。(及川CEO)」  
 
 もちろん消費者にとっても、鮮度がよく、一番おいしい食べごろの野菜・果物が購入できるのはうれしい限りで、同コーナーに足を運びたくなるのは当然のこと。つまり、農業総合研究所が開発したこのシステムは、つくり手、売り手のみならず、買い手にまでメリットをもたらす三方よしのビジネスモデルであるということができる。  
 
生産現場から販売現場まで実践した経験を活かして起業へ。
 株式会社農業総合研究所の代表取締役CEO・及川智正氏は、東京農業大学農学部を卒業後、半導体用産業ガス専門商社に入社。結婚を機に、妻の実家がある和歌山県に居を移し、念願だった農業の世界に足を踏み入れた。

 ところが、実際に農業をはじめてみると、どんなに頑張って野菜をつくっても、それを食べる消費者の評価を聞くことができない。ただつくって納めるだけで、ありがとうの言葉もかけてもらえない。そんな農業の現実に直面した及川氏は「このままではいけない」と思うようになり、2年目からは、自ら生産した農産物を独自に販売するルートの開拓に着手した。  
   
 「いろいろと失敗もあったが、農業をはじめて3年目に、大きく売上を伸ばすことができた。自分で営業をして、お客様の要望を吸い取って、その要望を満たしてあげればいいんだと確信した。(及川CEO)」  
 
 農業にビジネス感覚を取り入れることで結果をだした及川氏は、その後、地元の農家との交流を重ねるうちに、和歌山の一農家として情報を発信することの限界を感じるようになったという。次第に及川氏がめざす方向性は、農業で稼ぐことから仕組みづくりへと移っていった。そんな時期に、当時親交があった野菜ソムリエ協会の理事長から声がかかった。同グループ会社のエフ・アグリシステムズ株式会社関西支社設立を要請され、同支社長に就任。及川氏は、そこでブランディングや八百屋の運営などを手がけた。  
 
 こうして、つくることと売ることを経験した及川氏は、その両方のノウハウを活かした新事業を起ち上げるべく、2007年、株式会社農業総合研究所を設立。「持続可能な農産業を実現し生活者を豊かにする」というビジョンを掲げてスタートした。  
 
 「数ある農業ベンチャーの中でも、社長が現場で農業を経験して、売る苦しみを知っている会社はないのではないか。わが社には豊富な資本力があるわけではないが、私自身が農業をやって、八百屋をやって、真剣に農業の未来を考えている。これこそがわが社の資本だと思う。(及川CEO)」  
 
 画期的なビジネスモデルで急成長を続ける同社に、いま流通業界はもとより多方面の業界から注目が集まっている。昨年は道路公団やホームセンター・コーナンとの共同事業で直売所をオープン。さらに大手メディアとのコラボレーションで都会の農園をつくる計画も進行中とのこと。及川氏への取材依頼や講演依頼も後を絶たず、いまは月一回のペースで講演のために全国各地を飛び回っている状況だ。日本の農業が産業として確立するその日まで、及川氏のチャレンジは続く。  
 
 

農産物委託販売のフロー図




生産者にも喜ばれている。



農業総合研究所CEO及川智正氏



copyright©2011 foodkurumu All rights reserved. | お問い合わせ