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営業許可制度とは?制度、見直し後の内容や注意点について紹介

2021.08.03

営業許可制度の重要なポイントなどを解説

2018年6月13日に「食品衛生法等の一部を改正する法律」が公布され、営業許可制度の見直しが行われました。営業許可を受ける店舗や施設においては、制度の変更がどのような影響を及ぼすのか気に掛かるところでしょう。

この記事では食品事業者向けに見直し後の営業許可制度について、重要なポイントや注意点を中心に解説します。

食品衛生法の営業許可制度とは

まずは、食品衛生法の営業許可制度とはどのようなものかについて解説します。
現在、食品衛生法において飲食店の開業や食品加工施設の建設の際には、所管の保健所から営業許可を受けることが定められています。

食品衛生法で営業許可が必要と定められた仕事は、飲食物の製造・加工・提供です。
より細かく区分すると34の業種に分けられています。
ただし、2018年6月13日の法改正では32業種に変更されており、2021年6月1日から変更後の業種区分が適用されているので注意しましょう。

業種によって必要な設備や専門知識などが異なるため、営業許可を取得するにはそれぞれの業種ごとに申請を行なう必要があります。許可の基準に関しては各自治体に委ねられる部分も大きいため、自治体の情報に目を通しておくとよいでしょう。

なぜ営業許可制度の見直しが必要なのか?

そもそも、なぜ営業許可制度が見直されることになったのか、その背景について紹介します。

営業許可制度が見直される以前は飲食店営業、食肉販売業など、許可業種は34種類に区分されていました。さらに、自治体が独自に業種を定めている場合もあり、実際にはより多くの業種があったといえるでしょう。
許可業種が細分化されていたことから、1つの事業所で飲食店営業・食肉販売業・魚介類販売業など複数の許可申請が必要なことも珍しくありませんでした。
事業形態を変更する際に業種を追加するケースも多く、追加の申請にも手間がかかっていたと考えられます。

また、一部の自治体では独自の条例で届出制度を定めていますが、それ以外の自治体では営業許可業種以外の業種(液卵製造業や漬物製造業など)の状況を把握することができていませんでした。

このような区分が近年、食の多様化の流れにそぐわないことが課題として挙げられるようになり、営業実態に合った制度へ見直されることになりました。

上図は東京都福祉保健局のパンフレットから抜粋した、営業許可・届出制度の現在と変更後をまとめたものです。
ここからは変更前と後、それぞれの制度を比較してみましょう。
※東京都の資料を参考にしているため、自治体によって一部異なる可能性があります。

変更前の許可・届出制度

変更前の食品衛生法の要許可業種は、飲食店営業、そうざい製造業、菓子製造業、乳類販売業、食肉販売業など、34業種に分けられていました。
加えて要許可業種としてそれぞれの自治体が独自に定めたものがあり、例えば東京都であれば弁当等人力販売業、食料品等販売業、漬物製造業などが要許可業種でした。また要届出業種に関しても各自治体が定めており、東京都では給食供給者、卵選別包装業者、行商の3つが該当しました。
要許可業種と要届出業種のどちらにもあたらない業種に関しては、許可も届出も不要でした。
これには、野菜果物販売業、運搬業、瓶詰・缶詰食品の販売業などが該当します。

2021年6月1日以降の許可・届出制度

2021年6月1日より、食中毒のリスクや、過去の食中毒の発生状況などを踏まえて設定された、新たな許可業種が適用されました。

この新しい業種区分では、原材料や製造工程が共通する業種についての統合がされました。さらに1つの許可業種で取り扱うことのできる食品の範囲も拡大されたため、複数の許可を申請するケースは少なくなるでしょう。
また以前の要許可業種のなかでも、乳類販売業など食中毒リスクが低いと考えられる一部の業種に関しては要届出業種へと移行されています。

こうした営業許可業種の見直しを受けて、許可の要件である施設基準も改正されたため、施設や設備などの確認も必要です。
変更点の一つとしては、「流水式手洗い設備の水栓は洗浄した手指の再度の汚染を防ぐことが可能な構造でなければならないこと」が挙げられます。洗浄したあと蛇口を閉める動作によって再び汚染されることがないよう、肘で操作ができるレバーハンドルを設置したり、センサー式にしたりすることで基準に適合できるでしょう。


ここまでが、2021年6月1日以降の許可・届出制度の概要です。
ここからはこれらの変更が反映された新たな許可・届出制度の内容について見ていきます。
変更後の食品衛生法の要許可業種は、飲食店営業、そうざい製造業、菓子製造業、漬物製造業、冷凍食品製造業、食肉販売業などの32業種です。


また、食品衛生法の要届出業種は、食品衛生法の要許可業種および届出が不要な業種以外すべてと定義されています。要許可業種、届出不要業種に該当しない営業者は、必ず管轄の保健所に営業の届出をしましょう。

なお届出が不要な業種は、「食品または添加物の輸入業」、「食品または添加物の貯蔵または運搬をする営業(冷凍・冷蔵倉庫業は除く)」、「常温で保存可能な包装食品のみの販売業」、「合成樹脂以外の器具容器包装の製造業」、「器具容器包装の輸入または販売業」が定められています。

2021年6月1日以降の営業許可業種32種

以下の32種が、新たに営業許可の対象となるため、食品事業者の方は確認をしておきましょう。

新許可業種 対応する旧許可業種
1.飲食店営業 飲食店営業
喫茶店営業
2.調理の機能を有する自動販売機により
食品を調理し、調理された食品を販売する営業
飲食店営業
喫茶店営業
(自動幅域)
3.食肉販売業 食肉販売業
(容器包装に入ったもののみの販売は除く)
4.魚介類販売業 魚介類販売業
(容器包装に入ったもののみの販売は除く)
5.魚介類競り売り営業 魚介類せり売営業
6.集乳業 集乳業
7.乳処理業 乳処理業
乳酸菌飲料製造業の一部
8.特別牛乳搾取処理業 特別牛乳搾取処理業
9.食肉処理業 食肉処理業
10.食品の放射線照射業 食品の放射線照射業
11.菓子製造業 菓子製造業(パン製造業を含む)
あん類製造業
12.アイスクリーム類製造業 アイスクリーム類製造業
13.乳製品製造業 乳製品製造業
乳酸菌飲料製造業の一部
14.清涼飲料水製造業 清涼飲料水製造業
乳酸菌飲料製造業の一部
15.食肉製品製造業 食肉製品製造業
16.水産製品製造業 魚肉ねり製品製造業
17.氷雪製造業 氷雪製造業
18.液卵製造業
19.食用油脂製造業 食用油脂製造業
マーガリン又はショートニング製造業
20.みそ又はしょうゆ製造業 みそ製造業
醤油製造業
21.酒類製造業 酒類製造業
22.豆腐製造業 豆腐製造業
23.納豆製造業 納豆製造業
24.麺類製造業 めん類製造業
25.そうざい製造業 そうざい製造業の一部
26.複合型そうざい製造業※ そうざい製造業の一部
27.冷凍食品製造業 食品の冷凍又は冷蔵業の一部
28.複合型冷凍食品製造業※ 食品の冷凍又は冷蔵業の一部
29.漬物製造業
30.密封包装食品製造業 缶詰又は瓶詰食品製造業
(冷蔵流通するもの、はちみつ、酢は除く)
ソース類製造業の一部
31.食品の小分け業
32.添加物製造業 添加物製造業

※複合型そうざい製造業、複合型冷凍食品製造業に関して、HACCPに基づく衛生管理の実施を前提として、菓子・麺類・水産製品(魚肉練り製品を除く)の製造、食肉の処理にあたっては追加の許可が必要ありません。

営業許可制度改正のポイント

ここまで、営業許可制度の改正について背景や概要など解説してきましたが、まだよくわからない点がある方もいるでしょう。ここからは営業許可制度の改正における重要なポイントや注意点をまとめて見ていきます。

まず前提として、従来の食品衛生法による営業許可制度は近年の食の多様化にマッチしておらず、営業許可の申請が複雑化していました。そのため、申請の手間や食中毒リスクなどの健康被害に考慮した新たな業種区分の検討が必要となったことが営業許可制度改正の発端です。

また、営業許可業種の見直しにともない、新たに食品を扱う事業者に対する届出制度が作られました。これまでは営業許可制度の対象ではなかった業種も、新制度では届出の対象となる可能性があるため注意しましょう。要許可業種と違い、要届出業種では施設要件はありませんが、食品衛生責任者については要許可業種と同様に設置が必要です。

新制度で食品衛生法の要届出業種にあてはまる事業者は、所轄の保健所まで届出を行なう必要があります。新制度は2021年6月1日をもって施行されていますが、2021年5月31日以前に営業をしている事業者の届出は、2021年11月30日までが期限となります。ただし、旧制度で要許可業種だった業種が新制度で要届出業種に移行している場合には、届出は必要ありません。

届出は手数料がかからず、また有効期限もないため、一度行なった後は更新不要です。ただし例外として、届出内容に変更があったり、事業を統廃合したりする場合には再度届出を行なってください。

食品衛生申請等システム

厚生労働省が運営する食品衛生申請等システムのページより、営業許可申請や営業届出をすることができます。
従来は、営業許可申請や営業届出をするには管轄の保健所の窓口で手続きをしなければいけませんでしたが、2021年6月1日より、オンラインにて手続きできるようになりました。
※従来通り、紙による窓口への申請・届出も引き続き行なえます。

食の多様化によって営業許可制度の見直しが行われた

飲食店の開業や食品加工施設の建設の際には食品衛生法の営業許可制度により、所管の保健所から営業許可を受けることが定められています。
従来の営業許可制度は、許可業種の区分が近年の食の多様化の流れに合っておらず、加えて自治体ごとに独自に定めた業種が存在したことなどから、申請の複雑化や食中毒リスクなどの課題を抱えていました。そこで、営業許可制度の見直しが行われました。

改正後の制度では、原材料や製造工程が共通する業種が統合されるなど、新たな許可業種区分が設定されました。また、1つの許可業種で取り扱うことが可能な食品範囲を拡大する、中毒リスクが低いと考えられる一部業種が届出に移行されるなどの変更も行なわれており、課題の解決が図られているといえるでしょう。

制度の変更による注意点として、新たに要届出業種と設定された業種に属する事業者は、所轄の保健所まで届出を行なう必要があることが挙げられます。すでに営業中の飲食店の場合は2021年11月30日までに届出を行なってください。
改定後の営業許可制度をしっかり理解し、基準や期日を順守したうえで許可や届出の申請を行ないましょう。

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