
食品工場における異物混入問題と対策の重要性
 
  食品工場において、製品への異物混入は重大事故であり、絶対に防がなければなりません。
異物が混入した食品は、消費者の健康を害するだけでなく、企業の信用を失墜させ事業活動に深刻な影響を与える可能性があります。
消費者は食品に対して、「安全であること」を当然のものとして期待しています。
しかし、製造工程の複雑化や原材料の多様化に伴い、意図せず異物が混入してしまうリスクは増大しているといえるでしょう。
万が一、食品への異物混入が発覚した場合、企業は原因究明、回収、謝罪などに追われ、多大な時間とコストを費やすことになります。
また、一度失った消費者の信頼を取り戻すことは非常に困難であり、長期的な売上減少に繋がる可能性も否定できません。食品工場における異物混入対策は、企業にとって事業継続のために不可欠な要素といえるでしょう。
なお、ここで取り上げる「異物」は特性や由来により、以下の3種類に分類されています。
| 異物の種類 | 具体的な例 | 
|---|---|
| 動物性異物 | 人の毛髪や爪、皮膚、血液など。虫やネズミ、鳥類などの身体や排せつ物など。 | 
| 植物性異物 | 植物や種子、木片や花粉など。カビや細菌、紙類やゴム片など。 | 
| 鉱物性異物 | 石や砂、金属やガラス、セラミックなど。樹脂や貝殻編など。 | 
上記の異物は特性が異なり、製造過程のあらゆる段階で混入する可能性がありますが、種類によらず混入検知するための対策が重要です。
そこで有効なのが、「金属検出機」と「X線検査装置」をあわせて効果的に活用する方法です。
 
金属検出機は金属異物に特化し、高感度で迅速な検査を実現します。
一方、X線検査装置は金属だけでなく、ガラスやプラスチック、密度差のある異物も検出できるため、より包括的な検査体制を構築できます。
両者を組み合わせることで、検出能力の向上だけでなく、異物混入リスクの高い工程への重点的な配置や、検出漏れのリスクを最小限に抑えることが可能です。
 
この記事では、金属検出機とX線検査装置の仕組みや、効果的な活用法について解説します。
安心・安全な食品を提供し、企業の信頼とブランド価値を高めるため、ぜひ参考にしてください。
【金属検出機】金属異物混入を未然に防ぐ仕組みとメリット
食品工場で発生する異物混入問題の中でも、特に金属異物は健康被害のリスクが高く、厳重な対策が求められます。異物として検出される金属は、主な事例として下記の内容が挙げられます。
- 鉄やステンレス、アルミニウムなどの金属
- 製造機器の一部やネジなどが錆び・劣化により脱落したもの
 
- 製造機器の摩耗により生じた金属粉が混入したもの
金属異物の混入を未然に防ぐための代表的な装置が「金属検出機」です。ここでは、金属検出機の仕組みやメリットについて解説していきます。
金属検出機の仕組みと検出感度
金属検出機は、電磁誘導の原理を利用して金属を検出します。
装置内部に設置されたコイルに電流を流すと磁場が発生し、そこに金属が通過すると磁場の変化をセンサーが検知する仕組みです。
 
機種や設定によって異なりますが、検出感度は一般的には磁石に付く力が強い磁性金属(鉄、ニッケル、コバルトなど)の方が高く、磁石に付かない非磁性金属(銀、銅、アルミニウム、ステンレスなど)のほうが低くなります。
さらに、製品や原料も金属検出機が発生させる磁場に影響を与えるため、水分・塩分が高いもの、大きな塊状のものなどは検出感度を下げる可能性があります。
検出可能な金属の種類とサイズ
金属検出機は対象により検出感度に差があるものの、鉄やステンレス、アルミニウムなど、さまざまな金属が検出可能です。
検出できる金属のサイズは、検出感度や製品の形状、通過速度などの要因によって異なります。
最新の金属検出機には、φ0.2mmのステンレス針金など極微細な金属片まで検出可能な機種も登場しています。
食品工場における設置場所と運用方法
金属検出機は、製品ラインの最終工程や包装工程など、製品出荷前の段階に設置されることが一般的です。
それに加え、原材料の入荷時や製造工程の要所など、異物混入リスクの高い工程にも設置されることがあります。
いずれにしても、運用にあたっては定期的なメンテナンスや感度調整が欠かせません。
具体的なメンテナンスには、定期的な清掃のほか、検出コイルに損傷がないかどうかの確認などがあります。
 
また、製品の形状や材質の変化、ライン速度の変更など、検出条件が変化する際には、あらためて感度調整を行う必要があります。
これらの作業を適切に行うことで、検出精度を維持し、異物混入のリスクを最小限に抑えることができるのです。
異物が検出された場合は、記録や分析の実施により、異物混入の原因究明や対策につなげることが重要です。
【X線検査装置】X線で内部まで見える!金属以外も検出可能
金属以外の異物を検出し、包括的な混入対策を行うためには「X線検査装置」をあわせて活用するのがおすすめです。
ここからは、X線検査装置の特徴や検出可能な異物、食品の品質検査における活用方法について詳しく解説します。
X線検査装置の仕組みと特徴
X線検査装置は、レントゲン撮影と同様にX線を照射して対象物を透過させることで、内部の状態を可視化する装置です。
X線検査装置は、製品内部の異物を検出するだけでなく、製品の形状や充填状態などを検査することも可能です。
非破壊検査であるため、製品を傷つけることなく検査できる点も大きなメリットといえるでしょう。
検出可能な異物
X線検査装置は、金属だけでなく、ガラス、プラスチック、骨、セラミックなど、さまざまな種類の異物を検出することができます。
特に、金属検出機では検出が難しい製品内部に隠れている異物や、包装に使用されているアルミ蒸着フィルムなどに隠れている異物も検出可能です。
 
しかし、検出感度は異物の種類やサイズ、製品の材質、包装材の種類などによって大きく異なります。そのため、最適な検査条件を設定することが重要になりますが、X線の透過力や感度、検査速度などを調整することで、検出精度を高められます。
 
以下に、代表的な異物と検出のしやすさをまとめました。
| 異物の種類 | 検出のしやすさ | 備考 | 
|---|---|---|
| 金属 | 検出しやすい | 鉄やステンレスなど、種類によって検出感度は異なる | 
| ガラス | 検出しやすい | 厚みや形状によって検出感度は異なる | 
| プラスチック | 検出しにくい場合がある | 密度が高いものほど検出しやすい | 
| 骨 | 検出しやすい | - | 
| セラミック | 検出しやすい | - | 
| 石 | 検出しやすい | - | 
食品の品質検査にも活用可能
X線検査装置は、混入異物の検出だけでなく、食品の品質検査にも活用できます。
例えば、以下の項目を検査することができます。
- 充填量の確認:製品内部の充填量をチェックし、不足や過剰がないかを検査
- 形状の確認:製品の形状が規格通りに保たれているかを検査
- 内部状態の確認:製品内部の気泡や亀裂などを検出
このように、X線検査装置は食品工場における異物混入対策だけでなく、品質管理にも有効なツールといえるでしょう。
金属検出機とX線検査装置の効果的な活用法
 
  X線検査装置は金属を含めたあらゆる異物を検出できるため、「金属検出機は不要では?」と考える方もいるかもしれません。
しかしX線検査装置は、異物の厚みが薄くなるほど検出しにくくなる特性があるため、金属検出機を併用して運用することで万全の異物混入対策が可能になるのです。
 
ただし、食品工場において金属検出機とX線検査装置を効果的に活用するには、それぞれの装置の特徴をよく理解し、工程や製品特性、リスクに応じて適切に使い分けることが重要です。
 
ここからは、具体的な活用方法を3つのポイントに絞って解説します。
工程や製品特性に合わせて検査機器を使い分け
金属検出機とX線検査装置は、それぞれ得意とする検査対象や感度が異なります。
単体での運用はもちろん可能ですが、併用することでより高いレベルの異物混入対策を実現できます。
それぞれの装置の特性を理解し、工程や製品特性、リスクに応じて適切に使い分けましょう。
 
以下に、工程や製品特性に合わせた具体的な配置例を紹介します。
【ケース1】金属片混入リスクの高い工程
- 金属検出機を第一段階の検査として設置:高感度で金属片を検出し、除去します。
- X線検査装置を第二段階の検査として設置(任意):金属以外の異物混入の可能性も考慮する場合に有効です。金属検出機で検出できない異物や、製品内部の異物を検出します。
 
【ケース2】包装工程直前(最終工程)
- X線検査装置を第一段階の検査として設置:金属以外の異物、特に製品内部の異物や包装に隠れた異物を検出します。
- 金属検出機を第二段階の検査として設置:X線検査装置では検出しにくい微細な金属片を検出します。
 
【ケース3】粉末製品の製造ライン
- 金属検出機を原材料受け入れ時、製造工程中、最終工程に設置:工程全体を通して金属異物の混入を防ぎます。
異物混入リスクの高い工程への重点配置
食品製造ラインは多くの工程から成り立っており、工程ごとに異物混入のリスクは異なります。
そのため、リスクの高い工程を分析し、重点的に検査装置を配置することが重要です。
一般的に、原材料の入荷時や、製品が充填される直前、包装される直前などは、異物混入リスクが高い工程といえるでしょう。
これらの工程に金属検出機やX線検査装置を配置することで、異物混入を未然に防ぐことができます。
データ分析による工程改善
金属検出機やX線検査装置から、検査データを取得することができます。
このデータを分析することで、工程における問題点を洗い出し、改善につなげることが可能です。
例えば、特定の工程で異物検知が頻発する場合、その工程の作業環境や作業手順に問題がある可能性があります。
データを分析することで、問題箇所を特定し、具体的な改善策を立てることができます。
おすすめの検査機器メーカー
異物混入対策に最適な金属検出機・X線検査装置を選ぶためには、信頼できるメーカーの製品を選ぶことが重要です。
ここでは、実績と信頼性で選ばれている代表的なメーカーを3社ご紹介します。
株式会社イシダ
計量・検査包装機器のリーディングカンパニーである㈱イシダは、高精度で多機能な金属検出機、X線検査装置を幅広く提供しています。
食品業界での豊富な導入実績があり、さまざまなニーズに対応できるラインナップが強みです。
X線検査装置では、AI技術を活用して異物検出精度を向上させているモデルも登場しています。
 
  アンリツ株式会社
計測器メーカーとして知られるアンリツ㈱は、高感度で信頼性の高い金属検出機・X線検査装置を提供しています。
特に微小な金属片の検出に優れており、高い安全性を求める食品メーカーから支持されています。
同社の金属検出機は、独自のノイズ除去技術により誤検知を低減することで生産効率向上に貢献しています。
また、微小な金属異物も検出する高感度モデルも展開中です。
 
  株式会社システムスクエア
検査システムの開発・製造・販売を行う㈱システムスクエアは、食品だけでなく医薬品、化粧品、日用品、工業品など、あらゆる製品に混入した異物を自動で検出する異物検査機を提供しています。
 
  安心・安全な食品製造のために異物混入をゼロへ
食品工場における異物混入は、企業の信頼を失墜させる重大なリスクになり得ます。
金属検出機とX線検査装置を効果的に活用することでこのリスクを最小限に抑え、安心・安全な食品提供を実現させましょう。
異物混入対策は、単に検査装置を導入するだけでは不十分です。
製品特性や製造工程を理解したうえで、適切な機種選定、設置場所の決定、運用管理を行う必要があります。
 
フードビジネスのプロフェッショナルである「折兼」は、長年の経験と実績に基づき、お客様の製品特性や製造工程に最適な異物混入対策をご提案いたします。
金属検出機やX線検査装置の選定はもちろんのこと、設置場所の選定や運用方法、データ分析に基づいた工程改善まで、トータルでサポートいたします。
さらに、包装資材の見直しによる異物混入リスクの低減や、衛生管理の向上についてもご提案が可能です。
異物混入対策でお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
 
             
                                                              