
DIC・PANTONEカラーの知識を深めデザインの幅を広げよう
「DIC」と「PANTONE」の色見本帳は、色の正確な再現や表現の幅を広げるデザインに欠かせないツールです。
この記事では、DIC・PANTONEの基本や特色インキの種類、特色を使用するメリット・デメリットなどを解説します。DIC・PANTONEで印刷する際の色指定の方法や、IllustratorでDICカラーを設定する方法も紹介していますので、デザインの品質を高めたい方はぜひ参考にしてください。
特色といえばDIC・PANTONEカラー

特色はCMYKの4色では再現が難しい色を表現するために、あらかじめ調合されたインクを使った印刷方法です。
その中でも、日本の市場に特化したDICカラーと、世界標準のPANTONEカラーが代表的です。
DICは和風の伝統色を含む独自のカラーバリエーションが特徴で、国内印刷物に適しています。
一方、PANTONEは国際規格で、ブランドカラーの統一が求められる場面に強みがあります。どちらも色見本帳を活用することで意図した色を正確に再現でき、デザインの質を高める重要なツールです。
以下では、CMYK、DIC、PANTONEそれぞれの特徴について解説します。
CMYKとは?表現できない色はある?

CMYKとは印刷のカラー再現で使う4つの基本色のことで、プロセスカラーとも呼ばれます。Cyan(シアン)・Magenta(マゼンタ)・Yellow(イエロー)・Key plate(キープレート/黒・墨版)の頭文字をとって表したものです。
シアン・マゼンタ・イエローを組み合わせると、理論上は白以外のほぼすべての色を表現できるとされています。
しかし、CMYKには限界があり、以下のような色は再現が難しい場合があります。
鮮やかなブルー
CMYKは明るく鮮やかな青を表現するのが苦手です。これは青い光がRGB(デジタルの色の仕組み)の一部であり、CMYKのインクでは完全に再現できないためです。
明るいグリーン
明るく鮮やかな緑もCMYKでは難しい色の一つです。特に色の鮮やかさや明るさが強い場合、CMYKではそれを忠実に表現するのが難しくなります。
蛍光色
蛍光色はCMYKで再現することができません。蛍光色が特別な顔料や光の反射に依存しており、通常のCMYKインクではその効果を表現できないためです。
メタリックカラー
金属のように輝くメタリックカラーも、CMYKでは表現できません。これらの色は光の反射や金属の独特の輝きが必要で、CMYKではその再現が不可能です。
このような色を正確に表現するには、DICやPANTONEなどの特色を活用するのが効果的です。
DICカラーとは

DICカラーには「DICカラーガイド」という色見本帳があり、2,000種類以上の中から色を確認できます。また、金色や銀色、鮮やかな蛍光色といったCMYKでは再現が難しい色も、DICカラーの特色を使うと高い精度で表現することが可能です。
DICとPANTONEの違いと選び方
DICカラーは日本市場向けに最適化された特色インキの規格で、和風の伝統色や紙媒体に適した色が豊富です。一方、PANTONEカラーは世界標準のカラーマッチングシステムで、ファッションやインテリア、デジタル媒体にも対応する幅広い色展開が特徴です。
選び方としては、国内向けの印刷物やパッケージデザインではDICカラーが適しており、特に日本特有の色彩感覚を活かしたい場合におすすめです。
国際的なプロジェクトやブランドカラーの統一を重視する場合は、PANTONEカラーが便利です。
特色を使用するメリットとデメリット

特色を使うと、CMYKでは再現できない鮮やかな色や金銀色を正確に表現できるのが大きなメリットです。一方で、コストや印刷方法の制約がある点はデメリットといえます。
ここでは「色の再現度」「活用例」「オンデマンド印刷の制限」「印刷時の注意点」について解説します。特色の特性を知り、適切に活用することでデザインの魅力をさらに引き出しましょう。
最大のメリットは色の再現度
特色の最大の魅力は、CMYKでは再現が難しい色を正確に表現できることです。特に、ブランドロゴや高級パッケージで重要な金色や銀色、蛍光色なども鮮やかに再現できます。
また、印刷時に色ブレが少なく一貫性のある仕上がりが得られるため、色の正確さが求められるデザインで重宝されます。
ただし、紙やフィルムといった印刷媒体によって再現度が異なる点に注意が必要です。紙質が吸収性の高いものであれば色が沈んだり、フィルムのような非吸収性の媒体では色が鮮やかに発色したりする可能性があります。
効果をより発揮させる活用例
特色は、特にブランドの個性や特徴を確立したいシーンで効果を発揮します。企業ロゴや商品パッケージなどでCMYKでは表現が難しい色を正確に再現し、ブランドイメージを明確に伝えられるためです。また、高級感を演出したい場合は金や銀、蛍光色を活用すると効果的です。
さらに特色はイベント用ツールや限定商品でも活用されています。たとえば、ポスターや記念品のデザインに特色を加えると、視覚的なインパクトを高め特別感を演出できます。
オンデマンド印刷は不可
オンデマンド印刷とはデジタルデータを直接印刷する方式で、版を使わずに必要な数だけ印刷できる便利なシステムです。少部数の印刷や短納期に適しており、コスト効率も高いのが特徴です。
しかし、特色インキを使用した印刷には対応していません。オンデマンド印刷ではCMYKのプロセスカラーをベースに色を再現するため、あらかじめ調合された特色インキを使用できないのです。
そのため金や銀などのメタルカラー、蛍光色といった特色を使用する場合は、オフセット印刷※が必要になります。
※オフセット印刷:版に印刷されたインクをゴムのブランケットに転写(オフ)し、用紙に転移(セット)する印刷方式
印刷時の色の見え方に注意
特色を使った印刷では、実際の仕上がりが思った色と異なる場合があるため注意が必要です。特に、使用する紙の種類や質感、光の当たり方によって色の見え方が変化します。
たとえば光沢のあるコート紙では色が鮮やかに見えますが、マットな紙では落ち着いた印象になる可能性があります。
また、モニター上で確認した色と印刷結果が異なることも多く見られるケースです。
色見本帳で色を確認し、色校正で仕上がりをチェックするようにしましょう。
DIC・PANTONEで印刷する際の色指定の方法とは?

DICやPANTONEで印刷する際の色指定は色見本帳に書かれている色番号を印刷会社に伝えるのが基本的な方法です。印刷物を発注する際は希望の印刷色を伝えるために「DIC○○番」「Pantone○○番」のように指定ナンバーを伝えます。
色見本帳を持っていない場合は、DICやPantoneやアプリを参考にすることも可能です。
ただし、アプリの場合はモニターで色を見るため、モニターで見ている色と色見本帳の色では印象が異なる可能性があります。
特色印刷とフルカラー印刷の違いとは?
フルカラー印刷はCMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)の4色を掛け合わせて、多彩な色を再現する印刷方式です。写真やグラデーションなど色の幅広い表現が得意ですが、輝度や彩度が高い特定の色を正確に再現するのは難しい場合があります。
一方、特色印刷は、あらかじめ調合された専用インクを使用して特定の色を高い精度で表現する方法です。ブランドロゴやパッケージでの使用に適しており、金色や銀色、蛍光色といったフルカラーでは表現しづらい色を再現できます。
プロセスカラーとは?

プロセスカラーとは、CMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)の4色を混ぜ合わせて、さまざまな色を表現する印刷方法のことです。四色刷りとも呼ばれ、特に写真やグラデーションの再現が得意で、オフセット印刷で広く使用されています。
対して特色印刷では、あらかじめ調合された専用インクを使って特定の色を正確に再現します。プロセスカラーは多色再現に優れ、特色印刷は色の精度に特化している点が大きな違いです。
色指定はなぜ必要?
印刷物に色指定が必要なのは仕上がりをデザイン通りの色に近づけるためです。
たとえばPCモニターの色はメーカーや環境によって見え方が異なるため、印刷物で完全に再現できるとは限りません。また、紙やフィルムなどの印刷媒体や光の影響でも色の見え方は変わります。さらに、一口に「赤」や「青」といっても人によってイメージが異なるため、DICやPANTONEの色見本帳を活用し、具体的な色番号を指定することが必要です。
これにより「思っていた色と違う」といったトラブルを防ぎ、正確な仕上がりを実現できます。
特にブランドロゴや高級パッケージなど、色の正確性が求められるデザインでは、色見本帳を活用した明確な指示が欠かせません。
色指定は、デザイナーと印刷業者がスムーズに連携するための重要な手段でもあるのです。
グラフィックデザイナーは色見本帳を活用しよう

デザインのカラーリングや製品の色選びに、色見本帳は欠かせません。色見本帳には、色彩の実際のサンプルやCMYK値(印刷で使われる色の配合割合を数値で表したもの)、色番号、仕上がりの説明といった情報が記載されており、正確な色指定が可能になるためです。
また、関係者全員が共通の色認識を持てるため誤解が生じにくく、スムーズなコミュニケーションにつながります。
加えて、印刷時の色ブレ(印刷物の色が基準となる色と比べて変化したり、濃く見えたりすること)を最小限に抑え、高い再現性が得られるのも大きなメリットです。
印刷物を中心にデザインするグラフィックデザイナーには、色見本帳は必携のツールといえます。
IllustratorでDICカラーを設定する方法

Illustrator(イラストレーター)とは、Adobe(アドビ)社が提供するプロ向けデザインソフトで、印刷物やウェブデザインの制作に広く使用されています。このソフトでは、DICカラーガイドを活用して特色の設定が可能です。
ただし、IllustratorにはDICカラーが標準で搭載されていないため、外部からカラーデータをインストールする必要があります。DIC公式サイトから色データをダウンロードし、Illustratorのスウォッチ(Illustratorで使用する色やグラデーションを保存しておけるパレット)に読み込むと、特色の色指定ができます。

一方、PANTONEカラーはIllustratorに標準で搭載されているため、スウォッチライブラリからすぐに選択することが可能です。
特色印刷のデータ作成方法
特色印刷をおこなうには、デザインデータで特色インキを正確に指定しなければなりません。
以下は特色印刷のデータを作成する基本的な手順です。
まずはIllustratorでDICカラーを使用する方法を説明します。
- llustratorのウィンドウメニューに入り、「スウォッチ」をクリックし表示させます。
- スウォッチの左下部にある「スウォッチライブラリメニュー」をクリックします。
- カラーブックにある「DICカラーガイド」をクリックすると、DICカラーガイドのスウォッチが表示されます。
- 右上部にあるオプションメニューをクリックすると、リストが表示されます。
- 希望するDIC番号をクリックし、スウォッチに表示させます。
- 特色にしたい箇所を指定します。
特色を指定したあとは、スウォッチオプションでカラータイプが「特色」になっているかを確認しましょう。
続いては、Photoshop(Adobeが提供する画像編集ソフト)で特色を用いたデザインデータを作成する手順を紹介します。
- 画像の解像度を350dpiに設定し、カラーモードがCMYKになっていることを確認します。
- イメージメニューからモードを選び、画像をグレースケールに変換します。
- 再びモードを選び、ダブルトーンを選択します。
- ダイアログにあるインキ色を選択し、カラーピッカーからカラーライブラリを選択します。
- 使用したい特色を選び、塗りたい箇所を指定します。
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折兼には、パッケージのデザインからブランディングまでを行う専門スタッフがいます。
食品関連に最適なレイアウトからパッケージの形状や材質選びのほか、デザインまでワンストップでご提供しております。
お客様のご要望に合わせた提案をいたしますので、パッケージデザインでお悩みの方はぜひ折兼にご相談ください。
目的や媒体に応じた使い分けが必要
DICやPANTONEを活用した特色印刷は、CMYKでは再現できない色を正確に表現し、デザインの幅を広げられる手段です。特にブランドロゴや高級パッケージなど、鮮やかさや特別感を求められる場面で効果を発揮します。
その一方で、特色インキはコストが高く、オンデマンド印刷には対応しないといった制約もあるため、目的や媒体に応じた使い分けが必要です。
色見本帳やスウォッチを活用して適切に色指定することで理想的な仕上がりを実現させましょう。