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毛髪の混入を防ぐには?原因と対策を4つ紹介

2020.07.30

毛髪対策の重要性

毛髪混入問題は、食品を取り扱う企業にとって避けて通れない問題です。成人は、1日に約70本の毛髪が抜けると言われています。1日の労働時間を8時間とすると、労働時間中に約23本の毛髪が抜けます。従業員が20人とした場合、23本×20人=460本の毛髪が食品現場で抜けている計算になります。実際に、毛髪混入によるクレームの発生の件数データがあります。東京都福祉保健局の調査によると、平成30年度の東京都内の食品の苦情件数5,034件のうち、863件(17.1%)が異物混入による苦情でした。異物混入の中でも、人毛(毛髪など)混入は85件、約10%を占めています。

毛髪混入は直接的な人体への影響は少ないですが、企業の信用・イメージの悪化に繋がります。また毛髪には食中毒の原因にもなる黄色ブドウ球菌が付着している可能性があります。黄色ブドウ球菌は、健康な人でも、鼻や髪の毛、皮膚などに2~4割の割合で保菌していると言われています。毛髪混入対策は、避けては通れません。必ず対策をしましょう。
今回は、毛髪混入が発生する原因とその対策について述べていきます。

毛髪混入の原因とは?

毛髪混入の原因は、様々な理由が考えられます。

  1. 作業着に付着していた毛が混入
  2. 作業中に毛髪が落下して混入
  3. 床に落ちていた毛髪が舞い上がり混入
  4. 原材料や包装容器に付着していた毛髪が混入

上記のことなどが挙げられます。
どの原因にも共通しますが、「現場に毛髪を持ち込む」→「持ち込んだ・抜けた毛髪が落下する」ことで毛髪混入が発生します。それぞれの原因について、詳しく解説していきます。

1.作業服に付着していた抜け毛が混入

作業服に抜け毛が付着した状態で作業現場に入ってしまい、その抜け毛が食品に混入してしまうケースです。では、どんな時に作業服に毛髪が付着してしまうのでしょうか。
毛髪が作業着に付着するタイミングとしては、まず「更衣室」での付着があります。成人は1日に約70本の毛髪が抜けますが抜けた毛はすぐには落下せず、頭上で留まります。作業着に着替える際に頭上で留まっている抜け毛が作業着に付着してしまいます。また、その抜け毛が床にも落下するため更衣室の床には非常にたくさんの毛髪が落ちています。作業着を床に直置きすると毛髪が付着してしまいます。作業着のズボン、特に足首あたりにも落下した毛髪が付着しやすいです。作業着のまま更衣室で休憩するのも、毛髪付着の原因になります。

2.作業中に毛髪が落下して混入

作業中に毛髪やまつ毛などの体毛が抜けて落下し、混入してしまうケースです。
成人は、1日に約70本の毛髪が抜けると言われており抜けた毛はしばらく頭の中に留まります。作業着や帽子のサイズが合っていなかったり、正しく身に着けていないと隙間ができ、そこから抜けた毛髪が落下するおそれがあります。作業着の選定や身だしなみチェックを行い、毛髪落下を防ぎましょう。

3.床に落ちていた毛髪が舞い上がり混入


また、開封した商品が低い位置で保管されていると、床から舞い上がった毛髪が入りやすくなります。商品が衛生的に管理できているかも確認しましょう。

毛髪が舞い上がり混入

毛髪はとても軽いので、わずかな風でも舞い上がります。汚れ・帯電のない直毛は、わずか風速2.0m/s程度の風で移動するという実験結果もあります。(出典:佐藤ら,2001)人間が移動する時に発生する風も、およそ風速2.0m/sです。

毛髪が溜まりやすい場所

実際に、床の中央や人の通り道などには毛髪がほとんど落ちていませんが、壁際や機械の下などには毛髪が落ちていることが多いです。毛髪が溜まりやすい場所の清掃が不十分だと、毛髪混入のリスクが高まります。特に、機械や棚と床の間が狭い場合は掃除がしにくく、毛髪が残りやすいです。

清掃の役割分担が不明瞭なエリア

清掃の役割分担が不明瞭なエリアは清掃不足に陥りやすく、毛髪が溜まることが多いです。清掃しやすい環境を作るとともに、従業員全員がマニュアル通りに清掃・洗浄作業をするようにしましょう。また、落下した毛髪が発見しやすいように、照度も考慮しましょう。

エアシャワー室からの混入

毛髪が床に落ちる原因は、作業服や頭部からの落下以外にも、エアシャワー室からの混入があります。エアシャワー室内には、風で吹き飛ばされた毛髪が 多数存在します。風が出ている状態でドアを開けてしまうと、現場へ毛髪が入り込んでしまいます。風が完全に止まるまで、エアシャワー室から出ないといったルールの策定も必要です。

商品の管理

開封した商品が低い位置で保管されていると、床から舞い上がった毛髪が入りやすくなります。商品が衛生的に管理できているかも確認しましょう。また、開封状態の商品を長時間放置していたり、開封状態の工程が長いと毛髪が落下して混入するリスクが高まります。作業の見直しや巡回をして、毛髪混入リスクを低減しましょう。

4.原材料や包装容器に付着していた毛髪が混入

毛髪は、従業員の持ち込み以外にも、原材料や包装容器に付着している可能性があります。入荷した原材料や包装資材を製造現場にそのまま持ち込むと、付着した毛髪が混入するおそれがあります。必ず、入荷したものは原材料庫や包材室に保管し、中身だけ現場に持ち込むようにしましょう。

毛髪混入防止対策の4原則

毛髪混入を防ぐために大切なことは、毛髪混入防止対策の4原則を徹底する事です。毛髪防止対策の4原則は「持ち込まない」「落とさない」「留めない」「取り除く」の4つです。毛髪が抜けることを止めることはできません。そこで、付着した毛髪を製造現場内に「持ち込まない」、現場内で「落とさない」対策を実施する必要があります。加えて「留めない」対策を行わないと現場内に落ちた毛髪量は増える一方です。万一商品に毛髪が混入した場合の「取り除く」対策も同時に必要です。

「持ち込まない」「落とさない」「留めない」「取り除く」の4原則と対策は、ただ実施すればいいわけではありません。教育訓練を行いルールを落としこむ、実施状況を確認して現場の意見を聞き取る、ルールを見直すといったPDCAサイクルを回しての管理が必要です。

原則1.毛髪を「持ち込まない」

毛髪を「持ち込まない」対策は、家から「工場に持ち込まない」対策と、工場内の「作業現場に持ち込まない」対策の2つに分けられます。

工場に持ち込まない

対策としてはまず洗髪、入浴、ブラッシングなどによる落下毛髪の慈善排除があります。成人は1日に約70本の毛髪が抜けると言われており抜けた毛髪はしばらくの間、頭に留まります。洗髪やブラッシングによって抜けた毛髪をあらかじめ除去することができます。特に、毛髪は寝ている間に多く抜けるので、出勤前のブラッシングは非常に効果的です。
ペットを飼っている家庭では、足元にペットの毛が付着することが多いです。毛髪ではありませんが、毛髪同様、混入してはいけないので出勤前にローラー掛けなどで除去するようにしましょう。
また、作業着を従業員の個人管理にしている事業所は、各家庭での作業着の洗濯方法も確認しましょう。他の洗濯物と一緒に洗うのは、毛髪や他の異物が混入する可能性があり、危険です。リネンサプライを活用するのも選択肢の一つです。

作業現場に持ち込まない

対策としては、作業着に毛髪を付着させないようにすること、付着した場合は確実に除去する事です。更衣室内で作業着に毛髪が付くことは非常に多いです。着替えの際に毛髪が付着しないようにしましょう。また、作業着に付着した毛髪は、ローラー掛けやエアシャワーを使用し確実に落としましょう。静電気が発生していると毛髪は作業着にピッタリくっついてしまいます。帯電しにくい作業着を選定したり除電方法を確立させましょう。

更衣室内での毛髪付着を防ぐ

更衣室は毛髪が付着しやすい場所です。毛髪が付かないような方法、ルールを決めることが大切です。

まず、作業室の床には非常に多く毛髪が落ちています。
作業着を床に直置きすると、落ちていた毛髪が作業着についてしまいます。
必ずロッカーなどで保管しましょう。

また、出勤時の私服も毛髪が付着していることが多いです。
作業着置き場と私服置き場が分かれているロッカーを準備するなど、作業着と私服を接触させないようにしましょう。

更衣室内を一方通行にすることで、私服で持ち込んだ毛髪の交差汚染を防げます。

下足箱に粘着ローラーを設置することで、私服に付着して更衣室に持ち込みまれる毛髪の量を減らしている事業所もあります。
下足箱のスリッパは毛髪の「運び屋」になるので、使用停止をオススメします。

更衣室内での清掃も重要です。
落下した毛髪をそのまま放置しないよう、頻繫に清掃するのが望ましいです。

また、すのこを使用していると、清掃がしにくいです。
可能ならば取り外しましょう。(毛髪を「留めない」にも繋がります)
更衣室の床を粘着マットにすることで、毛髪が舞い上がらないようにする方法もあります。

粘着ローラーがけの手順とルール決め

作業現場に入る前のローラー掛けは必須ですが、正しい方法で行わないと意味がありません。まずは正しい手順を説明します。

エブノ_ローラーかけ

出典:株式会社エブノ

ローラー掛けは、上から下にかけていくのが基本です。

1.頭
頭頂部、左右の側頭部、後頭部の4面をかけていきます。

2.肩
毛髪が肩に落下しているケースが多いです。

3.腕
肩側から手の方に向かってローラーをかけます。内側と外側を忘れずにかけましょう。

4.胸・腹
面積が広いので、くまなくかけましょう。

5.背中
鏡をみながら、もしくは二人でかけるようにしましょう。

6.足
腰回りから足先にかけて、外側、内側、後ろ側、漏れのないようにかけます。
足は床の毛髪を巻き上げて付着していることが多いです。

正しいローラー掛けを従業員全員が実施することが重要です。そのためには写真や画像入りのマニュアルを作りローラー掛けの個人差を減らしたり、タイマーで時間を管理をします。また、カメラで撮影をする現場もあります。

ゴミのでない粘着ローラーは、複数回使用していると粘着力が弱まり体に付いた毛髪が残ってしまうことがあります。〇回使用したら交換するなどのルールを決め、必ず粘着力のある状態でローラー掛けをしましょう。

エアシャワーの注意点

エアシャワーは、細かい粉塵の除去のために行います。毛髪は十分に除去できません。必ずローラー掛けで毛髪を取り除いた後にエアシャワーを使用してください。

エアシャワーの設定時間は長めの設定が好ましいです。可能であれば1分程度に設定できるとよいです。使用中は全身に風が当たるように手をあげて回転しましょう。体をはたくことによって、毛髪を落としやすくなります。

また、エアシャワーを使った直後は、室内に除去した毛髪やホコリが浮遊しています。空気が出ている状態でドアを開けてしまうと、せっかく落とした毛髪が現場に流れてしまいます。必ず風が収まってからドアを開けましょう。
エアシャワー室内に粘着マットを貼ることで、現場内への流入をより抑えることができます。

静電気の除去

静電気は、毛髪除去の天敵です。作業服が静電気を帯びていると、毛髪が引っ付いて除去しにくくなります。作業服は、帯電しにくいポリエステルなどの材質を選びましょう。
静電気の除去方法として、除電のれんやプラズマクラスターなど、多数の静電気除去ツールが存在します。実際に、プラズマクラスターの風を当てた時と当てなかった時で、エアシャワーでの毛髪の除去率が劇的に変わったという実例もあります。作業着の選定と静電気除去ツールの活用で、静電気の発生を抑えましょう。

原則2.毛髪を「落とさない」

毛髪を「落とさない」ために最も重要なポイントは、すき間がない身だしなみです。必ず、鏡を使ったり、複数人で身だしなみのチェックを行い、毛髪が落下するすき間を作らないようにしましょう。

また、作業中の「動き」にも注意が必要です。
激しく動いたり、走ったりすると、毛髪が落下するリスクが高まります。
作業内容によっては、動きを止めるのは難しいので、2時間に1回など定期的に身だしなみの確認時間を設けましょう。

作業着着用のチェックポイント

作業中にも毛髪は抜けています。
帽子や作業服のすき間から、抜けた毛髪が落ちてしまうので、確実にすき間を無くしましょう。帽子は、毛髪がはみ出ない、サイズの合ったものを選ぶのは大前提ですが、着心地も大切なポイントです。帽子のしめつけがきつかったり、風通しが悪くて暑かったりすると、作業中に帽子に触る回数が増え、隙間ができやすくなります。

また、インナーキャップから耳が出ている、作業着のチャックが不完全、帽子の首元を緩めている、インナーシャツがズボンから出ているといった、自分の楽さを重視した従業員も見かけます。鏡で全身の身だしなみを確かめる他にも、身だしなみの大切さを従業員に落とし込むことが必要です。

毛髪が落ちやすい動作に注意

作業中の激しい動きによっても、毛髪の落下リスクは高まります。
例えば、次のような動きをすると、毛髪は落ちやすくなります。

  • 前かがみの作業
  • よく動き回る作業
  • 作業中に走るなど、荒い動き
  • 原料や包装の運搬などの大きな動き
  • 帽子や作業着を頻繁に触る
  • 低い位置での開封状態の商品を扱う

などがあります。作業内容や、その人のクセによっては、こういった動きを無くすのは難しいです。どうしても動いてしまう分には、身だしなみを整えることで毛髪落下を防ぎましょう。

原則3.毛髪を「留めない」

毛髪を「留めない」対策を実施しないと、床に落下した毛髪が徐々に増えていってしまいます。床の毛髪が増えるほど、混入リスクは高まります。毛髪を留めないために、まず毛髪が留まりやすい箇所を無くし、毛髪が除去できる清掃・洗浄を行いましょう。整理・整頓をすることで清掃・洗浄をやりやすくできます。

毛髪が留まりやすい場所

毛髪は、人が移動する際の風で簡単に舞ってしまいます。そのため、人の移動が多い場所や、床の中央付近には落下毛髪は少ないです。毛髪が多い場所は、

  • 棚や機械の下
  • 壁際
  • 排水溝、排水ピット
  • 長期間置いてある備品の下

などです。特に、機械周りや商品を入れている容器、包材保管場所などの毛髪は、混入しやすいです。棚と壁の距離を開ける、床とラックのすき間を大きくするなど、清掃しやすい環境づくりをしましょう。

清掃・洗浄の注意点

正しい洗浄・方法を行うために、まずは清掃の役割分担を決めましょう。清掃対象エリアに漏れがあると、その場所だけ毛髪が溜まり続け、混入に繋がってしまいます。

ほうきを使った清掃は、風で毛髪が舞い上がってしまうので効果的ではありません。また、ほうきに付着した毛髪が別の場所で落下するおそれもあります。粘着ローラーや、ワイパー、掃除機などによる清掃は効率的に毛髪を除去できます。ただし、ローラーやワイパーは交換頻度が高く、手間やコストがかかる、掃除機は小回りが利きにくいなどのデメリットもあります。現場に合ったツールを用いて清掃をしましょう。

原則4.毛髪を「取り除く」

製品に毛髪が混入した場合は、速やかに取り除くことが必要です。目視による除去の他に、ふるいやフィルターによる除去、風を当てての除去などの方法があります。製品にあった方法で除去しましょう。また、毛髪の混入を発見しやすいように、照度を上げるなどの環境づくりも大切です。照明を変える以外にも、壁の黒い汚れを掃除するだけでも、現場は明るくなります。

きちんと対策して毛髪混入ゼロを目指そう

毛髪混入は、会社の信用にも関わる大きな要因です。毛髪のほとんどが、従業員によって持ち込まれます。毛髪が抜けることを止めることはできませんので、4つの原則、毛髪を「持ち込まない」「落とさない」「留めない」「取り除く」を徹底しましょう。対策をたてたら、マニュアルを作って従業員に落とし込みましょう。従業員がきちんと実施しているか状況を確認し、現場の意見を聞き取りましょう。そして必要に応じてマニュアルを見直し、PDCAサイクルを回して管理することが大切です。

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