「イベントごみ」の大量発生が問題に
SDGsの目標「12.つくる責任、つかう責任」で掲げられているように、持続可能な社会の実現のために生活の中で出るごみの削減が求められています。
プラスチックごみの削減、エコバッグの普及など日常生活におけるごみの削減については意識的に取り組む企業や個人も多い一方で、お花見やお祭りなどで発生する「イベントごみ」の大量発生が問題になっているのをご存じでしょうか。
日本人は元来「ごみを持ち帰る、公共の場はきれいに保つ」といった考えや文化を持っているにも関わらず、イベントごみが増加しているのは事実です。
この記事では日本の美化意識への文化と近年のイベントごみ問題の対比と原因、SDGsの目標12の達成にもつながる企業や団体のイベントごみをはじめとした公共の場のごみ問題への対策や取り組み事例を解説します。
世界にも称賛される日本人の美化意識
元々日本人は街や公共施設など皆が使う場所に対し、高い美化意識を持っています。
小学校から掃除の時間があり、公共の場はきれいにすること、ごみは持ち帰ることなどを教えられ、大人になってからもそれが「当たり前の習慣」と思い、実践する人がほとんどです。
「日本の街や公園、トイレがきれい」と驚く外国人も多く、日本人の持つ美化意識については海外からも高い評価を受けています。
例えば、2023年3月に開催されたWBC(ワールドベースボールクラシック)では日本チームのベンチ(ダグアウト)がきれいな状態であること、日本人のファンがスタンドのごみを持ち帰り、席を立つ前にきれいにしていたことを称賛するTwitterが話題となっています。
2022年12月に開催されたFIFAワールドカップでも、日本チームのロッカールームがきれいなことや、日本人サポーターがスタンドのごみを集めて持ち帰る様子がSNSやニュースで取り上げられ、話題になりました。
ところが、日本人が元来持っている美化意識に反し、近年イベントが行われる場所で発生する「イベントごみ」の問題が増加、深刻化しています。
イベントのごみ問題が深刻化
イベントごみとは
イベントごみとは、非日常の場で発生するごみのことです。
日常的に発生するごみは適切に処理する、あるいは増えないように対策している人も多い一方で、イベントごみは大量発生してしまうケースが多くなっています。
主なイベントごみとしてあげられるのが、お祭りや花見、ハロウィンなどのイベントで発生するものや、キャンプや登山などの行楽で発生するものです。
イベントごみの例
イベントごみが深刻化したことで問題となった代表例が、富士山です。
富士山はかつてユネスコ世界自然遺産に登録されるための準備が進められていました。
ところが観光客や登山客が投棄したごみが多いなどの問題で「世界自然遺産」には登録されず、「世界文化遺産」としての登録となったのです。
ほかにも渋谷ハロウィンをはじめとした、短期間に多くの人が集中するイベントで、イベントごみが大量発生する傾向にあります。
2020年から2022年までコロナ禍によりお花見宴会を禁止した場所がほとんどでしたが、コロナ渦前の2019年までは、お花見宴会による大量ごみの発生も問題となっていました。
2023年よりお花見宴会ができるところが増えたことで、日本各地の花見の名所で再度イベントごみが大量発生したのが問題となりました。
また初夏の季節になるとBBQなどのイベントなどもこれから増えてくることが予想されています。
イベントごみが発生する原因
イベントごみは公共の場所で持ち帰らず投棄されて発生します。
日本人の持つ美化意識に反することがなぜ起きているのか、その原因について解説します。
集団主義による行動
「公共の場所をきれいにする」「ごみは持ち帰る」といった日本人の美化意識を構成する要素のひとつに、集団主義があります。日本人は集団行動を重視する人が多く「多数の人が賛同している考えや行動は正しい」と捉えがちです。
そのため大多数の人が「ごみはポイ捨てしない」「ごみは持ち帰る」と考え、行動していることに多くの人がならっていることも、日本の公共の場がきれいに保たれ、ごみは持ち帰る文化に繋がっていると言えるでしょう。
一方で、イベント会場や観光地で「大量のごみを放置している」「ごみ箱に無理やりごみが詰め込められている」という場面に遭遇した場合、集団主義から「他の人もやっているから自分もやってよい」という考えになってしまい、イベントごみが発生してしまう原因となることが考えられます。
特にイベントや観光などの非日常の場面では、普段よりも気持ちが大きくなりがちです。
そのため普段はしないけれど、つい「他の人もやっているからいいだろう」という理由で、ごみを放置してしまう人が増えてしまうのかもしれません。
オーバーツーリズムの発生
特定の観光地で訪問客が急増すると、地域経済に好影響がある一方で地域住民の生活や自然環境、景観等に対しては負の影響を与える「オーバーツーリズム」が発生することがあります。
イベントごみが発生する原因は、地元の住民だけでなく観光客が自分たちの出したごみを持ち帰らない、大量に投棄する、といったオーバーツーリズムから発生していることも多いようです。
イベントごみへの企業、団体の対策や取り組み事例
近年、持続可能な社会の実現のためにSDGsの各目標に対する取り組みを行う企業や団体も多くなりました。イベントごみに対する取り組みは、SDGs「12.つくる責任、つかう責任」の目標達成に該当します。SDGsをはじめとした環境への取り組みの一環として、イベントごみ削減や公共の場の美化への対策や取り組みを行っている企業や団体の事例を解説します。
渋谷ごみゼロ大作戦・楽天ラクマ:渋谷リユースプロジェクト
渋谷ハロウィンでの美化活動を行う団体「ハロウィンごみゼロ大作戦 in 渋谷 実行委員会」の取り組みのひとつ「渋谷ごみゼロ大作戦」では、フリマアプリである楽天ラクマ協力のもと、「渋谷リユースプロジェクト」を実施しています。
仮装グッズなど渋谷ハロウィンで不要になったものを回収できる「リユースボックス」を設置しました。リユースボックスで回収したものはクリーニングし、楽天ラクマで出品され、売上は渋谷の美化活動に活用されています。
LOVE RESCUE THEWORLD:MOTTE KAERU – SUSTAINABLE MANNER BAG
ライフスタイルブランド「LOVE RESCUE THEWORLD」は、イベントごみの持ち帰り専用袋「MOTTE KAERU – SUSTAINABLE MANNER BAG」を発売しました。
耐水加工で水・油に強く破れにくい、臭いが漏れにくく中身が見えないといった、イベントごみを持ち帰りやすい工夫が施されています。
NTTdocomo:各地域清掃活動参加
NTTdocomoは、きれいなひろしま・まちづくり市民会議主催の「ごみゼロ・クリーンキャンペーン」の参加のほか、太田川水系36河川の河岸一斉清掃、「ひろしま男子駅伝」での応援・清掃ボランティア活動、春と秋の年2回の鳥取砂丘清掃・除草作業への参加などの多くの地域清掃活動へ参加しています。
東罐興業株式会社:アルミカップ「ルミサス」
東罐興業は東洋製罐と飲料用アルミカップ「ルミサス」を共同開発しました。
原料にはアルミを採用し、脱プラスチックのほか製造時の水使用量ゼロ、最小限のエネルギー消費量を実現しています。
イベントごみを出さない脱プラスチックのリユース容器としても期待できます。
Loop(ループ):循環型ショッピングプラットフォーム
「Loop(ループ)」はアメリカ発の循環型ショッピングプラットフォームです。
従来の使い捨てのプラ容器に代わって、ガラスやステンレス製の「繰り返し使える容器」で商品を販売し、容器を回収・再利用することで、ごみを減らすサービスを提供しています。
自社でできる対策や取り組みでお悩みの際には「折兼」へ
イベントごみ削減や公共の場の美化活動をはじめ、SDGsや環境への取り組みをしたいと考えていても「人手が足りない」「社員の賛同が得られない」「良いアイディアが浮かばない」などの理由から行動に移せず、お悩みの方も多いと思います。
例えば、イベントごみを減らす方法のひとつに、「エコ容器の堆肥化」があります。
社内イベントで使用する容器をエコ容器へ切り替え、使用後堆肥とすることでフードサイクリングに組み込むことが可能になります。
折兼では、エコ容器のご提案をはじめ、フードロス削減につながる地産地消の食プロジェクトなど、さまざまな取り組みを行った実績がございます。
まずはお気軽にご相談ください。
イベントごみ削減や発生防止の取り組みは今後重要視される
2023年からお花見宴会やBBQ、海水浴場での自粛を求めない場所が増えることをはじめ、コロナ禍での行動様式のステージも変化しつつあり、大きなイベントの開催機会の増加や観光名所の混雑が予想されます。それにともないイベントごみが大量に発生する可能性も高くなるでしょう。
ごみの持ち帰りや公共の場への美化意識といった日本人としての考えが改めて見直されています。
企業としても社会への責任を果たすために、ごみ削減や環境美化への取り組みをぜひ進めていきましょう。