
包装資材のデザインを考える際、商品の性質や与えたいイメージなど考慮して選ぶ必要があります。また素材の機能性や耐久性などに加え、廃棄時に汚染物質が生じるかどうか確認しましょう。
本記事では、包装資材の形状や材質、使用するインキについて紹介します。
包装資材とは

包装資材とは、食品や製品などの内容物の保護や品質維持のほか、持ち運びやラッピングなどのために使用する資材のことです。
使用する包装資材の質感や色などは、商品の販促において重要な役割を果たしています。
そのため、様々な形や材質、種類がある中から、用途や目的に合ったものを選ぶ必要があります。
包装資材のデザインの重要性
包装資材のデザインは、商品の使い道や効果をイメージさせることによる購買促進と、ブランディングに深く関係しています。
例えば、水道の蛇口に取り付けるだけで使える浄水器の場合、水道からきれいな水が出ているイメージ画像を使うと、「これを使えば水がきれいになる」というイメージを与えられるでしょう。
商品情報を伝えるとともに、商品価値を印象付け、お客様が手に取りたくなるような魅力あるデザインを考案することが重要です。
包装資材の形状
包装資材は、商品の特性や運搬方法などを踏まえて、適切な形状のものを選ぶ必要があります。
包装資材の形状の種類について、詳しく見ていきましょう。
箱・包装紙

箱・包装紙などの包装資材は、段ボール原紙やクラフト紙、再生紙などからできています。
かつては、プラスチック製の包装資材がよく用いられていましたが、現代では、地球環境の現状を鑑みて、地球にやさしい素材を使うべきという考え方が広まってきており、焼却する際になるべく汚染物質が生じない素材が使用されています。
フィルム

フィルム包装とは、商品にフィルムを密着させる形で梱包する方法です。
袋状に加工して使用する場合もあります。
使用する素材は柔軟性に優れているため、商品の形に合わせて包みやすいのが特長です。
内容物を保護したり、商品が中で動かないように固定したりするのに適しています。
真空パックとして利用できるものは食品が空気に触れる機会を減らすことができるので、食品の賞味期限を延長することにもつながります。
袋

包装資材としての袋には、紙袋やレジ袋、ポリ袋、チャック袋などがあります。
商品を持ち運ぶほか、商品が傷ついたり汚れたりしないように保護することに加え、デザインによって商品の魅力を引き立てる役割もあります。特に、購入した商品の持ち運びに利用される紙袋やレジ袋などは、お店の顔として「歩く広告」の役割も果たします。
主に使われる袋と用途は以下の通りです。
袋の種類 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
紙袋 | 柔軟性と耐久性に優れている | 食品、雑貨、衣料品など |
ボードン袋・OPP防曇袋 | 曇りにくい | 水分を含む野菜、魚、肉、果物など |
ポリプロピレン袋・ポリ袋 | 透明のものや半透明のものがある | レジ袋、ゴミ袋など |
ラミネート袋 | 光や湿度による影響を受けにくく商品の劣化を抑えられる | 食品全般 |
包装資材の材質
包装資材の材質によって機能や耐久性、見た目などが異なるため、商品の性質やサイズなどに応じて使い分ける必要があります。
包装資材の材質と、材質ごとの種類と特徴をご紹介します。
紙
紙は安価なうえにさまざまな商品に使用できる汎用性の高い素材です。また、商品を梱包するだけでなく、外部からの衝撃によって商品が破損するのを防ぐ緩衝材としても使えます。
紙の包装資材の種類について、詳しく見ていきましょう。
ラミネート加工紙
ラミネート加工紙は、紙の資材にポリエチレンなどをラミネート加工することで防水効果と防湿効果を付与した包装資材です。
通常の紙は防水性が低いため、商品の性質や運搬方法によっては包装資材として用いることができません。また、フィルムにおいても食品の品質劣化を十分に抑えられない場合があります。
このように紙やフィルムでは商品の品質維持に課題がある場合にラミネート加工紙を使用します。
ラミネート加工紙の種類はレーヨン紙や雲竜紙などがあり、商品の性質に応じて使い分ける必要があります。
和紙
日本で古くから使用されてきた和紙はクワ科の落葉低木・楮(こうぞ)やジンチョウゲ科の落葉低木・雁皮(がんぴ)、マメ科の多年草・苦参(くじん)といった植物の繊維を原料としています。
柔軟性と耐久性に優れ、独特の風合いや質感があることから、ギフト用のラッピングペーパーとして使われることが多い包装資材です。
高級和雑貨や和菓子などのほか、封筒や紙袋に使用されることもあります。
ただし、表面が粗いため、印刷には適していません。
段ボール原紙
段ボール原紙とは、段ボールの箱や板などのもとになる素材のことです。
表面のライナーと、内側にある波打っている中芯で構成されています。
商品を衝撃から守ることができるため、デリケートな生鮮食品から家電製品まで、さまざまな商品の包装に適しています。
包装用紙
包装用紙は化学パルプや古紙パルプからできた紙のことで、晒クラフト紙、純白ロール紙、筋入りクラフト紙などがあります。包装材やラミネート紙に使われるほか、重いものを入れるために強度を高めた重袋にも使用されます。
バガス

バガスは、折兼が開発したエコ素材で、さとうきびの搾りかすから作られています。
石油資源を使用しないことによって二酸化炭素排出量を大幅に削減できる環境に優しい容器です。
また、バガス容器は成形時に接着剤を使用していないため、もし自然界に流出したとしても一定期間を経て土中に分解します。
フィルム
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フィルムは主に食品の保護や劣化の抑制などを目的に使用する梱包資材です。
次のような素材を使用します。
ONy(二軸延伸ナイロン)
ナイロンを縦と横の両方に向かって伸ばすことで強度を高めた素材です。
液体の食品や真空包装が必要な食品に用いられています。
また、他素材にラミネートすることで、ボイル調理したり冷凍したりできるようになります。
HDPE(高密度ポリエチレン)
高密度であるために、優れた耐水性や耐衝撃性、耐酸性、防湿性などを持つポリエチレンの素材です。主に、レジ袋として使用されています。
LDPE(低密度ポリエチレン)
LDPEは、柔らかくしなやかな手触りが特徴のプラスチックフィルムです。
その特性から、さまざまな用途で幅広く利用されています。
例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアで見かけるビニール袋やレジ袋、保存や持ち運びに便利なチャック付きの袋、医療現場や食品業界で使われる使い捨て手袋などが挙げられます。
L-LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)
LLDPEは、低密度ポリエチレン(LDPE)と同じく柔軟性を持ちながらも、分子量分布がより狭いポリエチレンです。この特性により、LLDPEはLDPEよりも高い強度を持ち、さらにシール性や耐衝撃性、透明性にも優れています。
PET(二軸延伸ポリエステル)
PETは、主にPETボトルの素材として広く使用されています。
耐水性、耐熱性、耐寒性、耐薬品性、透明性に優れています。
また、香りを保つ性質を持つため、香りが重要なコーヒーや香辛料などのパッケージとしても活用されています。
OPP(二軸延伸ポリプロピレン)
OPPは、ポリプロピレンの一種で、耐熱性、防湿性、引張強度、透明度などに優れています。
張りのあるパリッとした素材で、野菜や果物などの簡易包装として使用されています。
また、LLDPEやCPPなどと組み合わせることで、食品包装の密封ができます。
CPP(無延伸ポリプロピレン)
CPPは、防湿性、耐熱性、耐摩耗性、ヒートシール性(フィルム同士を熱で融着させる性質)に優れている素材です。
OPPやPETなどと組み合わせることで、食品包装の密封や包装強度の向上などが可能です。
AL(アルミ箔)
アルミ箔は、遮光性、保香性、耐熱性、バリア性に優れています。
酸素や水分を通さないため、食品の品質維持に大きく貢献します。
また、LDPEやPETなどと組み合わせることで、レトルトパウチとしての利用も可能です。
プラスチック

プラスチックは、優れた強度や耐熱性、耐油性を持つものが多く、食品の品質維持に役立つ素材です。次のような種類があります。
PPF CTポリプロピレン+フィラー入
ポリプロピレンと無機物、ポリスチレン樹脂を組み合わせた素材です。
耐熱性や耐油性、耐酸性があるため、弁当容器をはじめ、惣菜、カレー、シチューなど、さまざまな食品の容器に用いられます。
PP ポリプロピレン
耐熱性と耐油性、耐酸性を持つ軽い素材です。弁当や惣菜などに使用する容器の蓋、電子レンジ対応の食品包装パックなどに用いられます。
電子レンジで内容物を温めることは可能ですが、調理には使用できません。
OPS 二軸延伸ポリスチレン
ポリスチレンを縦と横の両方に向かって伸ばすことで強度を高めた素材です。
透明で光沢があるため、食品包装パック、弁当や惣菜の容器の蓋などに使用します。
電子レンジやオーブンは使用できません。
A-PET
A-PETは優れた透明度や光沢度を持つうえに、塗装しやすい性質を持ちます。
惣菜やデザートなどの容器に主に用いられています。
そのほか、化粧品関連の容器にも使われるなど、身近な素材です。
PSP
PSPは発泡スチロールのことで、ポリスチレンでできています。
天然物質にも含まれるスチレンを合成してポリスチレンを作り、それを空気でふくらませると発泡スチロールになります。
PS
ポリスチレン(PS)は低コストで加工しやすく、食品の輸送用梱包材や家電の緩衝材など、幅広い用途で使用されています。
ポリスチレンにゴムを配合した耐衝撃性ポリスチレン、透明な惣菜容器やコップなどに使われている汎用ポリスチレンがあります。
HIPS
HIPSは、PSにゴム素材をブレンドすることで、耐衝撃性を向上させた素材です。
また、素材そのものに味やにおいがないため、食品包装に適しています。
ただし、透明性が低いため、内容物を見せたい場合には不向きです。
包装資材に使用するインキ

包装資材には、商品情報やデザインを印刷する場合があります。その際に使用する印刷用インキは、筆記用インクと成分が異なります。印刷用インキは油を媒体としており、水を媒体としている筆記用インクと比べて粘度が高いことが特徴です。
包装資材に使用する印刷用インキの成分や種類について、詳しく見ていきましょう。
成分
印刷用インキは、天然油脂や合成油脂などを溶剤に溶かしたものである「ワニス」と「着色剤」をベースとしており、色が包装資材にしっかりと密着するようになっています。
また、成分を調整することで光沢を変えることも可能です。
種類
包装資材への印刷では適切な印刷方式を選択し、それに対応した印刷機器とインキを用意する必要があります。印刷方式の種類に応じて平版インキや凸版インキ、凹版インキなどを使い分けます。
また、紫外線を受けても退色しにくい耐光インキ、香りが出る芳香ニスインキ、磁気検出によって文字を読み取れる磁性インキなど、インキに求める条件に応じて選択します。たとえば、アイスクリームや牛乳、カップ麺などの容器・パックなどには、UVインキが使われる傾向があります。
印刷用インキの種類とそれぞれの性質や使い分けについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
パッケージデザインの重要性
売り場で最初に目にするのが商品のパッケージです。多くの商品の中から消費者の手に取ってもらえるかどうかは、パッケージデザイン次第といっても過言ではありません。
商品やブランドに価値を与え、商品の売り上げを左右することもあります。
パッケージデザインというと文字フォントや色、イラストなどを思い浮かべるかもしれませんが、これらと同じように、素材や形状もパッケージデザインの一部になります。
パッケージの開発を行う際は素材や形状にこだわると競合他社の商品と差別化しやすくなります。
消費者の購入意欲を刺激し、あまたの商品の中から選んでもらえるようなユニークな工夫を盛り込むことが大切です。
パッケージデザインのご相談は折兼へ
「新しいパッケージをつくりたいが、デザインやイラストが決まらない」などパッケージデザインについてお悩みの際にはぜひ折兼にご相談ください。
折兼のデザインチームでは、商品のブランド価値やコンセプト、作り手の想いなどを大切にしながら、食品包装資材の専門知識を活かして、消費者が思わず手に取りたくなるような魅力あるパッケージデザインをご提案します。
素材や形状、種類によって条件は異なる
包装資材の形状や、包装資材に使用される材質やインキについて解説しました。
包装資材は、素材や形状、種類によって耐水性や耐油性、耐衝撃性などが異なるため、商品の性質や用途、運搬方法などに応じて使い分ける必要があります。
適切な包装資材を選ぶとともに、情報提供と購買促進の両方を満たしたデザインを作成していきましょう!