
コンベアの目的
少子高齢化による労働人口の減少が進む昨今、「自動化」が注目されています。
自動化とは、機械やシステムなどを用いて工程や作業を省力化することです。
例えば、製造業においては生産設備をライン化することで、大幅な省力化ができます。
その際に、古くから用いられているのが「コンベア」です。
本記事では、コンベアの種類やメリット、導入の注意点などについて詳しく解説します。
コンベアの定義
コンベア(コンベヤ)は、日本工業規格(JIS)が次のように定義しています。
「荷(運搬物又は搬送物)を連続的に運ぶ機械」
また、コンベアには連続したローラーの上を転がりながらモノを運ぶ「ローラーコンベア」、コンベアベルトやチェーンが動くことでモノを運ぶ「ベルトコンベア」「チェーンコンベア」などがあります。回転寿司で見られる寿司を自動で運ぶ機械もコンベアの一種です。
コンベアの使用目的

コンベアの使用目的は次の3つです。
- 仕分け
複数の商品や荷物を、事前に定めた基準に従って分けることです。
例えば、物流センターでは、異なるオーダーや送り先に応じて荷物を仕分けます。
自動仕分け機とコンベアを組み合わせて完全に自動化するケースや、作業者が補助するケースなどがあります。 - ライン作業
流れたり運ばれたりしてくる荷物の検品やシール貼り・ラベル貼り・包装などの作業です。
ライン作業にコンベアを使用することで、人が荷物を運ぶ必要がなくなるため、省力化につながります。
- 後工程への搬送
作業完了後の荷物や製品をコンベアに載せて、次の工程へ搬送します。
搬送にかかる労力と時間の両方を削減できます。
コンベア導入のメリット
この章では、コンベアを導入するメリットについて紹介します。
①モノをスムーズに運べる。
搬送するモノがコンベアと常に接していることから、安定して搬送できます。
コンベアを活用することで、モノが破損したり落下したりするリスクを抑え、経済的な損失や、それに付随する関連会社への説明対応といったコストを抑えられます。
②耐久性が高い
シンプルな構造で故障しにくいため、生産ラインや作業工程に支障をきたすリスクが低いです。
その他、活用できるシーンが多い順応性の高さや、伸長する際にベルトとフレームを長くすれば済む低コスト性も、メリットといえます。
導入による効率化の事例
実際にコンベアを導入して作業工程を効率化した事例を紹介します。
事例①
ある製造工場は多くの工程を人手で行っていました。
しかし、需要の急増や人手不足などの課題に直面しました。
そこで包装機から出てくる製品を集積し、段積みする工程を自動化するためにコンベアを導入した結果、作業者の数を大幅に減少でき、ほぼ無人での生産が可能になりました。
また、印字検査や封入作業なども省力化できたことで品質向上にもつながったそうです。
事例②
設備の老朽化と人手不足に悩んでいたある企業が、コンベアを導入しました。
その結果、加工場の小分け包装ラインが大幅に刷新され、8人で行っていた作業を省人化できただけでなく、処理機能を約10%向上することができました。
コンベアの導入で省人化や生産能力の向上、品質向上につながった事例は多くあります。
コンベア導入の注意点
コンベアの導入を検討する際は、確認しておくべき注意点がいくつかあります。
具体的には、コンベアのサイズに応じたスペースの有無、そして、作業者が効率的かつ安全に作業するためのスペースが確保できるかという点です。
さらに、コンベアを導入する場所の傾斜にも注意が必要です。
特にモーターを使用しないフリーコンベアは、重力を利用してモノを運ぶため、傾斜が必要になります。傾斜が急であればあるほど、モノは速く動くため、モノ同士が衝突するリスクも高まります。このようなトラブルを防ぐため、導入時に適切な傾斜で設置する必要があります。
コンベアの種類
コンベアの主な種類は「ベルト」「チェーン」「ローラー」です。
それぞれの特徴やメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
ベルトコンベア

ベルトコンベアは、ローラーに巻いたベルトを動かすことでモノを運ぶコンベアです。
メリット・デメリットは次の通りです。
【メリット】
- 多種多様なベルト形状があり、幅広い種類のモノを搬送できる
- ベルトをねじることで、表裏を反転させられる
- ベルトをU字形状にたわませることで、粒状や粉状のモノを搬送できる
- ベルトの滑りやすさを調整することで、モノを特定の場に溜めることができる
- 長距離のベルトでも低コストで導入できる
- カーブできるものを導入すれば、搬送ラインのレイアウトを調整しやすい
- 金網製であれば、食品機械のオーブンのような高温環境でも使用できる
- 食品業界から医療業界まで幅広い業界に対応できる
【デメリット】
- ベルトの張力(テンション)調整に手間がかかる
- 急加速や急停止で損傷するリスクがある
- ベルトの長さは後から変更できない
- 一部が損傷した場合でも全体の交換が必要になる
チェーンコンベア

チェーンコンベアは、プレートをピンでつないだような構造のチェーンを「スプロケット」と呼ばれる歯車で駆動させてモノを搬送するコンベアです。
【メリット】
- 重いものでも搬送できる
- チェーンに付ける付属品(アタッチメント)の工夫次第で、幅広い種類のモノを搬送できる
- チェーンの長さを後から変更できる
- バケットの利用によって垂直方向にも搬送できる
- 粉塵環境での使用に比較的強い
【デメリット】
- ベルトコンベアと比べて搬送速度が遅い
- プラスチックのチェーンを除き、給油する必要がある
- 垂直方向に搬送する際は、機械を固定するために地面に穴を開ける必要がある
- チェーンが一度絡まると交換が必要になる
- チェーンの摩耗粉が出る
- 曲げたりねじらせたりすることが難しい
ローラーコンベア

ローラーコンベアは、ローラーを一定間隔で配置し、その上にモノが転がり搬送されます。
【メリット】
- モノに付着しているゴミを落とす使い方ができる
- 衝撃に強い
- モノを特定の箇所に溜めておくことに使いやすい
- 搬送の挙動をコントロールしやすい
- 搬送方向をカーブさせることができる
- ベルトコンベアやチェーンコンベアを前後に組み込むことができる
【デメリット】
- 長距離の場合はコストが上がりやすい
- コンベア本体の重量が重くなりやすい
- 軽いモノは滑りやすく、搬送できない場合がある
- サイズの小さいモノ、粒状・粉状のモノはローラーの隙間から落下する可能性がある
- 底面が平らなモノしか運べない
- 垂直方向には搬送できない
ほかにも様々なコンベアがあります
ここまで紹介した直線のコンベア以外にも、様々な種類のコンベアがあります。
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
ねじり反転コンベア

ねじり反転コンベアは、ねじりをもたせたベルトを使用し、搬送物を挟んで、ライン速度を維持しながら搬送物の表裏をソフトに反転させるコンベアです。製品の裏側に原材料を印字する用途などで使われます。
小物用スライド式合流装置

小物用スライド式合流装置は、前工程で生産数を増やすために複数のラインを使用した際、流れてくる製品を1つのコンベアに合流させるために利用する装置です。製品をスムーズに統合し、効率的に搬送するのに役立ちます。
目視検査用コンベア

目視検査用コンベアは光透過ベルトとLEDで広範囲を照らすことができ、小さな異物も発見しやすい仕様のコンベアです。透過度の異なる異物に応じLEDの照度調整を行えることから、様々な食品に対応することができます。
傾斜タイプコンベア

傾斜タイプコンベアはライン上で高低差を出したい時に用います。
後工程に充填やミキシング、自動計量などがある際によく利用されています。
縦型コンベア(バーチカルコンベア)

縦型コンベアは搬送物を2つのベルトの間に挟んで垂直搬送します。
搬送物の大きさは大小異なっていてもスムーズに搬送を行うことができることや、各所に低音対策を取り入れているため騒音を最小限に抑えることができます。
コンベア選定なら折兼へ

コンベアを導入する際は、導入スペースの確保や傾斜のつけ方、モーターや電源カイロ、ベルトなどを適切に選ぶことが大切です。コンベアを設置する箇所の寸法、コンベアの機長の調査などは、実績豊富な折兼の専門チームにぜひお任せください。
コンベアの導入は生産性の向上や省人化につながる
コンベアの目的、種類を例にさまざまなコンベアについてご紹介しました。
コンベアは付属品を取り付けたり、現場の形状にあったサイズを選ぶことができるなど多くの導入メリットがあります。
導入により、適切な箇所への人員配置などで生産性を上げ、より多くの利益確保ができるようにしていきましょう。
特徴とメリット・デメリットのまとめ
ベルトコンベア | チェーンコンベア | ローラーコンベア | |
---|---|---|---|
特徴 | ローラーに巻いたベルトを動かすことでモノを運ぶ | プレートをピンでつないだような構造のチェーンを「スプロケット」と呼ばれる歯車で駆動させることでモノを運ぶ | ローラーを一定間隔で配置し、その上にモノを転がして運ぶ |
メリット | ・多種多様なベルト形状がある ・粒状や粉状のモノを搬送できる ・モノを特定の場に溜めることができる ・長距離のベルトでも低コストで導入できる ・搬送ラインのレイアウトを調整しやすい ・食品機械のオーブンのような高温環境でも使用できる ・食品業界から医療業界まで幅広い業界に対応できる |
・重いものでも搬送できる ・幅広い種類のモノを搬送できる ・チェーンの長さを後から変更できる ・バケットの利用によって垂直方向にも搬送できる ・粉塵環境での使用に比較的強い |
・モノに付着しているゴミを落とす使い方ができる ・衝撃に強い ・モノを特定の箇所に溜めておくことに使いやすい ・搬送の挙動をコントロールしやすい ・搬送方向をカーブさせられる ・ベルトコンベアやチェーンコンベアを組み込める |
デメリット | ・ベルトの張力(テンション)調整に手間がかかる ・急加速や急停止で損傷するリスクがある ・ベルトの長さは後から変更できない ・一部が損傷した場合でも全体の交換が必要になる |
・ベルトコンベアと比べて搬送速度が遅い ・プラスチックチェーンを除き、給油が必要 ・垂直方向に搬送する際は、地面に穴を開ける必要がある ・チェーンが絡まると交換が必要になる ・チェーンの摩耗粉が出る ・曲げたりねじらせたりすることが難しい |
・長距離の場合はコストが上がりやすい ・装置の重量が重くなりやすい ・軽いモノは滑りやすく、搬送できない場合がある ・サイズの小さいモノ、粒状・粉状のモノはローラーの隙間から落下する可能性がある ・底面が平らなモノしか運べない ・垂直方向には搬送できない |