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ユニバーサルデザインとは?(後編)|デザインの工夫・テクニックを紹介

2025.08.08

身の回りにあるユニバーサルデザイン

少子高齢化が進行する現代では、ユニバーサルデザインが以前にも増して注目されています。
年齢や障がいの有無を問わず、多くの消費者に商品やサービスを利用してほしい場合は、ユニバーサルデザインを追求しましょう。
 
本記事は、生活空間や公共の場、Web、商品パッケージなど、身の回りにあるユニバーサルデザインの事例を紹介します。

ユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザイン記事の前編では、以下のようにユニバーサルデザインの基本や重要性、テクニックなどについて紹介しました。

  1. ユニバーサルデザインとは年齢や能力の差、障がいの有無などを問わず、すべての人が利用、理解しやすいデザインのことである
  2. 公平性・柔軟性・単純性・わかりやすさ・安全性・省体力・スペース確保という7つの原則がある
  3. 文字は、色やフォント、サイズなどを工夫することで認識しやすくなる

商品やサービスの特性に応じて、ユニバーサルデザインへの取り組み方は異なります。
今回は、実際のデザインについて詳しく説明していきます。

ユニバーサルデザインが入った公共物

ユニバーサルデザインは、公共物に広く採用されています。

照明スイッチ

照明スイッチイメージ

照明スイッチは、平たい正方形か長方形で、どこを押してもONとOFFを切り替えられるものが主流です。中でもサイズが大きいスイッチは手全体で押せるため、指を動かすのが困難な人や指の力が弱い人も簡単に操作することができます。公共物に限らず、一般家庭の照明スイッチとしても広く採用されています。

手すり

手すりイメージ

階段や廊下、スロープなどは、手すりを持ちながら歩くことで転倒のリスクを軽減できます。
また、ぶつかったときにケガをしないように、曲がり角には丸みのあるものや柔らかい素材のものが使われている場合があります。

センサー式の水栓(蛇口)

センサー式蛇口イメージ

センサー式の水栓(蛇口)は、手を近づけると自動で水や温水が出てくる仕組みです。
蛇口の直下に手を出さなければ水や温水が出てこないものもありますが、手をある程度近づけるだけで反応するようにセンサーを調整することも可能です。

手を蛇口に触れることなく水や温水が出ることで、握力の弱い人や手を動かすのが困難な人も利用することができます。

スロープ

駅のスロープイメージ

スロープは、車いすやベビーカー、松葉杖を利用している人など階段の昇降が困難な人が移動しやすいように、公共施設や一部のサービス施設などの階段に併設されています。
ゆるやかな傾斜にするために、広いスペースを取ったりS字状に設置したりします。

幅の広い改札口

幅の広い改札口イメージ

幅の広い改札口は、車いすやベビーカーを利用している人、大きな荷物を持つ人などもスムーズに通ることができます。また、小さな子どもや盲導犬を連れているなどで横並びに歩く場合も、無理なく通れるようになっています。

ノンステップバス

スロープを設置したノンステップバス昇降口イメージ

ノンステップバスとは、乗降口の段差が非常に小さいバスのことです。段差が少ないので乗り降りしやすく、高齢者や松葉杖を利用している人、小さな子どもなどが転倒するリスクを軽減できます。また、重い荷物を持っている人も乗り降りに大きな負担がかかりません。
 
さらに、補助スロープを使用することで、車いすもスムーズに乗り降りできます。

標識

初心者マークなど標識イメージ

標識は、色や形などから意味をイメージしやすくなっています。
例えば、初心者マーク(初心運転者標識)には、運転経験が少ないことをイメージできる若葉マークが採用されています。

また、「障害者のための国際シンボルマーク」には車いすがデザインされていますが、車いすを利用している人に限らず、すべての障がい者が利用できる施設であることを示しています。

温水洗浄便座

便座イメージ

温水洗浄便座は、人感センサーによって自動で開閉する蓋、手が届く場所に機能ボタンが集められたデザインなどが特徴の便座です。蓋を開け閉めする動作や、ボタンを押すために腰をひねる動作などが不要なため、体への負担を軽減できます。

ユニバーサルデザインがされたパッケージ

パッケージデザインにも、主に以下の6つがユニバーサルデザインとして採用されています。

  • 商品説明や賞味期限などの文字が読みやすい
  • 使い方を直感的に理解できる
  • 怪我や誤飲などの事故の心配がない
  • スムーズに開封したり取り出したりできる
  • 使用しやすい重量と形状になっている
  • 廃棄の際にかさばらず容易に分別できる

パッケージデザインのユニバーサルデザインの事例について、詳しく見ていきましょう。

アルコール缶

缶の蓋部分の点字イメージ

アルコール缶の蓋には点字で「おさけ」と記されており、視覚障がい者の人にも伝わるようになっています。これによってアルコール飲料であることがわかるため、お茶や清涼飲料水などと区別できます。

ボトルキャップ

ペットボトルキャップイメージ

ボトルキャップの中には、波型の凹凸によって手がすべりにくく、開閉しやすいものがあります。力が弱い子どもや高齢者などでも開閉しやすいよう工夫されています。また、凹凸をつけることで使用するプラスチックの量も削減できるため、地球環境にもやさしいボトルキャップです。

缶詰

缶詰イメージ

缶詰を開けるときは本体をしっかりと支えなければ、開けた拍子にふちで手を切ってしまう場合があります。ユニバーサルデザインを追求した缶詰は蓋のふちを丸くしてあるため、開けたときに手を切る事故を防ぐことができます。

シャンプー・リンスのボトル

シャンプーボトルイメージ

髪にお湯をかけた状態では水滴によって視界が悪くなるため、シャンプーとリンスを間違える可能性があります。

シャンプーボトルのポンプ頭部やボトル容器の側面に、細かな凹凸がついています。
一方、リンスの容器にはありません。これは、手触りだけでシャンプーとリンスを判別できるようにするためです。

視覚障がいがある人も、シャンプーとリンスを間違えずに使用できます。
また、自動でシャンプーやリンスが出てくる電動式のポンプは、握力が弱い人や手を動かすのが困難な人も使えます。

Webサイトにおける ユニバーサルデザインのテクニック

WEBデザインイメージ

Webサイトでも、誰もが快適に閲覧し、内容を速やかに理解できるようにユニバーサルデザインが採用されています。Webサイトにおけるユニバーサルデザインのテクニックの例を紹介します。

UDフォント

UDフォントは、解像度が低い画面でも明瞭に表示されるように、文字の形の工夫、はねやはらいの簡略化などがされたフォントです。
一目で文字を認識できて読み間違えにくいため、視力が低い人や乱視の人もWeb上の文章を速やかに理解できます。UDフォントの代表例として、モリサワUD書体があります。モリサワUD書体の種類の例は以下のとおりです。

  • UD黎ミン
    環境によっては見えづらくなる明朝体を太くすることで、環境を問わず見えやすくした書体です。
  • UD新ゴ(AP版)
    どのような環境や級数でも判別できるわかりやすいデザインの書体です。
  • BIZ UD新丸ゴ
    丸ゴシックのやさしいイメージを守りつつわかりやすさを向上させた書体です。

配色

Webサイトは、企業のイメージやコンセプトなどが伝わる配色にする傾向があります。
しかし、そのような配色が必ずしも閲覧者にとって見やすいとは限りません。
色覚特性といって、色の感じ方は人によって生まれつき異なることが近年の研究で明らかになりました。そのため、より多くの人が情報をスムーズに得ることができる配色にする必要があります。

色覚特性によっては、赤や緑などの判別が難しくなります。
色覚特性のシミュレーターを使用して、誰もが見やすい配色にしましょう。

あらゆる人に見やすい配色を選ぶためには、彩度や明度のバランスが重要です。
色を変える際には彩度の高低や明度の明暗を考慮し、色の組み合わせを工夫しましょう。
また、異なる複数の表示は、形や位置をそれぞれ変えることで、色の違いがわかりにくい人にも情報が伝わりやすくなります。
そのほか、色の判別が必要なシーンでは「ピンク」「ブルー」など、色の名前を記載するとわかりやすくなります。

音声読み上げ機能

音声読み上げ機能イメージ

音声読み上げ機能とは、Webサイト上の文章を読み上げて音声で伝える機能のことです。
Webサイトにアクセスして特定のキーを押すだけで文章を読み上げてくれるため、視覚障がいのある人も情報を得ることができます。
ただし、音声の読み上げ方に違和感が出ることを防ぐために、文章に工夫が必要です。
 
たとえば、句読点を正しい位置に打つ、省略した言葉をなるべく使用しない、単語の中にスペースを入れないなどの方法があります。

文字組

文字組とは、一文あたりの文字数や行間、文字の配列などの組み合わせのことです。
文字の読みやすさは、大きさだけでは決まりません。
たとえば、文字が大きくとも、次の文字までの距離が短すぎると読みづらくなります。
そのため、文字数や行間、配列などを工夫することで、読みやすくすることが大切です。

一行あたり40文字、半角では80文字以内が読みやすいといわれています。
また、行間や字間は狭すぎても広すぎても読みにくいため、行間はフォントサイズの7割程度(0.7文字分程度)、字間は文字サイズの5%程度の間隔を入れるのが理想的です。

文字は、左上から右下へと移動する人の目線に合わせて、基本的に左揃えとします。
両端揃え(中央揃え)は、文字を認識しにくくするため、使用しないほうがよいでしょう。

また、閲覧者がテキストを200%までサイズを変更できて、全画面表示をした際に横スクロールが不要なレイアウトが望ましいとされています。横スクロールをすると文章を連続して読むことができず、理解するのに時間がかかるためです。

伝わりやすいレイアウトについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

ユニバーサルデザインは基本のデザイン

商品のターゲット層によって異なるものの、パッケージを作製する際はユニバーサルデザインを意識することが基本とされています。
より多くの人が快適かつ安全に利用できる商品は、それだけ売上増加につながると考えられます。
今回紹介した事例を参考にユニバーサルデザインの条件を満たしたパッケージを作製しましょう。

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