
コンポストとは

コンポストとは、生ごみや落ち葉、下水汚泥などに含まれる有機物を微生物の作用を利用して発酵・分解させて堆肥を作ることです。
日本では、古くより生ごみやふん尿などから肥料を作り、田畑に散布することが行われていました。近年は化学肥料が主に使用されており、堆肥はあまり使われていません。
しかしながら、SDGsをはじめとする環境にやさしい取り組みを推進する流れから、近年ではコンポストの重要性が再認識されています。
本記事では、コンポストの特徴や仕組み、メリット・デメリットなどについて詳しく解説します。
※「コンポスト」を「堆肥を作ること」、「コンポスター」を「堆肥を作る機械」として紹介
仕組み
自然界にはさまざまな微生物が存在します。
例えば、川や海、土、空気、人の皮膚など、身の回りに広く分布しています。
これらの微生物の働きにより、土壌形成や食品の発酵などさまざまな現象が生じます。
コンポストを使うことで、家庭から出る生ごみや落ち葉などの有機物を微生物が分解し、堆肥を作ります。
自然のサイクルでは、微生物や小動物の働きにより植物などの有機物が時間をかけて土に還元されます。1cmの土ができるのに100年もの時間がかかるとされています。
農地で野菜や果物を収穫するたびに土中の栄養素が減少するため、次第に作物が育ちにくくなっていきます。
そこで、コンポスターで作った堆肥を土に加えることで土の栄養を補い、作物の成長に役立てることが可能になります。
堆肥とは
堆肥とは、ふん尿や食品残渣、稲わら、落ち葉などの有機物を微生物の働きで分解し、腐熟させたものです。 田畑に散布すると、土中の微生物や栽培植物の根から放出される有機酸によって分解・溶解されます。
堆肥の完全な分解は難しく、微生物や有機酸の分解しきれなかった部分が腐植として土壌中に残ります。この腐植が水分や肥料成分を保持し、作物の成長を間接的に促します。
なお堆肥は、作物の種類や土壌の特性に合わせて使い分ける必要があります。
コンポスターを使うメリット
コンポスターを行うメリットは以下のとおりです。
- 生ごみの廃棄の手間やごみ処理にかかる費用を削減できる
- できた堆肥は家庭菜園や花の栽培に活用できる
- 二酸化炭素の排出量を削減できる
- 食料をリサイクルするため経済的
コンポストによって生ごみを捨てる手間を削減できます。
それに伴いごみ袋代の節約や、ごみ処理費用を抑えられ、環境負荷の低減にもつながります。
また、堆肥を家庭菜園や花の栽培に利用することで、栽培コストの低減も可能になります。
エコ活動を手軽に始められることもメリットといえます。
コンポスターを使うデメリット
コンポスターには、以下のようなデメリットがあります。
- 悪臭が出るおそれがある
- 害虫が発生するおそれがある
- コンポスターの設置スペースを確保する必要がある
- 有機物の下処理が必要になる
- 堆肥が作られるまでに時間がかかる
微生物が有機物を分解する際には悪臭が発生しますが、この悪臭が近隣住民の迷惑になったり、害虫を引き寄せたりする場合があります。
ただしコンポスターの種類によっては臭いが漏れないように対策されているものもあるため、そうしたものを使用すれば大きな問題にはならないでしょう。
コンポスターの設置には一定のスペースを確保する必要があります。
住宅事情によっては、設置が難しいこともあるでしょう。
有機物がコンポストに入るよう細かく刻んだり砕いたりといった下処理が必要なこともあります。
また、堆肥が作られるまでには数週間から数ヶ月もの時間がかかることもデメリットになります。
アメリカで生ごみの堆肥化が義務に
アメリカのカリフォルニア州では、2022年1月1日から生ごみの堆肥化が義務化されました。
2025年までに生ごみを75%堆肥化させることを目標としています。
対象となるのは以下の有機物です。
- 食していない食品
- コーヒーかす
- 卵の殻
- バナナの皮
- 上記以外の残飯
同法に違反した場合は、1日あたり最大500ドルの罰金が科せられます。
日本ではごみの分別ルールを守らなかったとしても、自治体の条例により定められた過料のような軽い刑罰で済むことからカリフォルニア州がいかに生ごみの堆肥化に注力しているかわかります。
コンポスターの種類
コンポスターの種類別の特徴を理解し、最適なものを選びましょう。
コンポスター別の特徴と利用方法を紹介
- 設置型コンポスター
・生ごみや庭の落ち葉、雑草などに対応している
・庭の土を掘り、コンポスターの下の部分を埋める - 回転式コンポスター
・生ごみや落ち葉などに対応しており、容器ごと回転させて効率的に堆肥化する
・定期的に容器を回転させる - 密閉型コンポスター
・密閉容器で発酵処理するため悪臭が発生しない
・密閉容器に生ごみとぼかし(米ぬかに糖蜜や微生物を加え、醗酵乾燥させたもの)を入れる - ダンボール型コンポスター
・ダンボールに資材と生ごみを入れて堆肥化する
・ダンボールに生ごみを投入し、かき混ぜる - LFC型(バッグ型)コンポスター
・バッグに基材を入れ、生ごみを投入する仕組みで、ファスナー仕様のため虫が入りにくい
・バッグに生ごみと基材を入れ、かき混ぜる - 電動生ごみ処理機
・温風で生ごみを乾燥させたり炭化させたりする仕組みで、室内に設置できる
・生ごみを投入し、スイッチを入れる - ミミズ入りコンポスター
・ミミズが生ゴミを食べて分解し、堆肥化する
・ミミズと資材を入れた容器に生ゴミを入れ、ミミズの活動によって生ごみを分解させる
コンポスター に入れて良いもの・ダメなもの

コンポスターは、何でも堆肥化できるわけではありません。
中には、入れるとトラブルになるものもあります。
入れて良いものとダメなものは以下のとおりです。
コンポスターに入れて良いもの
コンポスターに入れて良いものは以下のとおりです。
- 野菜や果物
- 卵の殻
- コーヒーの殻
- 茶殻
- 観葉植物
- 小さく切った段ボール(コーティングなし)
- 新聞紙(裁断が必要)
- 木くず など
コンポスターに入れてはダメなもの
コンポスターには、次のようなものは入れることができません。
- 害虫や害獣を寄せ付けるもの
- 臭いが出るもの
- 人や植物に有害なもの
(例)乳製品や卵、油、肉や魚の骨、ペットの排泄物、化学薬品を使用した植物など
分解可能な素材と特徴
コンポスターは有機物だけではなく環境に配慮したプラスチックや紙製品などの分解も可能です。コンポスターで分解できる代表的な素材とその素材の特徴は以下のとおりです。
- バガス
・サトウキビの搾りかすを使用した素材
・廃棄物の有効利用と海洋プラスチック問題解決に寄与する - 紙素材
・木材パルプから作られた素材
・安価で、多様な形状の商品を製造できる - 木製素材
・木材を使用した素材
・高級感や独自の香りがある - 竹素材
・竹を主原料とした素材
・成長が早いため、多く栽培できて軽い
コンポスターの家庭用と業務用の違い
項目 | 家庭用コンポスト | 業務用コンポスト |
---|---|---|
容量 | 小~中サイズ。数十リットルから数百リットルまで | 大容量。数百リットルから数千リットル以上に対応 |
処理能力 | 一般的な生ごみや家庭から出る廃棄物を処理できる | 大量の廃棄物を効率的に処理できる |
設置場所 | 主に家庭の庭やベランダに設置される | 事業所や施設、大規模なキッチンなどに設置される |
折兼の取り組み
折兼は、小学生を中心に、環境にやさしいバガス素材が土に分解される様子を観察実験する啓発活動を行っており、SDGsキャンプや学校の授業などで多くの子どもたちが参加しています。
また、資源循環型リサイクル&アグリカルチャー体験企画においては、野菜を参加者が自ら植えて収穫し、素材の味を感じられる調理方法で食べるといったイベントも実施しています。
また、地元で採れた魚のアラを一緒に堆肥化させるなど、「地産地消」をリアルに体験しながら、併せてバガス容器の土壌分解過程を観察してもらう取り組みを行っています。
パソナグループ×折兼

「ワールドシェフ王料理大会」では、会場で発生した使用済容器や食べ残しを分別回収して、バガス容器と食品残渣をともに堆肥化させました。完成した堆肥を活用してジャガイモの栽培を行いました。
収穫したじゃがいもは、社員の方に実食いただくとともに、専門機関を通した安全性に関する成分分析を行い、安全性に関するエビデンスを取得いたしました。
バガス容器を用いた堆肥は土壌改良材としての科学的根拠を専門機関において取得しており、エコをテーマとしたイベントで試験的に使用されています。
環境への取り組みの体験イベントを開催

静岡市清水区の三保にて「資源循環型リサイクル&アグリカルチャー体験企画」を開催しました。
17組の親子が参加し、ビーチでのごみ拾いや収穫した野菜を使ったカレー作りなどを体験していただきました。
この取り組みでは、バガス容器を使用するところから、分別回収、堆肥化、バガス入堆肥を用いた野菜栽培、収穫、実食までの全ての工程を参加者に体験いただいております。
イベントで使用したのは、コンポスターによって堆肥化ができるバガス素材の容器です。
実際に、環境配慮に取り組むことで、環境への意識を養うことができます。
「おかえりやさい」のイベントへ容器を提供

「おかえりやさい」は、名古屋市の学校給食や一般家庭からスーパーのような店舗などから出た生ごみを堆肥化し、同じく名古屋市とその近郊の農家で使用することによって、食のリサイクルをして作られた野菜です。この「おかえりやさい」や環境に関する知識を学ぶ講座にて、折兼からバガス容器を提供しました。
コンポスターは色々な場所で注目されている
有機物を微生物によって分解することで堆肥に変えてくれるコンポストは、SDGsの推進によって、企業だけではなく家庭でも注目されています。
ただし、コンポスターと一言で言っても、家庭用と業務用では容量や処理能力の違いがあり、サイズや対応しているものなども異なります。今回解説した内容を参考に、自身に適したコンポストを選んでみてください。