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FSSC22000(食品安全システム認証)とは?取得のメリット、ISO22000・HACCPとの違いも解説

2025.10.03

FSSC22000(食品安全システム認証)とは?

食品製造の現場

食品製造業や食品包装業の衛生管理において、近年耳にする機会が増えている「FSSC22000」とはどのようなものなのでしょうか。

FSSCは「Food Safety System Certification(食品安全システム認証)」の略で、その名を冠したFSSC22000は、食品安全管理を強力に実施するため定められた食品安全システムの国際規格です。
この規格は、食品安全の向上や食に対する消費者の信頼性強化を目的として活動する国際的な非営利団体GFSI(国際食品安全イニシアチブ)が、「GFSI承認スキーム」として認める規格の一つとなっています。

GFSI認証スキームは権威性の高さが国際的に認められており、その認証スキームであるFSSC22000も高い信頼性を誇ります。日本におけるFSSC22000の導入企業は2024年5月末時点で3,321件あり、大手企業を中心に導入が進んでいる状況です。

幅広い対象業界

パン製造の現場

FSSC22000のポイントは、食品の品質ではなく食品安全に焦点を当てた規格という点です。
そのため、認証の対象は食品製造業のみならず食品安全への取り組みが求められるフードチェーン全体に広がっています。
 
具体的には、次の8つの業種(カテゴリ)が対象として挙げられています。

  • 畜産、水産業
  • 食品製造業
  • 食品包装、包装材の製造に関わる業種
  • ケータリング業
  • 動物の飼料製造業
  • 流通業
  • 輸送および保管サービスを提供する業種
  • 生化学製品の製造業

8つのカテゴリの中でも、食品安全に直接関わる「食品製造業」「食品包装、包装材の製造に関わる業種」「ケータリング業」の3つに当てはまる企業においてFSSC22000の取得数が多くなっています。

FSSC22000の信頼性を高めている3つの特徴

先ほど紹介したように、FSSC22000は食品安全に関する規格として、世界的に高い信頼性を誇っています。FSSC22000がこれだけの高い信頼を獲得しているのは、次に挙げる3つの特徴があるからです。

頻繁にバージョンアップが行われている

FSSC22000は頻繁に改定が行われるのが特徴です。

食品安全に関する国際規格である「ISO22000(食品安全)」を含むISO規格は、原則5年ごとに見直しが行われます。一方、FSSC22000の更新頻度は1〜2年に一度となっており、ISO規格に比べて短期間でバージョンアップが実施されます。

頻度高く改定を行うことで、世界的にインパクトを与えるような大きな食品事故が発生した際、対策項目をすぐに反映できるため、安全性を高められるのです。最新の安全対策が盛り込まれているFSSC22000だからこそ、高い信頼性が認められているといえるでしょう。

なお、2024年時点での最新バージョンは2023年3月31日に発行されたVer.6.0です。2024年4月1日から2025年3月31日までは移行期間とされています。

あらゆるリスク要因を考慮している

流し場を点検する

FSSC22000の信頼性を高めている特徴として、食品安全に関するあらゆるリスク要因を考慮していることも挙げられます。
 
中には悪だくみを働く者が現れたり、外部の第三者が侵入して悪事を働いたりするような、不測の事態が起こるリスクもゼロではありません。ルールを定めれば従業員全員がそれに従って動くという性善説ではなく、こうした想定外の事態への対応も求めているのがFSSC22000です。
 
また、事態が発生するのを予防するだけでなく、こうした事態が起きたときの要因除去や抑制の方法、対処法などの取り決めと実施も求められます。

一定間隔での抜き打ち審査が行われる

FSSC22000認証を受けた企業は、毎年審査を受けなければ認証を継続することができません。
認証取得後の審査は3年単位で繰り返し行われ、1年目・2年目は食品安全マネジメントを有効に運用しているかを確かめるサーベイランス審査、3年目には更新審査が実施されます。
 
3年間で2回行われるサーベイランス審査のうち1回(原則3年に1回)は、非通知審査と呼ばれる抜き打ち審査です。何かしらの事情で抜き打ち審査を拒否したとしても、6ヶ月以内に受け直さなければならず、実施しないと認証が取り消されてしまいます。
 
このように、認証取得後も常に適切な食品安全マネジメントシステムの運用が求められるため、FSSC22000は有効性も高いとされているのです。

FSSC22000の認証を取得する4つのメリット

工場内部の様子

世界的に高い信頼性を誇るFSSC22000の認証を取得すると、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを4つ紹介します。

食の安全に関するリスクを減らせる

FSSC22000は、取得に向けて厳しい認証基準をクリアしなければならないだけでなく、取得後も毎年行われる審査に合格しなければなりません。常に厳しい基準をクリアしている必要があるため、従業員の食品安全に対する意識向上や食品防御の強化が可能となります。
 
企業にとって、食品トラブルは信用問題に関わります。
トラブルのリスクを低減できるのは、認証取得の大きなメリットです。

食の安全性を消費者や取引先にアピールできる

信頼度の高い認証を取得すれば、日頃から食品安全に対して万全の対策を実施していることを消費者や取引先にアピールできます。
食の安全性に高い関心を持つ消費者や企業からも選んでもらえるようになり、取引や売上の拡大につながる可能性もあるでしょう。

海外企業との取引拡大につながる

先述のとおり、日本企業のFSSC22000取得企業は2024年5月時点で3,300件あまりですが、世界全体で見ると同じ時点で約3万4,000件と日本の約10倍の企業が取得しています。欧米では日本以上にFSSC22000を重視しているケースも多く、海外企業の中には認証取得を取引要件としているところもあるほどです。
 
FSSC22000の認証を取得すれば、こうした海外企業も含めた幅広い取引が可能となり、販路拡大につながるかもしれません。

製造工程が可視化される

FSSC22000の認証を取得すると、原材料調達からエンドユーザーに至るまで、食品にまつわるサプライチェーン全体が可視化される点もメリットです。
 
製造工程が可視化されるとボトルネックになっている非効率な部分が明らかになるため、効率改善がしやすくなります。
また、問題が発生したときに原因を特定しやすくなるのもポイントです。
原因をすぐに発見できれば対処のスピードも上がり、製造ラインへの影響を小さくできるほか、取引先や消費者からの信頼回復も早まるでしょう。

3ステップでみるFSSC22000の認証取得と運用の流れ

工場内をチェックする様子

FSSC22000の認証を取得するにはどのような準備が必要なのでしょうか。
システムの構築・運用から認証取得、認証の維持までの流れを3つのステップで解説します。

ステップ1:認証水準のシステム構築と運用の定着

第一のステップとして、厳しい認証基準を満たす食品安全マネジメントシステムを構築し、実際に運用する必要があります。
 
システムの構築にあたっては、最初に食品安全に関する自社の現状と課題を把握します。
現在運用しているマニュアルなどとFSSC22000の要求事項を比較し、不足している部分をピックアップするところから始めましょう。
 
ピックアップできたら、自社で使用しているマニュアル類に改善内容を反映していきます。
この際、文書を変更するだけでなく、全従業員に対して認証取得やシステム構築の必要性を説明し、理解してもらうことも大切です。
 
ここまでの準備ができたら、完成したシステムの運用をスタートします。PDCAサイクルを回しながら定着させる必要があるため、ステップ1には1年〜1年半程度かかるでしょう。
 

ステップ2:認証の取得

内部監査のイメージ

マネジメントシステムが定着したら、事前に資格を取得した従業員による内部監査を実施します。
内部監査では、システムの運用に問題点がないか、ルールが守られていない部分がないかなどの点をチェックし、問題があれば是正します。
 
内部監査の結果も踏まえて、マネジメントレビュー(経営層による見直し)まで完了したら、認証取得に向けた準備は完了です。
 
審査機関に必要資料を提出し、登録審査を申請します。
審査はファーストステージとセカンドステージの2段階で行われます。
審査内容は、ファーストステージがシステムの構築状況について、セカンドステージはシステムの運用状況についてがメインです。
不備が見つかった場合、該当する項目に対する是正処置が完了すれば登録へと進みます。
 
無事審査に通過すると、有効期間3年間の「登録証」が発行されて認証取得企業となります。

ステップ3:着実な運用と認証の維持

先ほども紹介したように、FSSC22000は取得して終わりではなく、3年サイクルで2回の定期審査(うち1回は非通知審査)、3年目の更新審査を受けなければなりません。
 
審査で不適合項目があった場合、速やかに是正処置を行う必要があります。
是正後のフォローアップ審査でも解決が図れていないと判断されれば、認証が取り消されてしまうのです。
 
認証を維持し続けるには、食品安全マネジメントシステムの安定的な運用が求められます。

FSSC22000とISO22000、HACCPの違い

食品安全に関わる認証基準としてはFSSC22000のほかにも、ISO22000があります。
また、2020年6月より衛生管理の手法として制度化されたのがHACCPです。
似たものに見えますが、どのように違うのか一覧表で確認しましょう。

  FSSC22000 ISO22000 HACCP
種類 安全管理
マネジメントシステム
安全管理
マネジメントシステム
食品の衛生管理手法
前提条件
プログラム
要求事項で定めあり
(内容も厳密に規定)
要求事項で定めあり
(内容は企業に一任)
具体的な定めなし
ハザード管理 中間の管理も実施 中間の管理も実施 「日常的な管理」
「重点的な管理」
のどちらかで管理
適応範囲 フードチェーン全体
(具体的に8つのカテゴリを指定)
フードチェーン全体 原則、すべての食品等事業者
認証取得の難易度比較 認証ではない

FSSC22000は、HACCPやISO222000の内容を包含しつつ、さらに厳格な管理を定めた基準です。
そのため、認証取得の難易度は最も高くなっています。

HACCPの詳細はこちらの記事をご覧ください。

まとめ

FSSC22000は、世界的に高い信頼度を誇る食品安全システムの国際規格であり、日本でも大手企業を中心に導入が進んでいます。
その高い信頼性から認証取得が消費者や取引先へのアピールにもなり、国内外を問わず販路拡大につながる可能性もあるでしょう。
 
認証取得に向けては、厳しい認証基準を満たす食品安全プログラムの運用と定着が不可欠です。
取得難易度は高いですが、食の安全性の向上と今後の販路拡大のためにも、FSSC22000の認証取得を積極的に目指してはいかがでしょうか。

食品衛生のことなら折兼にご相談ください

折兼では、衛生管理のプロが各現場を巡回し、現場における衛生環境チェックの代行を実施しています。現場で生じている問題のチェックと課題解決に向けたご提案を行うとともに、従業員教育のサポートも可能です。FSSC22000の導入に向けては、計画作成からシステムの運用・改善に至るまで、PDCAサイクルを継続的にサポートいたします。

HACCP制度化対応やFSSC22000の取得を検討しているなら、ぜひ折兼の衛生管理グループまでお気軽にご相談ください。

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