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一般衛生管理とは?何をすればいい?

2021.03.17

2021年6月から始まったHACCP

2021年6月1日より、HACCPの制度化が完全施行となりました。HACCPを導入することで、健康被害に繋がる要因を取り除くシステム作りができ、健康被害のリスクを減らすことができます。しかし、HACCPの前提条件である「一般衛生管理」がなされていなければ、HACCPの機能を発揮することができません。一般衛生管理には、手洗いや食材の温度管理などが含まれており、今までやってきた衛生管理をより確実に行えばいいので、そこまで難しいものではありません。
この記事では、HACCPをしっかり機能させるための「一般衛生管理」について解説していきます。

HACCP三角

一般衛生管理の14項目

一般衛生管理とは、施設設備の衛生管理や、従業員の衛生管理、ネズミなどのそ族昆虫対策など、主に食品以外の環境面での衛生管理のことを指します。
一般衛生管理の基準として、以下の14項目があげられています。

  1. 食品衛生責任者の選任
  2. 施設の衛生管理
  3. 設備等の衛生管理
  4. 使用水等の衛生管理
  5. ねずみ及び昆虫対策
  6. 廃棄物及び排水の取り扱い
  7. 食品または添加物を取り扱う者の衛生管理
  8. 検食の実施
  9. 情報の提供
  10. 回収・廃棄
  11. 運搬
  12. 販売
  13. 教育訓練
  14. その他

1. 食品衛生責任者の選任

営業者(経営者)が食品衛生責任者を選任します。食品衛生責任者は調理師、栄養士等の資格を持っているか、都道府県知事等が行う(または認可を受けた)講習会を受講していなければなりません。食品衛生責任者は、自治体の講習会に積極的に参加するなどして、食品衛生に関する情報を集めるようにしましょう。
食品衛生責任者は、営業者の指示に従い衛生管理に当たります。営業者は、食品衛生責任者の意見を尊重しなくてはいけません。

2. 施設の衛生管理

施設の清掃

施設と周辺を定期的に清掃し清潔な状態を維持するしなければなりません。
床や壁の高さ1m以下の部分、人がよく触るところは毎日、天井や壁の高さ1m以上の部分は月1回以上清掃し、必要に応じて洗浄・消毒しましょう。
排水溝は、固形物流が入ってくるのを防ぎ、排水が適切に行われるよう清掃し、破損している場合は速やかに補修を行ってください。
また、製造場や加工場内に不必要な物品などを置くと、誤使用や異物混入リスクの高まり、清掃の妨げなどにつながるので、置かないようにします。

施設内の作業環境

施設内は照度を確保し、十分に換気を行います。
照度は異物発見や作業効率をあげるためにも十分確保する必要があり、目安としては、通常の作業場では500ルクス程度、検品などの工程では1000ルクス以上確保することが望ましいです。(ZIS Z9110 / 照明基準総則)
換気量は、従業員ひとり当たり20 m3 /hの換気を行えるようにし、ガスを発生する燃焼器具を使用する場合は、排気ガス量の20~40倍の換気量が必要になります。

温度と湿度の管理

適切な温度と湿度の管理も必要に応じて実施してください。
増殖条件(温度・水分・栄養)が整えば、作業中であっても食中毒菌は増殖していきます。作業場はなるべく低い温度と湿度を保つようにしましょう。また、湿度が高いとカビが発生したり、天井が結露して汚い水が垂れてくるといった現象も起こります。換気や除湿器を利用して、ドライな環境づくりに努めましょう。

トイレの衛生管理

トイレは汚染源になりやすいので、常に清潔にして定期的に清掃及び消毒を行います。特に、ノロウイルス対策の消毒には、次亜塩素酸ナトリウム200ppmか、ウイルス対応のアルコールを使用してください。
トイレ清掃に適したツールもあるので、適宜活用し、清潔な状態を保ちましょう。

施設内の飼育

客席を除いて(猫カフェなど)、敷地内で動物を飼育してはいけません。

3. 設備等の衛生管理

機械器具を清潔に保つ

機械器具とその部品は、金属片や異物、化学物質などが食品への混入するのを防ぐため、洗浄・消毒を行い、定位置で衛生的に保管しましょう。また、故障や破損があるときは、速やかに補修し、適切に使用できるよう整備しておきます。
調理器具などの食品と直接接触する可能性のあるものは、作業ごとに熱湯や蒸気、消毒剤などで消毒し、乾燥させます。

冷蔵庫、冷凍庫の温度管理

冷蔵庫、冷凍庫の温度記録は必ずチェックしましょう。人的ミスをなくしたり、常に温度状態が確かめられるように蓄積できる温度ロガーなどを設置することをオススメします。温度逸脱時に食材をどうするかのルールもあらかじめ決めておきましょう。

温度ロガー

機器類の点検

温度計、圧力計などの計器類は定期的に点検し、1年に1回は校正をしましょう。
また、殺菌装置や浄水装置などは、きちんと機能できているかを定期的に点検し、点検の結果を記録しましょう。点検記録は1年以上、もしくは次の点検まで保管しておくとよいです。

洗浄ツールの取り扱い

洗剤や消毒剤などは用途用法を守って正しく使用し、食品への混入防止のために専用の容器に入れて内容物を表示しましょう。特に、次亜塩素酸ナトリウムなど、劣化しやすいものは冷暗所に置くなどの工夫が必要です。
清掃用品は、目的に応じて適切なツールを使用し、使用後洗浄、乾燥させ、定位置定量管理で保管します。ブラシの毛先は広がっていないかなど、きちんと清掃機能があるかの確認も怠らないようにしましょう。

手洗い設備の設置

食品を扱う部屋には手洗い設備が必須です。手洗い設備は、ハンドソープ、ペーパータオル、消毒剤を備え、手指の洗浄と乾燥が適切に行える状態を維持しましょう。

4. 使用水等の衛生管理

食品製造に使用可能な水とは?

食品製造で使用する水は、水道法で規定されている水道水か、「飲用に適する水」でなくてはいけません。食品に直接触れる氷も同様に、管理された水から作るようにしましょう。
※ただし、冷却に使う場合など、食品の安全性に影響を及ぼさない工程では特に規定はありません。
飲用に適する水を使用する場合は、1年に1回以上水質検査を行い、成績書を1年間以上保存する必要があります。ただし、不慮の災害などにより水源等が汚染されたおそれがある場合には、その都度水質検査を実施しなければいけません。
また、使用した水を再利用する場合は、食品の安全性に影響しないよう必要な処理を行ってから再利用しましょう。

設備・装置の清掃と点検

貯水槽を使用する場合は、貯水槽を定期的に清掃し、清潔に保ちましょう。また、清掃時に部品が外れていないかなどの確認も並行して実施してください。
「飲用に適する水」を使用する際、殺菌装置や浄水装置を設置している場合は、装置が正常に作動しているかを定期的に確認し、その結果を記録しましょう。
「飲用に適する水」を使用する場合に、殺菌装置や浄水装置を設置する方法以外にも、定期的な水質検査により飲用に適する水であることを確認する方法でも使用可能です。

5. ねずみ及び昆虫対策

ねずみや昆虫の侵入防止

施設とその周囲は、ねずみや昆虫の繁殖場所を排除し、窓、ドア、吸排気口の網戸、トラップや排水溝の蓋などを設置し、ねずみや昆虫が施設内へ侵入するのを防ぎましょう。

ねずみや昆虫の駆除

1年に2回以上、ねずみと昆虫の駆除作業を実施し、その実施記録を1年間保存しなくてはいけません。
ただし、外部の専門業者に任せるなどして、発生場所生息場所侵入経路被害の状況の調査ができ、対策を講じることができるのであれば、1年に2回以上の駆除作業の代わりにすることができます。その場合も実施記録の保存は必要です。
殺そ剤や殺虫剤を使用する場合には、食品を汚染しないようその取扱いに十分注意してください。基本的に事務所内で保管するなど、通常稼働時に誤使用しないよう工夫しましょう。

食材や資材の保管

ねずみや昆虫による汚染を防止するため、原材料、製品、包装資材などは容器に入れ、床や壁から離して保存しましょう。一度開封したものは、蓋付きの容器に入れるなどの汚染防止対策も行ってください。

6. 廃棄物及び排水の取り扱い

廃棄物の保管とその廃棄の方法について、手順を定めましょう。

廃棄物は廃棄されるまでの間に腐敗し、他の製品や周囲の環境に悪影響をおよぼす状態に変化する可能性が高いです。廃棄物の容器は他の容器と明確に区別できるようにし、中身や臭いがもれないように清潔にしておきましょう。

また、廃棄物を保管する際は、原則食品と同じ場所に保管してはいけません。廃棄物を保管する際は、周囲の環境に悪影響を及ぼさないよう、適切な管理ができる場所で保管しましょう。

廃棄物、排水を処理する際も汚染を広げないように適切に行ってください。

7. 食品または添加物を取り扱う者の衛生管理

食品取扱者の健康管理

食品取扱者の健康状態を把握し、必要に応じて医師の診断を仰いだり、業務から外すなどの措置を講じましょう。
始業前や業務中に、顔色が悪くないか、下痢、腹痛、発熱、吐き気などの症状はないか、手指に化膿した傷はないかなどを確認することで、食中毒やその他の感染症の広がりを防ぐことができます。
特に、ノロウイルスなどの対策として、家族にも同様の症状がないかを確認することも大切です。

手指に化膿した傷がある人は、調理作業に従事させないようにしましょう。どうしても調理作業を行う場合は、耐水性のある被覆材で覆うなどして、傷が直接食品や器具に触れないようにしてください。

施設内で嘔吐があった場合は、速やかに次亜塩素酸ナトリウム(1,000ppm)などの殺菌剤を使用して適切に消毒し、嘔吐物で汚染された化膿性のある食品は廃棄してください。
嘔吐物の処理方法についてはこちらの動画を参考にしてください。

食品取扱者の身だしなみ

食品を取り扱う際は、適切な身だしなみで作業をしてください。
トイレは菌やウイルスの宝庫なので、トイレに行く際は、作業着を脱いでから向かうようにしましょう。
正しい身だしなみついては、こちらの記事で解説しています。

8. 検食の実施

検食を実施する対象事業者

弁当、仕出し屋などの大量調理施設においては、検食を必ず実施してください。検食実施の対象となる事業者は、同一の食品を1回で300食、または1日で750食以上調理し、提供する事業者です。これに当てはまらない事業者であっても、可能な限り検食を実施することが望ましいです。

検食の保存方法

検食を保存する際は、食品ごとに清潔な容器へ50g以上ずつ採取し、完全に密封して、-20℃以下の専用冷凍庫で2週間以上保存してください。検体の品目、採取年月日、廃棄年月日が明確になるよう記録します。この際、中身を開封しなくても検体と記録が一致するように、番号付けなどをするとよいです。
検食を廃棄する際も、異常の有無を確認してから廃棄してください。

9. 情報の提供

自社の製品について、消費者が安全に喫食するために必要な情報を消費者に提供するようにしましょう。

製品に関する消費者からの健康被害や食品衛生法に違反する情報を得た場合には、その情報を自治体に提供するよう努めてください。
※この健康被害とは、「医師の診断を受け、その症状が製品に起因する、またはその疑いがあると診断された健康被害」に限定されます。

自社の製品について、異味や異臭の発生、異物の混入などの健康被害につながるおそれがある情報を得た場合は、その情報を自治体に提供するよう努めてください。

10. 回収・廃棄

製品に起因する危害、または危害のおそれが発生した場合、該当する製品をを素早く適切に回収できるよう、責任体制や消費者への注意、喚起の方法、具体的な回収の方法、自治体への報告手順などをあらかじめ決めておきましょう。

回収した製品については、他の製品と区分して保管し、適切に廃棄をします。

11. 運搬

運搬に用いる車両、コンテナなどは、製品を汚染しないよう洗浄・消毒、必要に応じて補修作業をし、適切な状態を維持しましょう。

運搬中は、排気ガスや他の貨物からの汚染を防ぐため、食品を容器に入れて区分するなどの対策を講じてください。
食品をばら積みで運搬する場合は、専用の車両、コンテナなどを使用し、食品専用であることを明示しましょう。

食品以外のものや、品目が異なる食品の運搬に使用した車両、コンテナなどを使用する場合は、効果的な方法により洗浄し、必要に応じ消毒を行ってください。

運搬中の温度、湿度の管理にも注意してください。運搬車に温度ロガーを設置し、管理することも有効です。
運搬中の温度や湿度を踏まえた配送時間を設定し、所定の配送時間を超えないよう適切に管理しましょう。

外食事業に関しては、調理した製品はなるべく早くお客様へ提供するようにしてください。

12. 販売

販売量を見込んで、適切な量を仕入れてください。また、販売中の製品は適切な環境で販売し、温度管理などを記録し、保存しましょう。

13. 教育訓練

定期的に従業員への教育訓練が必要です。全社員に年1回の定期勉強会、新入社員には入社時など、スケジュールの規定を作ることをおすすめします。ただやるだけではなく、教育訓練の効果も検証しましょう。教育訓練については、業種別手引書への記載がないことが多いので、漏れが無いよう取り組んでいきましょう。

折兼では、衛生に関するセミナーを開催しておりますので、ぜひご活用ください。
*セミナー開催に関するお知らせは、開催が決まり次第、折兼ホームページにて案内をしております。

14. その他

仕入れ元や販売先等の記録の作成、製品の自主検査の記録をします。記録が後追いできるように、きちんと残しておく必要があります。

マニュアルを作成し、作業の標準化を図る

適切な一般衛生管理を実施するために、マニュアルを作成することが大切です。
マニュアルがないと、人によってやり方がバラバラになり、衛生度に差が生じてしまいます。マニュアルを作成し、全員がその通りに実施することで、常に清潔な状態を保つことができます。

衛生標準作業手順書(SSOP)とは

衛生標準作業手順書(SSOP)とは、衛生管理に関する手順のことを言い、「いつ、どこで、誰が、何を、どのようにするか」が分かるように文書化されたものです。
SSOPを見れば全員が同じ作業ができるようにすることが大切で、写真やイラストを用いて視覚的に分かりやすくするのもポイントです。

SSOPの例

一般衛生管理は作業をして終わりではなく、記録、保管まで必要なので、SSOPには、記録方法や保管方法まで記載するようにしましょう。
また、記録が基準を逸脱していた場合の対処方法もあらかじめ決めておき、迅速に対応ができるようにしましょう。基準を逸脱した際には、記録表に「日付・内容・対処」を記し、後から見返したときに何があって、どう対応したかが分かるようにしておくことが必要です。

作業の標準化

現場の衛生レベルは、その現場の最低最悪者のレベルで決まります。たった一人が衛生管理を怠ることで、食中毒事故が発生してしまいます。
SSOPを作成し、従業員全員に徹底させることで、全員の衛生レベルを同じ高さまであげられます。これが、作業の標準化です。
一般衛生管理の先にあるHACCPでも作業の標準化が前提条件となるので、従業員教育をしっかりと行い、逸脱した行動を取らせないようにしましょう。

PDCAサイクルを回す

SSOPを作り、マニュアル通りに作業させるだけでは、衛生管理は完璧とは言えません。
実際に運用することで、改善点や問題点が出てきます。
ルールが厳しすぎてほとんどの人が守れていないといったケースもあります。
問題があったら速やかに改善し、新しいルールで作業を回すようにしましょう。
SSOPを作り(Plan)、運用し(Do)、問題がないかを確認し(Check)、改善する(Act)、PDCAサイクルを回すことが大切です。

一般衛生管理を徹底しましょう

一般衛生管理は従来やってきた衛生管理で、特別なことは何もありません。一般衛生管理をしっかりと実施し、HACCPに対応できるようにしましょう。

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