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紙とプラスチック、環境に優しいリサイクルはどっち?|それぞれのメリット・デメリットを紹介

2021.09.03

資源の再活用として注目されているリサイクル

資源の再活用として注目されるリサイクルは、環境にも優しく積極的に取り組みたいですよね。
一方で、世界から見た日本のリサイクルの現状やリサイクルのメリット・デメリットについて、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。

今回は、紙とプラスチックはどちらが環境に優しいのか、また、リサイクルのメリット・デメリットをご紹介します。地球のために食品事業者の方が今からできることを探っていきましょう。

日本のリサイクルの現状

世界におけるプラスチックごみの発生量は年間3億トン以上、観光や漁業にもたらす被害総額は年間約130億ドル(約1兆4千億円)にのぼるとOECD(経済協力開発機構)は2018年に報告しました。

しかし、日本のプラスチックごみへの対策は遅れており、2013年のOECD(経済協力開発機構)の一般廃棄物におけるリサイクル率の調査によると、加盟国34ヵ国中トップのドイツのごみ対策が65%に対し、日本は19%にとどまっています。

一方、一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、日本におけるプラスチックごみのリサイクル率は2017年時点で86%と高水準になっています。
理由は、リサイクルの内訳で「サーマルリサイクル」が大半を占めるためです。

欧米基準ではサーマルリサイクルはリサイクルの範囲に含まれません。
そのためOECDの調査結果では、日本のリサイクルの現状は他国と比べて大幅に後れをとっていることになっています。

※サーマルリサイクルとは、プラスチックごみを燃やしたときに出る熱エネルギーを回収するリサイクル方法
ごみから固形燃料を製造したり、ごみを燃やして発電したりするなどが挙げられます。

プラスチックリサイクルのメリット・デメリット

プラスチックは日常生活で使用頻度が高く生産量が多いため、その分廃棄される量も多くなっています。ここでは、プラスチックリサイクルのメリット・デメリットをそれぞれ紹介します。

メリット

環境保全
リサイクルにより、ごみの減量化ができます。
集められたごみは基本的に焼却処分されるため、膨大な燃料が必要です。さらに、焼却処分の際に排出される二酸化酸素やその他の有害物質も、環境に悪影響を与える原因になります。
ごみの量を少なくすることができれば、これらの影響を小さくすることが可能です。

また、ごみの減量化によって埋め立て処分場を長く利用できることも環境保全につながります。
新たに建設する頻度が減るため、海岸や森林などを守ることができます。

資源の節約
リサイクルによって資源の節約ができるため、枯渇までの時間を先延ばしにできます。
プラスチックを作るために必要となる石油をはじめ、地球上の資源には限りがあるため、資源の節約は大きなメリットといえるでしょう。

デメリット

コスト面
現在のリサイクル方法では、資源から製品を作り出すほうがリサイクルするよりもコストが低い場合が多いです。また、使い終わった製品をリサイクルするには、回収のための輸送機材、人件費、燃料、資源なども必要です。

リサイクルによる劣化
プラスチックはリサイクルの過程で不純物が混ざります。
品質の劣化は避けられないため、リサイクル前と同じ製品にリサイクルされることは少ないです。

同じ材質が必要
プラスチックといってもその種類はさまざまです。リサイクルのためには同じ素材を集めなければならず、細かい分別には人手が必要になります。破片など小さな物は材質が判別できない場合もあるでしょう。また、単一の樹脂でなく複合樹脂で作られている場合は、さらに分別作業が複雑になってしまいます。

洗浄が必要
プラスチックはフード容器として使われることも多く、リサイクルのためには食品の油などを洗浄する必要があります。
ごみとして出されたプラスチック1つ1つを洗浄するのは現実的でないため、そのまま焼却や埋め立て処分となることも少なくありません。

紙リサイクルのメリット・デメリット

衛生面での配慮が求められる昨今、ペーパータオルや使い捨てお手拭きなどの紙ごみは増えています。ここからは、紙リサイクルのメリット・デメリットをそれぞれご紹介します。

メリット

環境保全
資源を再活用することで、森林伐採を減らすことが可能です。
その結果、地球温暖化や野生生物の絶滅などの防止が期待できます。

エネルギーの節約
木材から紙繊維を取り出すには、熱や電気など多くのエネルギーが必要になります。
リサイクルでは、より少ないエネルギーで紙の製造ができるため、エネルギーの節約につながります。

廃棄物処理のコスト削減
紙を処分するにも費用が必要です。新聞、雑誌、ダンボールをリサイクルに出すことで、処分時にかかる廃棄物処理費用を抑えることができ、コスト削減につながります。

デメリット

リサイクルできないものがある
再生紙に変えるには余分にコストがかかる紙もあります。
再生紙となりえる紙は全体の約65%とされ、残りの約35%は再生化されていません。

難処理紙ごみとしては、牛乳パックや洗剤の箱などが挙げられます。美観目的などでフィルムが貼られており、リサイクルするためには1つずつ剥がさなければなりません。
そのため回収されてもリサイクルされず、焼却処分に至るものがほとんどです。

また、シュレッダー古紙もリサイクルが難しく、断裁された感熱紙やノーカーボン紙は禁忌品にあたります。理由は空気を大量に含んでおり、かさばるので容積が紙の数倍に膨れ上がり、回収の輸送・保管効率が悪くなってしまうからです。
さらにビニール袋に入れての廃棄になるため、古紙とビニールを分別しなければならないこともリサイクルを難しくしています。

品質が劣化する
繰り返しリサイクルをすることで、品質が劣化していきます。
再生紙の製造の際に新しい紙繊維を混ぜて劣化を抑えることは可能ですが、新しい紙繊維を100%使用した紙に比べると品質は落ちてしまいます。

環境に優しいリサイクルは紙?プラスチック?

プラスチックはリサイクルによってごみの減量化ができ、環境保全や資源の節約につながります。
一方で、リサイクルにかかるコストや手間が多く、実際には焼却処分されているケースが多いのも事実です。
リサイクルするよりも資源から新たに製品を製造するほうが低コストであれば、あえてリサイクルをしようとは考えにくくなります。

紙については元をたどれば原料はすべて木材であるため、不要になった紙製品を安易にごみにすれば森林資源の浪費につながります。
また、木材から紙繊維を取り出すには多くのエネルギーが必要である一方、紙からのリサイクルではエネルギーの節約が可能です。

紙、プラスチックどちらにもリサイクルのメリットとデメリットがあり、どちらのほうが環境に優しいとは一概には言えません。

食品事業者としてできること

日本におけるプラスチックのリサイクルは、熱エネルギーを回収するサーマルリサイクルが多くの割合を占めています。
製品から製品へとリサイクルするほうが、より環境に優しいといわれますが、プラスチックと紙のどちらのリサイクルにもメリットとデメリットがあることも事実です。

食品事業者の方にとって、経済活動と環境意識した経営の両立は難しいと思われる方も多いでしょう。そんなときは本記事を参考に、まず何から始めることができるか、一つずつ考えることから始めることをおすすめします。

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