「食品表示基準」の改正について
「食品表示基準」が2017年9月に改正され、新しく変わった制度では、輸入品を除く全ての加工食品の重量割合上位1位の原材料について、原料や原産地の表示が必要となりました。
経過措置期間が設けられましたが、その期限が2022年3月31日まででした。
本記事では、新しくなった「原料原産地表示制度」について詳しく説明していきます。
「原料原産地表示制度」とは
加工食品に使用された原材料の原産地を商品に表示する制度を指します。
原材料の表示方法は、生鮮食品と加工食品で異なります。
原料や原産地が表示されることで、消費者は表示される情報を見て、より詳しい情報が載った商品を選ぶことができるようになります。
改正前と何が違う?
改正前は、原料原産地を表示する食品は生鮮食品に近いと認識されている加工食品(22食品群と5品目)に限られていましたが、新しい制度では「輸入品を除く、酒類を含む全ての加工食品の重量割合1位の原材料」が対象となりました。
22食品群
農産物加工品
- 1. 乾燥きのこ類、乾燥野菜及び乾燥果実
(フレーク状又は粉末状にしたものを除く) - 2.塩蔵したきのこ類、塩蔵野菜及び塩蔵果実
(農産物漬物を除く) - 3.ゆで、又は蒸したきのこ類、野菜及び豆類並びにあん
(缶詰、瓶詰及びレトルトパウチ食品に該当するものを除く) - 4.異種混合したカット野菜、異種混合したカット果実その他野菜、果実及びきのこ類を異種混合したもの
(切断せずに詰め合わせたものを除く) - 5.緑茶及び緑茶飲料
(荒茶の原材料の重量割合が50%以上であるものに限る) - 6.もち
(米穀の重量割合が50%以上であるものに限る) - 7.いりさや落花生、いり落花生、あげ落花生及びいり豆類
- 8.黒糖及び黒糖加工品
(黒糖の原材料の重量割合が50%以上であるものに限る) - 9.こんにゃく
(こんにゃくいも「こんにゃく粉の原材料のこんにゃくいもも含む」の重量割合が50%以上のものに限る)
畜産加工品
- 10.調味した食肉
(加熱処理したもの及び調理冷凍食品に該当するものを除く) - 11.ゆで、又は蒸した食肉及び食用鳥卵
(缶詰、瓶詰及びレトルトパウチ食品に該当するものを除く) - 12.表面をあぶった食肉
- 13.フライ種として衣を付けた食肉
(加熱調理したもの及び調理冷凍食品に該当するものを除く) - 14.合挽肉その他異種混合した食肉
(肉塊又は挽肉を容器に詰め、成形したものを含む)
水産加工品
- 15.素干・塩干・煮干魚介類及びこんぶ、干のり、焼きのりその他干した海藻類
(細切若しくは細刻したもの又は粉末状にしたものを除く) - 16.塩蔵魚介類及び塩蔵海藻類
- 17.調味した魚介類及び海藻類
(加熱調理したもの及び冷凍食品に該当するもの並びに缶詰、瓶詰及びレトルト食品に該当するものを除く) - 18. こんぶ巻
(こんぶの重量割合が50%以上であるものに限る) - 19.ゆで、又は蒸した魚介類及び海藻類
(缶詰、瓶詰及びレトルトパウチ食品に該当するものを除く) - 20.表面をあぶった魚介類
- 21.フライ種として衣をつけた魚介類
(加熱調理したもの及び調理冷凍食品に該当するものを除く)
その他
- 22.4又は14に掲げるもののほか、生鮮食品を異種混合したもの
(切断せずに詰め合わせたものを除く)
5品目
- 1.農産物漬物:重量割合上位4位(内容重量が300g以下のものは上位3位)かつ5%以上の原材料
- 2.野菜冷凍食品:重量割合上位3位かつ5%以上の原材料
- 3.うなぎ蒲焼き:うなぎ
- 4.かつお削り節:かつおのふし
- 5.おにぎり:のり
(「米飯」は、米トレーサビリティ法に基づく原料米の産地表示が必要)
食品表示基準はいつから変わる?
2017年9月1日から新制度に変わっていて、2022年3月31日が経過措置期間の期限でした。
この期間で食品関連事業者は「原料原産地表示制度」の切り替えを行う必要がありました。
原料原産地表示の対象となる食品は「全ての加工食品」
新しい「原料原産地表示制度」では、国内で製造される又は加工される酒類を含む全ての加工食品が表示の対象となります。
海外から輸入されるものは従来通り、原料や原産地名の表示は必要ありませんが、原産国の表示は必須です。
原料原産地表示の対象にならないものは?
前章では「全ての加工食品」とお伝えしましたが、一部例外もあります。
1.レストランなどの外食や、お店で調理された惣菜など、店員がその場にいて原材料の原産地を確認できる状況で販売する場合
※ただし、スーパーの惣菜売り場など、その場に店員がいない場合は表示の対象となります。
2.ばら売りなどの容器包装に入れずに販売する場合
3.試供品の配布など、不特定多数に対して無償で譲渡する場合
4.他の法令で表示が義務付けられている場合
どのように表示される?
1番多く使われている原材料が「生鮮食品」の場合と「加工食品」の場合では、その表示の仕方が異なります。この章では「生鮮食品」と「加工食品」で何が変わるのかを説明します。
1番多く使われている原材料が「生鮮食品」の場合
1番多く使われている原材料が「生鮮食品」の場合は、産地がわかるように表示が必要です。
例えば豚肉の場合、原産地が国産品の場合は「国内産」や「日本産」と表示
外国産の場合は、「A国」や「B国」といった表示が必要です。
表示の仕方は原材料名の後ろに()をつけて豚肉(A産)と表す方法と、
原料原産地名という項目を設けてA国(豚肉)と表す方法の2つがあります。
1番多く使われている原材料が「加工食品」の場合
1番多く使われている原材料が「加工食品」の場合は、製造場所がわかるように表示が必要です。
製造場所が国内なら「国内製造」、国外なら「A国製造」となります。
「生鮮食品」と「加工食品」で表示の仕方が違う理由は、加工食品は生鮮食品を使って製造している場合もあれば、他の工場で製造された加工食品を使い、二次製造している場合もあるので、それらの原産国をさかのぼって特定するのが難しいためです。
しかし、加工食品に使用している生鮮食品の産地がわかっている場合は、○○製造の表示ではなく、原材料名と原産地を表示することができます。
例えばチョコレートの場合、生鮮食品の産地がわかっているかどうかで下記のように表示が変わります。
産地がわかっていない・・・原材料名:チョコレート(ベルギー製造)
産地がわかっている・・・原材料名:チョコレート 原料原産地名:ガーナ(カカオ豆)
重量が1番重い原材料以外の表示の仕方は?
新しい「原料原産地表示制度」は重量が1番重い原材料の産地を表示することが義務付けられました。
しかし、2番目以降の原材料についても食品関連事業者の自主的な取り組みとして原料原産地表示をすることが望ましいです。
原材料の原産地が複数ある場合に使える「又は表示」とは?
原産地が2つ以上の場合は、使用した重量順に国名の表示が必要です。
例:豚肉(A国、B国)
原産地が3つ以上の場合は、3カ国以降の原産地をその他と表示することも可能です。
例:豚肉(A国、B国、その他)
しかし重量順で表示すると、原材料の重さの割合が変わる度に表示を変えることになってしまいます。
これの対策として、一定条件を満たせば国別重量順表示ではなく、「A国又はB国」といった「又は表示」が認められます。これは産地として使用される可能性が高い複数の国を、見込みが高いものから順に「又は」で繋いで表示する方法です。
これに認められる一定条件は下記の通りです。
1.過去の一定期間における産地別使用実績、または今後の一定期間における産地別使用計画から見て、国別重量順表示が困難であること。
2.どのような根拠に基づき表示しているのか注意書きを表示すること。
3.根拠書類を保管すること。
「又は表示」が認められた場合は、下記のように表示されます。
豚肉(A国又はB国)
※令和3年の使用実績順 (←注意書き)
この表示ですと、令和3年は①A国、B国の順で使っている、②B国、A国の順で使っている、③A国のみ使っている ④B国のみ使っている という風に捉えることができます。
ただし、「又は表示」を使う場合は2点注意が必要です。
1つ目は、表示されている原材料に基づいて作られているので、それ以外は使うことができません。例えば、豚肉(A国又はB国)と表示されていれば他の国(C国など)の豚肉は使用できません。
2つ目は、一定期間における使用割合が5%未満の場合は、原産地の誤認防止措置として5%未満であることを( )で表示する必要があります。
原料原産地名:A国産又はB国産(5%未満)
この5%未満の表示が付いた原産地は、過去の一定期間全体で見ると対象産地の使用割合が5%未満であることと、製造した時から継続して使用していることを意味しています。
産地を「又は」で繋いで表示した例
原材料名:豚肉(アメリカ産又はオーストラリア産又は国内産(5%未満))
※1.豚肉の産地は、令和3年度の使用実績順
製造地を「又は」で繋いで表示した例
名称:清涼飲料水
原材料名:ぶどう果汁(イタリア製造又はアメリカ製造)
※2.ぶどう果汁の製造地は、令和4年度の使用計画に基づき表示
「又は」で繋げた表示は、根拠を示す注意書きが表示されます(※1,2)
使用実績順が表示されていれば、該当年度の使用実績に基づいた表示順で示していることを指します。
使用計画が表示されていれば、過去の実績がない新しい商品か、調達先を変えて今後の原料使用計画に基づいて作られた商品を示していることを指します。
3カ国以上の外国の原産地表示をまとめることができる「大括り表示」とは?
「大括り表示」とは、一定の条件を満たすことで、3カ国以上の外国の原産地表示を「輸入」と括って表示する方法です。国産品と海外品が混ざる場合は、重量割合の高い順から表示されます。
「大括り表示」が認められる一定条件は下記の通りです。
1. 過去の一定期間における産地別使用実績又は今後の一定期間における産地別使用計画から見て、国別重量表示が困難な場合
2.根拠書類を保管すること
「又は表示」+「大括り表示」の併用が認められるケースもあります。
国名を繋ぐ「又は表示」と3カ国以上をまとめて「輸入」と表せる「大括り表示」は併用できる場合があり、それが認められる一定条件は下記の通りです。
1. 過去の一定期間における国別使用実績又は今後一定期間の国別使用計画から見て、「大括り表示」のみでは表示が困難な場合
2.根拠書類を保管すること
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「原料原産地表示制度」が新しくなることにより、パッケージを一新する商品も多いかと思います。
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新しくなった「食品表示基準」のポイントは6つ
新しくなった「食品表示基準」のポイントは次の6つになります。
- 国内で製造したお酒を含む全ての加工食品が原料原産地表示の対象。
- 表示が必要な原材料は、重量割合上位1位の原材料。
- 1番多く使われている原材料が「生鮮食品」の場合、産地の表示をする。
- 1番多く使われている原材料が「加工食品」の場合、製造地の表示をする。
- 原産地表示は原則、重量割合が大きいものから順に国別で表示をする。
- 国別重量順の表示が難しい場合、一定条件を満たせば「又は表示」、「大括り表示」
その2つを併用した「又は表示」+「大括り表示」が認められる。
2022年4月1日から「食品表示基準」が改正されましたので、上記ポイントを押さえながら食品表示を切り替えていきましょう。