「プラスチック製包装税」とは?
「プラスチック製包装税」の内容
2022年4月1日からイギリスでは「プラスチック製包装税」が施行されました。
この税金は、イギリス国内で製造、または輸入したプラスチック製の包装資材のうち、製造するのに使われたプラスチックのリサイクル率が30%未満のプラスチック製品に対し課税が適用されると言った内容です。
税率は1トン当たり200ポンドとなり、これは日本円で約3万2,600円(2022年5月時)掛かります。
「プラスチック製包装税」の狙い
「プラスチック製包装税」は、新しいプラスチックではなくリサイクルされたプラスチックの使用を推奨することを目的とし、これによりプラスチック廃棄物のリサイクルや回収が促進されて、プラスチックごみが削減されることを狙いとしています。
この税金の課税対象者は?
イギリス国内で製造、または輸入したプラスチック製の包装資材のうち、製造するのに使われたプラスチックのリサイクル率が30%未満の場合に課税が適用されます。
しかし、30%以上リサイクル率を満たしている場合でも、年間で10トン以上プラスチックを生産、または輸入する企業や個人は対象となります。
また、国内で押し出し加工・成型・印刷といった大幅な加工が施されたものも対象となり
プラスチック製品に充填や梱包をする企業も、その作業の前に大幅な加工を行う場合は課税対象とみなされます。
プラスチック製の容器、フィルム、コップなどは全て課税の対象となり、使い捨てを前提とした包装資材も課税対象となる可能性があります。
課税対象にならない物は?
全てのプラスチック製品が対象になるわけではなく、下記のものは課税の対象外となっています。
- プラスチックが包装ではなく、工具箱やイヤホンケース、救急箱といった保管を目的とするもの
- 消臭剤や吸入器など、使用にあたり包装が必須なもの
- 店内における売り場備品や陳列棚など、商品を提示するために作られ、かつ再利用ができるもの
他にも、空輸や海運、鉄道といった輸入品輸送の際に使われる包装や、医療用品の包装、航空機内の保管用、包装以外の用途として、長期間使用できる物は対象外となります。
しかし、これらも年間プラスチック取扱量を計算する時には加算の対象です。
「プラスチック製包装税」の課税となる基準は?
複数の素材で構成された包装資材のうち、プラスチックの割合が最も大きい場合に適用されます。
その際、プラスチック以外の素材の重量を明確に表記できた部分は課税対象外となりますが
それが明記できない場合、包装資材の全重量に対してプラスチック製包装税が適用されます。
非プラスチックが重量比で最大の場合は適用外となります。
課税対象者のやるべきことは?
プラスチックを扱う企業は、製造または輸入したプラスチック製の包装資材の量や、プラスチックのどの部分がリサイクルされているものかを記録する必要があります。
また、プラスチックが混合された包装資材の場合は、プラスチック素材と非プラスチック素材の重量を記録しておく必要もあります。
また、プラスチック製包装税の納税義務がある企業は、関連した全てのインボイスに、包装資材により発生するプラスチック製包装税に関した記載をすることを、イギリスの国税庁にあたる歳入関税庁(HMEC)から義務付けられています。
イギリスにある大手スーパーマーケットでの動き
この章では、イギリスにある大手スーパーマーケット3社の環境への取り組みについて紹介します。
テスコ(2021年3月発表)
イングランド南西部とウェールズの171店舗に、ラップやポテトチップスの袋などの柔らかいプラスチックのリサイクル向けに、回収所を設置しました。回収したプラスチックは洗浄、分別、加工されて食品や美容品向けの包装へとリサイクルされます。
背景として、今までこのような柔らかいプラスチックは多くの自治体でリサイクルされておらず、埋め立てられることが多かったため設置されました。
セインズベリーズ(2021年2月発表)
イングランド北東部の63店舗に、サラダや冷凍食品などの包装に用いられるポリプロピレン製のフィルムを回収するシステムを試験的に設置しました。
ドイツ系SMのアルディ(2019年2月発表)
イングランドとウェールズで、全ての卵の容器をプラスチック製からパルプモールド製に切り替える計画を発表しました。これにより年間900トンのワンウェイ(使い捨て)プラスチックの削減が可能と想定されています。
プラスチックを削減していく動きは世界共通の課題
プラスチックはその使いやすさと、環境配慮素材よりも安価であることから、多くの製品や容器・包装で幅広く使われていて、必要不可欠な素材となっています。
その反面、海洋プラスチック問題などのような問題から、今回のように、プラスチックに税金を課す国も出てきています。
イギリスが抜けたEU(欧州連合)では2021年1月1日から、リサイクルできないプラスチック包装資材に対して、1kgにつき0.8ユーロ、日本円で約110円(2022年5月時)を課す制度を導入しています。
環境への取り組みは、海外で先進的に行われて、日本も後から対応していくパターンがあります。
海外で取り組まれていたプラスチック削減の動きが、日本での「プラスチック資源循環促進法」のように法律として導入されることもありますので、
近い将来、プラスチック製包装に対する税金も検討されるかもしれません。