果実飲料のデザインで決まっているルールとは
消費者が商品を選ぶ要素のひとつに、パッケージデザインがあります。パッケージデザインや商品説明などは、法律に従いつつ消費者を引き付ける内容にしなければいけません。特に果実飲料は、果汁の割合や原材料によって使用できる表示や表現の定めがあるため、注意が必要です。
この記事では、果実飲料における画像やイラスト、商品名や説明などの表示ルールについてまとめました。ルールを理解したうえで、魅力的な果実飲料のパッケージを作っていきましょう。
果実飲料の表示は「公正競争規約」によって定められている
食品のパッケージや表記などの表示に関する法規には「食品表示法」や「景品表示法」があります。表示に関して法律が定められているのは、食品の不当な表示を防止し、一般消費者の適切な選択と事業者間での公正な競争を確保するためです。
食品表示法や景品表示法などの食品全体での表示に関する法規の中でも、果実飲料に関するルールに特定して定められた「果実飲料等の表示に関する公正競争規約及び施行規則」があります。
果実飲料のパッケージや表記は、この規約や規則にのっとった表示をしなければ法律違反となります。法律違反となると、課徴金などのペナルティが課せられるほか、商品の自主回収やパッケージデザインの作り直しや販売差し止めによる莫大な損失を出すことになります。さらに企業としての信頼損失にもつながってしまう恐れもあります。
果実飲料のパッケージデザインを作るときは、必ず法律に沿った範囲での表示が不可欠です。
次の章では、法律に沿った果実飲料の表示のルールや注意点について解説します。
果実飲料における画像やイラスト表示のルール
商品の味わいやイメージを消費者へ伝えるためのパッケージデザインは、商品の売れ行きにも関わる重要な要素です。
ただし、果実飲料のデザインは法律によって表示ルールが定められているため、この章では使用する画像やイラストにおけるルール、注意点について解説します。
「果汁のしずく」「スライス」は果汁100%のみ使用可能
果実飲料のデザインでは、商品の果汁の割合によって使用できる画像やイラストが決まっています。
野菜や果物などの断面を映した「スライス」や果実から「果汁のしずく」が落ちている画像やイラストは、果汁100%のみ使用可能です。
「絞った果汁だけが商品の中に含まれている」というイメージを消費者に与えてしまう可能性があるからです。
ただし、無色透明な水滴など「果汁」に該当しないしずくの表現は、果汁100%以外の果実飲料でも使用できます。「さのう」と呼ばれる果実の粒の部分の表現は、果粒入り飲料(いわゆるつぶ入りジュース)なら果汁100%以外でも使用可能です。
なお、「リンゴジュース」や「オレンジジュース」のように、商品名や文字表示に「ジュース」がある場合は、果汁100%の商品になります。
果実の質感の分かる「リアルな絵・イラスト」は果汁5~100%で使用可能
果実の地肌感、立体感、グラデーションをもちいたリアルな絵やイラストは、果汁5~100%の果実飲料で使用可能です。
なお「絵」とは1枚で作品として完成しているアートのことで、「イラスト」とは主にチラシやバナー広告などビジネス目的で文章などに添えられる、具体性の高いアートを指します。
果汁5%未満は「図案化した絵」のみ使用可能
果汁の含有割合が5%未満の商品の場合、パッケージの画像やイラストには上記のような「図案化した絵」のみが使用可能です。5%未満の商品のパッケージデザインにリアルな果実の絵やイラストを使用すると、不当表示となります。
図案化した絵として認められるのは「果実の色や形を表す程度に描かれたもの」です。たとえば果汁5%未満のみかんを使用した果実飲料のパッケージには、平坦なみかんのイラストやみかんを模したキャラクターのイラストが使用できるということです。
果実飲料の正しい用語の定義
果実飲料の名称や成分表示に使用する用語は正しい定義のものを使用しないと不当表示になります。以下に主な用語を定義とともにまとめました。
用語 | 定義 |
---|---|
果実飲料 | 容器に入れた、または包装された以下の商品を指す ・果実ジュース ・果実ミックスジュース ・果粒入り果実ジュース ・果実・野菜ミックスジュース ・果汁入り飲料 |
果実の搾汁 | 果実を破砕後搾汁や裏ごしなどにより、皮、種子などを除去したもの |
濃縮果汁 | 以下のいずれかに該当するもの ・果実の搾汁を濃縮したもの ・果実の搾汁に還元果汁を混合したもの ・上記に砂糖類、はちみつなどを加えたもので糖用屈折計示度または酸度が基準値以上のもの |
還元果汁 | 濃縮果汁を還元したもの、かつ糖用屈折計示度または酸度が基準値以上のもの |
果実ジュース | 1種類の果実の搾汁または還元果汁の使用割合が 100%のもの(少量の砂糖類や添加物の含有は可) |
●●ジュース | 表記の果実の搾汁または還元果汁の使用割合が100%のもの。たとえば「みかんジュース」ならみかんの搾汁または還元果汁を100%使用した飲料 |
果実・野菜ミックスジュース | 果汁と野菜汁の使用割合が100%、かつ果汁の使用割合が 50%を上回るもの |
果粒入り果実ジュース | 果実の搾汁または還元果汁の使用割合100%、かつかんきつ類の果実のさのうまたはかんきつ類以外の果実の果肉を細切したものを加えたもの |
果汁入り飲料 | 主成分が果汁、かつ果汁の割合が5~100%未満のもの |
その他の飲料 | 果汁の使用割合が 10%未満で以下いずれかに該当するもの ・商品名に果実名を使用している ・着色や風味で果汁を使用していることを連想させる |
果実飲料で気を付けるべき文字表示
果実飲料の商品説明や品名などの表示にもルールがあります。果実飲料の表示で使用できるもの、できないものについて解説します。
使用してはいけない表示
- 絞ったままの果汁のみを使用していると誤解を与える表示
(例:純正、純粋、ピュア、生、自然、フレッシュ など) - 病気治療等の効能を表す表示
(例:飲むと高血圧が改善されます) - 競合の商品よりもはるかに優れていると誤解を与える表示
(例:特選、高級、デラックス、スペシャル など) - 100%を超える果汁の使用表現
(例:1.3倍、130%など)
上記の表示や表現は誤解を生む可能性があるため、使用できません。
果汁の使用割合別にみる不当表示の適用一覧表
果汁・野菜汁 100% |
果汁 50%以上100%未満 |
果汁 10%以上50%未満 |
果汁 5%以上10%未満 |
果汁 5%未満 |
|
---|---|---|---|---|---|
果実のしずく、スライスの絵 | ○ | × | × | × | × |
果実の絵 | ○ | ○ | ○ | ○ | × (図案化した絵は○) |
天然、自然、生、新鮮、フレッシュ等 | × | × | × | × (客観的根拠あれば○) |
× (客観的根拠あれば○) |
純正、純粋、ピュア等 | × (ストレート果汁と天然香料のみ使用なら○) |
× | × | × | × |
栄養、健康、美容等 | ○ | ○ | × (ビタミン強化すれば○) |
× (ビタミン強化すれば○) |
× (ビタミン強化すれば○) |
医薬品のような効能 | × | × | × | × | × |
特選、精選、高級、デラックス、スペシャル等 | × | × | × | × | × |
「果実飲料等の表示に関する公正競争規約」における規定の解釈について (不当表示編)|果実飲料公正取引協議会
「果実飲料等の表示に関する公正競争規約」における規定の解釈について (一般編)|果実飲料公正取引協議会
特定の条件を満たせば使用できる表示
以下の表示や表現は、条件を満たせば使用できます。
- 【ストレート、天然】
ストレート果汁や天然香料を使用している根拠があれば使用可能 - 【栄養、健康、美容】
果汁50%以上かつビタミンを強化した商品の説明文に使用可能
(ただし商品名にはいかなる理由でも使用不可)
無果汁の清涼飲料水の表示ルール
原材料に果汁や果肉をまったく使用していない無果汁の飲料は、「果実飲料」ではなく「清涼飲料水」に該当します。よって「果実飲料」が使える表示のルールには該当しません。無果汁飲料のパッケージや商品説明において、以下は不当表示となるため避けましょう。
- 商品名に果実の名称を使う
- パッケージに果実の絵や写真、イラスト、図案を使う
- 果汁、果皮、果肉と同じ、または似ている色、香り、または似ている着色、着香、味付けがされているという内容をパッケージに表記する
魅力ある果実飲料のパッケージデザインを実現するには
果実飲料と清涼飲料水のパッケージデザインや説明表記は、法律を順守して行うことが前提となります。果汁の割合や原材料によって使用可能な表現やデザインが決められているので注意しましょう。パッケージデザインを検討する前に、法規の内容を十分に理解する必要があります。
果実飲料に関する法規については、日本果実協会の公式サイトにてまとめてあります。
消費者庁では、表示に関する相談窓口を設けています。
魅力的なパッケージデザインを作るなら折兼へ
法令に沿った上で魅力的なパッケージデザインを作成したい方は、折兼へぜひご相談ください。
画像やイラストのデザインをはじめ、消費者が手に取りたくなる魅力的なパッケージデザインをご提案します。
果実飲料のパッケージデザインは果汁の含有率(%)で変化
果実飲料における表示や表現のルールを紹介しました。不当表示を避けるためには、法律を理解した上でパッケージデザインや商品説明を考案しなければいけません。
果実飲料は幅広い年齢層から支持されている魅力的な商品です。法律を遵守しつつ、消費者にその魅力を訴求できるパッケージデザインをぜひ実現してください。