食品を取り扱う施設の床清掃・洗浄の大切さ
厨房の床は、日々、様々な汚れが付着します。
調理中の食品カスの落下、揚げ物油のしたたり、食器などを洗浄した際のはね水、作業靴の裏に付着した細菌の拡散などの汚れは、掃除や洗浄で取り除かない限り、どんどん蓄積していきます。
これらの汚れを放置すると、床に固着して汚れ自体を取り除くことが難しくなったり、細菌へ増殖に最適な場所を与えることになります。
また、従業員の転倒事故や、床からの2次汚染による食中毒と考えられる事例も、実際に発生しています。事故を防ぐために、食品を取り扱う施設の床は、毎日きちんと清掃・洗浄することが大切です。
正しい洗浄を始める前の事前準備
正しい洗浄を始める前に、事前の準備をすることで洗浄の効果をより高めることができます。洗浄をする場所がきちんと整理・整頓できているか、床にひび割れなどの破損がないかなどを事前にチェックしておきましょう。
整理・整頓の実施
最初に、食品衛生で重要な「5S」のうち、整理と整頓を実施してください。
5Sとは…
- 整理
- 整頓
- 清掃
- 清潔
- 習慣
まずは整理です。
床においてある不要なものをできる限り捨てることにより汚れの原因がひとつ減ります。
次に整頓です。
整理してすっきりしたあとで、あらためて物の置き場所を決め、床の清掃がしやすいように配置することで、効率的に清掃・洗浄ができます。この5Sは、一回やったら終わりではなく、継続して実施することで、どんどん衛生レベルが上がっていきます。
床の状態をチェック
床の状態を確認すれば、どこを重点的に清掃・洗浄するべきかがわかります。
下記の項目をチェックしましょう。
- ひびが割れたり、剥がれたりしている部分はないか。
- 水が溜まっている部分がないか。
- 油の固着や、黒ずみはないか。
- 厨房機器の下や、隙間にゴミが溜まっていないか。
- 床の排水口や排水マスもきちんと清掃されているか。
床の破損であれば補修が必要ですし、水たまりがあれば水切りでしっかり流します。また、油の固着には専用の洗剤が効率的ですし、厨房機器の隙間のゴミも、配置の見直しや専用の清掃・洗浄ツールが必要かも知れません。
上記項目を怠ると、細菌やカビや害虫が発生しやすく、衛生状態も悪化します。
この項目をどれだけクリアできるかで、清掃・洗浄の出来栄えが決まるといっても良いでしょう。
飲食店の床の洗浄方法
飲食店では大きくわけて、2種類の床があります。
床に排水溝が設置されていて、水を流すことができる「ウェット方式」の床か、排水溝がなく水を流すことのできない「ドライ方式」の床です。ウェット方式とドライ方式の床は、洗浄の仕方は大きく違います。それぞれの床の、正しい洗浄方法を紹介します。
ドライ運用をすることで細菌の繁殖や労災の発生を防ぐ
「ドライ運用」というのは、床のタイプは「ウェット方式」ですが、水を必要以上に床へ流さず、流した水は、水切りワイパーやモップなどで水分を取り除き、出来る限り床を乾いた状態で作業する、ということです。
「ドライ運用」をすることで、床や作業室内が比較的乾燥した状態を保つことができるので、細菌の増殖や厨房機器の腐食などを抑えることができます。
また、水や油による転倒も減って、労災事故の減少も見込めます。
厨房など水を流す床の洗浄方法(ウェット方式)
ウェット方式の床は、水を排水溝に流すことができるのが、最大の特徴です。
大量の洗剤と水を使って洗浄することができ、掃除しやすい床と言えます。
ウェット方式の床洗浄方法は下記になります。
- 大きなゴミを、ほうきなどで取り除く。
- 洗剤を床にまき、少し馴染ませる。
- デッキブラシ等でこすり洗いをする。
- 流水でよくすすぐ。
- スクイジーで水気を切り、乾燥させる。
最近では、洗剤を泡状にして床にまく「泡洗浄」という洗浄方法を採用する飲食店も増えています。洗剤を泡状にすることで、汚れを浮かす効果が期待でき、洗剤の節約にもつながり、ボトルに洗剤を入れてホースを水道につなげるだけで、簡単に泡状にできるツールがあります。
また、洗剤に次亜塩素酸ナトリウムなどの成分が入ったものを使用すれば、床の除菌をしながら、排水溝の臭いを抑える効果も期待できます。
客席など乾いている床の洗浄方法(ドライ方式)
ドライ方式の床は、排水溝がないので、水をたくさん使って洗浄する事が困難です。いったん汚れが蓄積してしまうと、落とすのが非常に難しくなるので、毎日の洗浄が大切になります。
ドライ方式の床 洗浄方法は下記になります。
- 大きなゴミを、ほうきなどで取り除く。
- 洗剤を含ませたモップなどで汚れた部分の汚れを落とす。
- きれいなモップで水拭きする。
- スクイジーで水気を切る、または乾いたモップで拭き取り乾燥させる。
洗剤やモップでの水拭きは、お湯を使うと、乾きやすく、床の乾燥状態を維持しやすくなります。また、ゴミや汚水などをまとめて吸い込むことができる「乾湿両用バキュームクリーナー」や、回転ブラシと洗剤で汚れを落としながら吸い込む「床洗浄機」を使うと力を必要とせず床の清掃ができます。
乾湿両用バキュームクリーナー
一般粉塵から廃液まで、あらゆる現場で活躍するオールマイティ・バキューム。 出典:蔵王産業株式会社
床洗浄機
コードレスで使えパワフルな洗浄力を持つ自動床洗浄機。 出典:株式会社くうかん
業務用ロボットクリーナー
ゴミを取るだけの機能であれば、「業務用ロボットクリーナー」も活躍します。 清掃パターンが選べ、自動走行制御を搭載のマキタのロボットクリーナー。 出典:株式会社マキタ
便利な洗浄ツールを有効活用することで、洗浄作業を効率化することができます。
2020年6月から国内でもHACCPが義務化される
2018年6月に食品衛生法が改正され、2020年6月に国内でもHACCPの義務化(制度化)が施行されることが決定し、2021年6月1日をもって完全施行となりました。
HACCPに基づいた衛生管理は、準備して1日で導入完了というわけにはいかず、それなりの準備が必要となります。まだ準備にとりかかっていない食品事業者は、一刻も早くHACCP制度化への対応をすすめてください。
世界共通の衛生管理の手法で、全ての食品関連事業者が対象
HACCPとは、食品の調理工程に隠れた危害要因を洗い出して、あらかじめ対策を立てて実行することで食中毒事故を防止する衛生管理システムです。HACCPは、世界では衛生管理の標準的な手法として定着しており、アメリカやEUなどでは、日本より早く義務化(制度化)が導入されています。
日本の場合は、業種と規模によってHACCPシステムをどこまで導入しなければならないかが変わります。ただし、飲食店を含むほぼ全部の食品事業者が、制度化の対象であることには変わりありません。
HACCPに対応しなければ営業停止もありえる!
HACCP制度化に対応しないと、どうなるのでしょう?
厚生労働省からの発表では、HACCP制度化は、地方自治体(保健所)の衛生監視指導員が、事業者への定期敵な立ち入り検査や、営業許可申請・更新などのタイミングで監査が実施されるとのことです。
罰則の規定はありませんが、実施を怠るとまずは行政指導が行われ、それに従わないと改善が認められるまでの間、営業停止などの行政処分が行われる可能性がありますので、HACCPの導入は必須と言えます。
床の洗浄はHACCPシステムの前提条件である
HACCPは、調理工程中の危害要因に対策することで食中毒事故を防止するシステムです。HACCPシステムを成り立たせるためには、「一般衛生管理」という普段からの清掃・洗浄などの衛生管理も、実は非常に重要であり正しい一般衛生管理の実施を前提に、HACCPシステムが成り立っている、といっても過言ではありません。
その一般衛生管理のひとつが「床の洗浄」であり、こういった一つずつの衛生管理を、正しくルールを決めて確実に実施していくことが、HACCP制度化に対応する近道といえます。
折兼の衛生動画ツールで HACCP制度化への対応ができる
HACCPを導入するにあたって具体的に、どのようにすすめたらよいのでしょうか。導入について知りたい方は、折兼ラボの記事「HACCP制度化への対応」や、動画「5分でわかるHACCP」をご覧いただくことで、疑問が解決します。動画を見ることで、HACCP制度化への対応に必要な知識を、しっかりと身につけることができます。
また、HACCPシステムの前提となる一般衛生管理についても、基礎知識やツール紹介の動画が公開されています。
食品衛生を扱う会社のため多数の事例がある
株式会社折兼は、食品衛生資材の販売を通じ様々な現場での衛生のお困りごとを解決してきました。衛生管理の手法は、同じ業種でも事業所の規模や現場環境によって、解決策は様々です。
株式会社折兼は、衛生管理グループの専門部署を構え永年の経験を生かして、お客様の現場環境にあった解決手法やツール提案をすることができます。
正しい床洗浄とHACCPの導入で衛生管理をきちんとする
正しい床洗浄とHACCP制度化について説明をしてきました。正しい床洗浄をするためには、床の状態によって洗い方やツールを変えたほうが効果的です。一般衛生管理や床洗浄もHACCP制度化に向けて重要な内容となります。折兼ラボや折兼の衛生ツールを活用し、HACCP制度化に対応してください。