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包装技術がもたらす賞味期限延長の可能性

2023.05.19

食品ロスの対策として注目されている賞味期限の延長とは

陳列棚から商品を取る

食品ロスの原因はさまざまですが、その1つに「賞味期限切れによる廃棄」があります。
賞味期限が長くなればなるほど、賞味期限切れを理由とした廃棄のリスクが軽減するため、食品ロス対策として「フィルム(包装技術)を用いた賞味期限を延長する方法」が注目を浴びています。
 
そこで本記事では、賞味期限延長による食品ロス対策の効果や基礎知識、フィルムを用いた成功事例、用いるうえでの注意点などについて詳しく解説します。

賞味期限延長による食品ロス削減のメリットについて

食品ロスとは、食べられるのに廃棄される食品のことです。賞味期限の延長が食品ロス削減に与える効果について、賞味期限延長の基礎知識とあわせて詳しくみていきましょう。

賞味期限とその延長について

近年、食品製造における衛生技術や包装技術の向上により、賞味期限を延長できるケースが増えています。さまざまな工夫によって品質が劣化するスピードを遅らせることで、賞味期限を延長できます。賞味期限の延長は、製造・流通の段階だけではなく、購入後の家庭での食品ロスの削減につながるため、積極的に取り組まれている対策の1つです。

「賞味期限」と「消費期限」の違い

賞味期限延長について理解するために、消費期限との違いを確認しておきましょう。

レトルト食品の賞味期限
パック入りの魚の切り身
賞味期限 消費期限
意味 味や風味など食品の品質を維持できる期限 安全に食べることができる期限
表示する食品 比較的傷みにくい食品 急速に劣化する食品
表示する食品の例 スナック菓子や缶詰など 食肉や生菓子、調理パン、弁当など
期限が過ぎた場合の変化 美味しさや風味などの品質が低下する 安全に食べることができなくなる

賞味期限切れの食品は味や風味などは劣化するものの、安全に食べることができます。一方、消費期限切れの食品は安全に食べることができません。いずれの期限表示も「年月日」で表示しますが、賞味期限が製造から3ヶ月超えのものについては「年月」での表示が認められています。

賞味期限延長で食品ロスが減り環境配慮に貢献

賞味期限延長によって食品ロスが減ると、環境への負担軽減につながります。余った食べ物は家庭だけではなく飲食店や流通業者、加工業者などからも出て、処理工場で可燃ゴミとして処分されます。このときに問題となるのが、水分を含む食品を焼却したり、食品を運搬したりする過程で発生する「二酸化炭素(CO2)」です。二酸化炭素は地球温暖化の原因のため、世界中で排出量の制限に取り組んでいます。

また、焼却後の灰の埋め立てにおいても環境に負担がかかります。
逆に、賞味期限を延長することで食品ロスが削減できると、環境への負担軽減につながります。

賞味期限延長で、生産側の廃棄ロス削減にも貢献

環境省の「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度)について」によると、一般廃棄物(飲食店や小売店などから出る食品を含む)の処理費用のうち、不足分の約2兆885億円程度を国が補填しています。これだけ多額の金額を補填しなければならないほどに、生産側の廃棄ロスが多い状況と考えられます。

食品は、生産されてから家庭へ届くまでに長い時間がかかるため、その間に賞味期限が短くなり、廃棄ロスが発生しやすくなります。そのため、賞味期限を延長することは生産側の廃棄ロスの削減にも貢献するのです。

廃棄ロスが発生すると、その食品の原材料の仕入れや生産、加工にかかったコストが無駄になるうえに、廃棄するためのコストも発生します。賞味期限延長による廃棄ロスの削減は、企業の損失を抑えて利益を増やす施策ともいえるでしょう。

消費者は賞味期限が延長されていることをどう捉えている?

賞味期限延長に対して消費者はどのような印象を持っているのでしょうか。京都市は公益財団法人 流通経済研究所に「食品スーパーでの販売期限延長に関する社会実験」を委託しました。
 
京都市内の食品スーパー5店舗において、従来よりも賞味期限・消費期限を延長して販売し、商品廃棄数量などを実験前と比較するという調査です。実験の結果、廃棄点数ベースで約10%の削減効果がみられました。
 
また、京都市在住の20歳以上の男女1,062名に「販売期限の延長による食品ロス削減への取り組み」に対する意見を尋ねたところ、「良いことだと思う」が977人(92%)、「良いことだと思わない」が85人(8%)の結果となりました。これらの調査結果から、賞味期限延長に対して肯定的な意見を持つ消費者が多いことがわかります。

食品ロスが注目されている理由とは

食品廃棄のイメージ

そもそも食品ロスはなぜ注目されているのでしょうか。
日本と世界における食品ロスの状況や対策などについて詳しく解説します。

近年の食品ロスの状況と日本での状況

農林水産省によると、令和2年度の食品ロスの推計値は年間522万tです。
日本人1人あたり年間で約41kgもの食品ロスを出しており、全国民が1日に茶碗一杯分のご飯を毎日捨てている計算になります。2012度の食品ロスが年間642万t、2018年度は600万tであることを踏まえると、食品ロス量は減少傾向にあります。しかしながら、依然として多くの食品ロスが発生しているため、賞味期限延長を含めた対策を進めることが急務と言えるでしょう。

世界での取り組み

食品ロスは日本のみならず世界でも大きな問題として注目を浴びています。国連食糧農業機関(FAO)によると、年間で約13億tもの食品ロスが発生しており、1人あたりに換算すると120~300kgと日本の約3~8倍にもなります。
 
こうした事態を受けて、国連は2015年に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」において、2030年までに食品ロスの半減を目標に設定しました。持続可能な開発目標(SDGs)においても、「12. 持続可能な消費と生産」に、食品廃棄物に関する目標が掲げられています。具体的な取り組みの内容は、食品ロスの発生防止・削減、再生利用および再利用です。

日本の企業、政府・自治体の取り組み

政府は令和元年5月に「食品ロス削減推進法(正式名称:食品ロスの削減の推進に関する法律)」を公布、同年10月1日に施行しました。同法にもとづき毎年10月31日を食品ロス削減の日と定め、啓発資料の提供やイベントの開催などを通じて、国民および事業者の意識向上に努めています。
 
また、食品ロス削減に向けて対策を行う企業も増加傾向にあります。
例えば、豊洲市場で取り扱う水産物や青果物を販売する通販サイト「豊洲市場ドットコム」の目的は、単なる売上アップだけではありません。豊洲市場での売れ残りによる食品ロスを防ぐ観点から、通販サイトを通じて全国へ新鮮な食材を届けています。
 
そのほか、山崎製パン株式会社は人気の「ランチパック」シリーズの製造過程で発生する食パンの耳を再利用することで、食品ロスに取り組んでいます。食パンの耳は、グループ会社の株式会社末広製菓で「ちょいパクラスク」の原料として再利用したり、委託先のパン粉メーカーで業務用パン粉として製品化したりしています。

賞味期限延長に役立つフィルムとは

コンビニのおにぎり

賞味期限延長の方法の一つに「食品フィルム」によるものがあります。
その種類は、酸素透過や水蒸気透過などを抑えるバリア素材のものや真空包装やガス置換包装などさまざまです。さらに、個包装化することで外袋を開けたまま放置したことによる食品ロスのリスクの減少が期待できます。
 
それでは、フィルムの工夫によって賞味期限の延長ができた事例やフィルム選びの注意点などについて詳しくみていきましょう。

賞味期限の延長ができた商品の事例

株式会社NOUMANNは、青果物の水分の蒸散を抑える鮮度保持袋を採用し、さらにクリーンルームで生産した野菜を低温カット室で包装しています。
その結果、生産・包装段階での菌の抑制と鮮度保持袋による効果によって、鮮度保持期間を2~3日から1週間~10日程度まで延長することに成功しました。
 
また、中央化学株式会社では、オリジナル惣菜「お母さん食堂」に酸素を遮断するプラスチック容器と上蓋フィルムを採用し、密閉後に内部の空気を除去して窒素と二酸化炭素を充填しました。
その結果、食品の酸化と菌の繁殖を抑制できるようになり、消費期限の延長に成功しています。これは消費期限延長の事例ですが、同じ方法で賞味期限の延長が可能です。

フィルムを用いる上での注意点

食品包装フィルムを使用する場合は、内容物の特徴に合わせて選ぶ必要があります。
包装フィルムが内容物に適さない場合、腐敗したりカビが生えたりと品質と安全性の低下を招くことがあります。さらに、包装に穴が開くようなトラブルも起こりかねません。そのため、賞味期限延長を目的にフィルムを選ぶ際は、専門業者からアドバイスを得ることが大切です。

フィルムで食品ロス削減への可能性

食品フィルムの工夫によって賞味期限延長を実現できると、生産・加工・流通だけではなく、販売店や家庭での食品ロスの削減にもつなげられます。また、前述したように賞味期限延長に対して肯定的な意見を持つ消費者が多いため、賞味期限を延長したことで売り上げが低下する心配はほとんどないでしょう。むしろ、廃棄ロスの削減によって利益の増加が期待できます。
 
食品ロス削減に向けて取り組むことを検討する際は、まずは食品フィルムの採用や変更から始めてみてはいかがでしょうか。

フィルムに関することは折兼まで

食品フィルムについては、折兼にご相談ください。
食品の形状や種類、性質などを踏まえ、最適なフィルムをご提案いたします。また、フィルムの専門家はもとより、商品の販促に詳しいデザイナーもおりますので、フィルムについて何から決めればよいかわからないという方へのサポートもできます。
 
どのような小さなことでもお気軽にご相談ください。

賞味期限の延長で食品ロス・廃棄ロス削減に貢献

賞味期限の延長は、食品ロスと廃棄ロスの削減につながります。食品フィルムを工夫することで、賞味期限の延長だけではなく販促効果の向上も期待できます。賞味期限延長だけではなく、販売傾向にもとづいた製造数の最適化や調理の工夫など、さまざまな方法で食品ロス・廃棄ロスに取り組みましょう。

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