包装餅とは?
餅はカビが生えやすい食品です。
包装餅の歴史は、餅の宿敵“カビ”を防ぐことを目的として事が始まりです。1964年、新潟県にある食品研究センターが、フィルム包装ごと湯殺菌(80℃)するロケット包装という技術を開発したことにより、保存期間が1~2日から約2週間まで延長されます。
その後、半真空状態で餅を保存することにより、保存期間が約6ヵ月に延び、レトルト殺菌釜により約1年間まで延ばすことができるようになりました。1979年、脱酸素材の登場により加熱殺菌せずに餅本来の風味はそのままで長期保存中もその風味を保つことが可能になり、現在の餅の包装形態に至り、その後も新しいスタイルの包装餅がたくさん出てきています。
それぞれの包装餅にあって適切な包装資材を選びましょう。
包装餅の種類
お餅といえば、お正月や祝い時に食べる”晴れ”の食品でしたが、現在では保存性のある包装餅が開発され、年中いつでも食べられる食品となりました。
包装餠は、板餠・殺菌切り餠・生餠・鏡餠・冷凍餠の5種類ありますが、現在では、生餅と鏡餅が餅の割合の大半を占めています。餅の種類によって、包装形態やその特徴にあったフィルム選定が必要になりますので、まずは5種の餅について詳しく説明します。
板餅
板餠とは、大きくひとかたまりの板状になっており、切れ目が入っているので好きな量だけ折って食べることができる餅の為、手軽で便利な、ゴミが少なくエコな餅です。板餅は、昭和39年秋頃に誕生した餅で、つきたての餅を即真空包装するので風味が抜群なのが特徴です。
<製造手順>
- つきたてのお餅を耐熱性のある袋に詰める。
- 真空包装する。
- 型枠に入れる。
- 加熱殺菌する。
- 出来上がり。
現在の餅業界は、一切れごとの個包装が主流となっている為、現在ではスーパーなどでは見かけることも少なくなってきました。
殺菌切り餠
殺菌切り餅は、一切れごとに真空・個包装されている、短冊・矩形(くけい、四角形のこと)に切断された餅です。切り餅は、板餅より少し遅れて昭和47年頃出始め、昭和50年頃から本格的に出回るようになりましたが、殺菌切餅は現在見かけることは少なくなっています。
<製造手順>
- つきたてのお餅を低温で固める。
- 低温で固めた餅を1個ずつ短冊や矩形に切断する。
- 耐熱性のある袋に入れ、真空包装する。
- 袋のまま加熱殺菌し、水で冷やして餅を固める。
- 固まった包装餅を外装袋に包装。
- 出来上がり。
殺菌切り餅とこの後紹介する生餅はどちらも個包装されていますが、加熱殺菌して真空包装をしているか、脱酸素剤をいれているかが違います。
生餠
生餠は、私たちがスーパーでよくみかける1個ずつ個包装された最もポピュラーな餅です。昭和53年頃から脱酸素剤が包装餅に使用されるようになり、加熱殺菌しない生切餅が市販されるようになりました。
特に昭和58年暮れからは、製造技術の進展により超無菌化したクリーンルームで製餅し、ひと切れ毎を無菌包装したものが出回るようになりました。餅の消費の割合としては、約90%以上を生餅が占めています。
鏡餅
鏡餅は、大きい餅の上に小さい餅をのせ、お正月に飾る丸い平たいお餅です。鏡餅の由来は、鏡に魂が宿ると古くから伝えられていたことから、丸いお餅を鏡に見立て鏡餅と言われるようになりました。鏡餅は年神様の拠り所とされており、松の内の間は神様の魂が宿る縁起物の為お正月に飾ります。
また、鏡開きの日にその魂が宿ったお餅を頂き、年神様の運気や力を分け与えて貰い一年の無病息災を願う意味が込められています。包装パックの鏡餅は昭和46年に、カビが発生したりヒビ割れしない鏡餅として開発されました。最近では餅型容器に個包装された切り餅や丸もちが入った商品が出てきています。
冷凍餅
冷凍餠とは、昭和43年から製造された、ついた餅を軽く硬くさせたところで切断し、マイナス110度位で急速冷凍したものです。解凍すればつきたてのような柔らかい食感のお餅が楽しめます。現在はお店で売られていることはほとんどなく、ご家庭でお餅を買いすぎてあまってしまったときに、約1切れずつラップに包み、冷凍用保存袋に入れて冷凍した餅のことを冷凍餅と呼びます。
餅にカビが生えるメカニズム
カビ菌は下記の5つの条件が揃うと爆発的に繁殖します。
- 温度:カビは20~30℃で発生しやすく、特に25℃付近で繁殖します。
- 湿度:空気中の水分が多いほど発生しやすいです。特に湿度が80%を超えてくるとカビの発生が非常に高くなります。
- 酸素:カビの菌糸や胞子は酸素を取り込み餅の表面に広がります。
- 養分:カビは植物に属しますが、光合成などで養分を作れない為、外部より摂取する必要があります。
お餅にカビが発生しやすいのは「でんぷん」「タンパク質」「水」「脂質」などで出来ており、カビの大好物な養分と湿度を多く含んでいる為です。
カビを防ぐ脱酸素剤
脱酸素剤とは、密閉した容器内の酸素を吸収してくれるものです。鉄の酸化を利用したものが主流で、有機系の酸化反応を利用したものも一部で使用されてます。脱酸素剤を使用することにより、カビの増殖に必要な酸素を除去することができるため、餅の日持ちにもつながります。
脱酸素材を使用する場合は、ガスバリア性の高いパッケージを併用する必要があります。ガスバリア性の高いパッケージを使用しないと袋の外側からどんどん酸素が入ってしまい、脱酸素材を使った意味がなくなってしまうので注意してください。
劣化を防ぐ包装の方法
食品は、何もしなければ製造後に流通・輸送・保管中に品質が劣化して、腐敗・変色や吸湿・乾燥の現象が進み、商品価値を失ってしまいます。劣化を防ぐ包装の方法は大きく分けて下記の二種類あります。
- ガス充填包装
- 真空包装
ガス充填包装
ガス充填包装とは、密閉空間を作りその内部に不活性ガス(窒素ガス、炭酸ガス、酸素ガス)で満たすことにより、食品の品質低下を防ぐ包装です。充填する不活性ガスの種類によって、得ることができる効果が変わります。
窒素ガス
無味・無臭・無色のほとんど影響を与えないため、酸化防止・変色防止・香気保存等の用途で使用されますが、静菌作用はないので注意してください。
※主な仕様用途:油菓子・ナッツ・削り節・コーヒーなど
二酸化炭素(炭酸ガス)
水や油にも溶け、食味に影響することがありますが、静菌・防虫効果があるため、好気性菌・カビ・害虫などを発生を抑えることができます。
※主な仕様用途:ウィンナー・生肉・和菓子・洋菓子など
酸素ガス
肉などで酸素とオキシミオグロビンを結合する事でキレイな赤色を発色させる為に使用する。
※主な仕様用途:生肉、鮮魚
ガス充填包装の歴史は古く、古代中国で食品容器内で油を燃焼させ酸素を減らし、酸化を少なくして長期保存させたと言われております。また、英国で150年ほど前に牛乳ビンの頭の方のスキマに炭酸ガスを入れて保存性の向上させるという特許申請があったとされています。
真空包装
真空包装とは、袋に内容物を入れて、真空下でヒートシールする事により袋内部の空気を無くした包装形態です。包装内の酸素を無くすことで内容物である食品の酸化を防ぎ、カビの繁殖を防ぐことができます。
しかし、空気が残っているとボイル殺菌やレトルト殺菌中に袋内部で圧力が高まり、負荷がかかることでラミネート剥離や袋の破れが発生するなどの問題が発生することがありますので注意してください。
真空包装は全ての材質の袋でできるわけではなく、一般的にはナイロンとポリエチレンの複層フィルム(NY//LLDPE)を使用した専用の袋を使用するので材質もチェックしましょう。
餅に最適な包装の選び方
餅は非常に繊細で、包装する餅によって含まれている水分の量がさまざまですので、この包装が向いているという事は一概に言えません。そのため、包装する餅によって最適な包装を選択することが必要です。
真空できるか
餅はカビが生えやすい食品なので、保存する場合は、まず酸素バリア性の高い袋を使用した真空包装を検討しましょう。
真空包装すれば、酸素をシャットアウトできるので、カビに発生を大幅に抑えることができます。脱酸素剤を封入すると、袋内や餅に含まれた酸素を取り除くことができるためより効果的です。
長期で保存したい場合は、真空して冷凍がおすすめです。
サイズ
袋サイズの選び方は包装する餅によって選ぶ必要があります。袋が大きすぎると、真空する時間が余分にかかり製造時間が大幅に伸びてしまい、生産効率が悪くなってしまいます。
また、脱酸素剤を入れる場合は、袋のサイズが大きいと袋内の酸素の量も多くなってしまいますので、必要となる脱酸素剤のサイズも大きくなり、コスト増につながります。餅を入れる袋は、大きすぎず、小さすぎず、内容物にフィットしたサイズを選びましょう。
防湿性
防湿性とは一般的に水分の透過を防ぐ機能のことであり、防湿性が低いと、水分の多い食品の場合は、水分が袋の外に出ていきやすいため、乾燥が進みパサパサになってしまいます。乾燥している食品の場合は、外から湿気等の水分が入りやすくなるので、湿ってしまい商品価値が下がってしまいます。
餠の場合はいくら酸素を減らしても、袋に防湿性がないと餅に余分な水分がついてしまい、カビが発生しやすい環境を生み出してしまいます。
防湿性を上げるためにどのようなフィルムが適しているのかというと、内容物が安価な商品にはPP(ポリプロピレン)系の樹脂を使ったフィルムが使われることが多く、より防湿性を高める必要がある商品では透明蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)を使用することが多いです。
デザイン
パッケージデザインの重要な役割としては短い時間で消費者の目に留まり、特徴を理解され、そして手に取ってもらえることが大切です。中長期的な役割としては、デザインが消費者の心に残りブランドや商品の象徴的存在となることです。
デザイン作成時は、この2つの観点を念頭に置きながら進めていく事が重要です。
最適な包装を選び、カビの発生を防ぐ
包装餅についてご説明させて頂きましたが、その中でも特に重要なポイントは下記の3つです。
- カビの発生のメカニズム。
- 劣化を防ぐ包装の方法。
- 餅の包装の選び方。
その3点を元に包装を考えれるためには、状況毎に適切なフィルム、サイズ、脱酸素剤、ガスの種類選定、デザイン作成など多岐に渡る知識が必要になります。
全ての知識を一から学ぶには非常に多くの時間がかかりますので、専門家に相談することが問題解決への一番の近道になります。(株)折兼には、ラミネートフィルムの専門スタッフが在籍していますので、餅の包装形態をお悩みでしたらぜひお気軽にご相談ください。