プラスチック容器に使われている素材は何がある?
スーパーのお惣菜、コンビニスイーツの包装、飲食チェーン店のテイクアウト容器など、私たちの暮らしには食品に関するプラスチック容器が当たり前のように無数に存在し、欠かせないものとなっています。マイクロプラスチック、CO2排出などの環境問題から脱プラや減プラなどの取り組みが多くされていますが、今後もプラスチック資材が完全になくなることはないでしょう。
また普段何気なく使用されているプラスチック容器ですが、原料・工程・材質・特徴など意外と知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなプラスチック容器の材質について、その成り立ちや、メリット・デメリットのご紹介、またプラスチック容器の材質を選ぶときのポイントなどを解説していきます。
プラスチックの原料から容器になるまで
まず、はじめにプラスチックの原料や成り立ちについてご紹介していきます。
普段何気なく、使用しているプラスチック製品ですが、その原料や成り立ちについては知られていないことが多くあります。特に商品を購入される側のお客様は成り立ちについて意識して購入されることはほとんどないでしょう。
プラスチックの原料・成り立ちを知ることで、プラスチック容器の使い方や使用量・廃棄法などに対しての考え方に変化があるかもしれません。
プラスチックの原料は?
プラスチックの原料は石油を精製して得られるナフサです。
まず、原料となる原油を精製プラントで加熱し、蒸留すると、いったん蒸気になります。
その蒸気を冷やしていくと、灯油、ガソリン、軽油など様々な成分の油に分かれます。
このうちの一つがナフサでプラスチックの原料となるのです。
日本では、ナフサの原料となる原油やナフサそのものの計95%以上を海外からの輸入に頼っています。近年起きているプラスチック製品の価格の高騰は、原料となる原油やナフサの輸出減少や値上がりが原因のひとつとなっています。
各プラスチックの主な3つの原料へ
次に、液体状のナフサを800℃以上の高温の炉の中で熱します。
すると、熱分解反応が起こり、沸点の差に応じて、「エチレン」「ベンゼン」「キシレン」などの物質に分かれます。 これらの物質は石油化学基礎製品と呼ばれるプラスチックのもとになる物質で、水素と炭素が結びついた分子で、モノマーと呼ばれます。このモノマーをつなぎ合わせると、プラスチックの原料がつくられます。 容器によく使用されるポリプロピレンはエチレン、ポリスチレンはベンゼン、ポリスチレンテレフタラートはエチレンとキシレンを使用し、様々な加工を行うことで、作られています。
食品容器に使われる主なプラスチックの材質のご紹介
ここからは実際に食品容器に使われているプラスチックの材質についてご紹介していきます。
代表的な材質について、メリットやデメリット、機能性などをご説明していきます。
意外と知らなかったメリットや、新たな素材の発見があるかもしれません。
最後には表にまとめていますので、材質選びの参考にしてください。
PP(ポリプロピレン)
PPは、弁当容器やフードパックに使われる使い捨て食品容器の代表的な材質です。
メリット
耐熱性・耐油性に優れ、温かい食品や揚げ物の容器に使用することができます。
プラスチック素材の中でも比較的軽いという特徴もあり、商品全体の軽量化にもつながります。
デメリット
透明性が低いため、お弁当の蓋や青果用の容器など中の食品を見せたい場合には向きません。
PPF(フィラー入りポリプロピレン)
PPFはPPにタルクなどの無機物を配合することにより、耐熱温度を130℃まで高めた材質です。
メリット
通常のPPと比べ耐熱温度が130℃と高く、電子レンジでの温めをすることができます。
また、耐油性を持つため、弁当や惣菜の容器として適している材質です。
デメリット
電子レンジの温めはできますが、電子レンジ、オーブンによる調理は変形の原因になるため、行えません。耐熱性はありますが、断熱性は持たないため、熱いものの容器として使用する場合には注意が必要です。
HIPS(ハイインパクトポリスチレン)
HIPSは、PSにゴム素材を配合し、衝撃性を向上させた材質です。
メリット
PSのデメリットである耐衝撃性の低さをPSにゴムを配合することで補っていることが大きなメリットです。 無味無臭であるため食品の包材としても安心して使用できる材質です。
デメリット
PSにゴム素材が添加されているため、透明性が低く、中の食品を見せたい容器には向きません。 電子レンジでの温めができないこともデメリットの一つです。
PSP(発泡ポリスチレン)
PSPは、ポリスチレンを数倍から数十倍発泡させた素材で、食品トレーによく使用されている材質です。
メリット
PSPの素材のうち90%以上が空気であり、気泡構造になっているため、熱が伝わりにくく、手で持っても熱さを感じにくい点が大きな特徴です。 原料が10%未満であり、発泡により、厚みは増しますが、他の素材と比べて軽い点がメリットの一つです。
デメリット
耐熱温度が80℃と低く、電子レンジでの使用はできません。
発泡素材のため厚みがあり、かさばってしまう点もデメリットの一つです。
OPS(二軸延伸ポリスチレン)
OPSはポリスチレンを縦横二方向に延伸した素材です。
メリット
延伸により配向性が与えられ、強度が高く、重ねてもつぶれにくいという特徴があります。
また、透明性が高く、光沢もあるため、蓋などに使用すると中身が見えるため、弁当の蓋や、フルーツの容器などに適した材質といえます。
デメリット
耐熱温度が80℃と低く、電子レンジでの使用はできません。
断熱性、耐油性を持たないことから、油の多い惣菜や、弁当の容器としての使用には向きません。
A-PET(非結晶ポリエチレンテレフタラート)
A-PETとは、溶融状態のPET樹脂を急冷することによって、作られる非結晶性の材質です。
一般的にペットボトルに使用されている材質です。
メリット
透明性、耐油性が他の材質と比べかなり高いため、サラダ、お惣菜の容器に最適な材質です。
焼却しても有毒ガスが出ない点からもマテリアルリサイクル率が高く、使用後のPET容器を繊維に加工し、衣料品にしたりするなどのリサイクルが行われています。
デメリット
耐熱温度が60℃とかなり低いため、電子レンジでの使用や熱い飲み物の使用には向きません。
また、衝撃に弱く、脆いため落とすと割れてしまうなどのデメリットもあります。
各容器メーカーの独自素材のご紹介
ここまで、食品容器に使われる主なプラスチックの材質についてご紹介してきました。
普段よく目にする材質でも、意外と知らないメリットや特徴があったかもしれません。容器の特徴をよく知り、提供するメニューに合った材質選びを行うことが大切です。
また反対に、それぞれの材質にはデメリットも存在します。
各容器メーカーでは、そのデメリットを補った独自素材を開発しています。
独自素材で作られた容器を取り入れることで、提供できるメニューの幅も広がるかもしれません。
ここでは、PS、PP、PET、それぞれの材質のデメリットを補った各メーカーの独自素材をご紹介していきます。
ここまでご紹介した材質の特徴などとも見比べてご覧ください。
SD(スマートダッシュ)
SDは中央化学株式会社の独自素材です。
SDはPPにタルクを配合した材質でPPのデメリットである断熱性の低さを補っている点がポイントです。
PPやPPFのメリットである耐油性、耐熱性を維持したまま、断熱性を高めた素材であるため、通常のPP素材に比べ、どんぶりや惣菜など使用の幅を広げることもできます。
発泡素材のため軽く扱いやすいですが、タルクが配合されているため、ある程度の強度があり、チルド冷蔵に対応することができる点も特徴の一つです。
BF(低発泡ポリスチレン)
BFはシーピー化成株式会社の独自素材です。
BFはPSにPPを配合し、低発泡させた素材です。HIPS、OPSなどのデメリットである耐熱温度の低さを、PPの配合と低発泡させることで補い、耐熱温度を105℃まで高めた点が大きな特徴です。
耐熱性のほかに、耐油性、断熱性、保温性も持つため、弁当、どんぶり、惣菜など幅広いメニューに対応することができる材質です。
低発泡素材のため、高発泡素材に比べて、かさばらず、保管場所をとらない点もBFのメリットの一つです。
MSD(マルチSD)
MSDは株式会社エフピコの独自素材です。
MSDはPSのデメリットである耐熱性、耐油性を補った材質で、耐熱温度は110℃と他のPS素材の80℃に比べ高いのが大きな特徴です。
PSの大きなデメリットである電子レンジでの温めができない点について、MSDでは耐熱温度が高いため電子レンジを使用することができます。そのため惣菜や弁当などの容器の材質に適しています。
また、非発泡素材のため、かさばらず、発泡素材に比べ場所を取らないのもメリットの1つです。
エコO-PET(エコ2軸延伸PET)
エコO-PETは株式会社エフピコの独自素材です。
エコO-PETとは、製造工程でシート状のPETを縦・横に延伸させた材質です。 通常のA-PETが持つメリットである耐油性や透明性を維持したまま、A-PETのデメリットである耐熱性の低さを補い、耐熱温度80℃まで上げ、また耐寒性も高めた材質となっています。 蓋として使用する場合は、短時間でのレンジでの加熱が可能で、本体として使用する場合は、変形は起こりますが、穴が空くことはありません。 市場回収された容器やPETボトルを、エフピコ独自のリサイクル工程を通して、再生された原料から作られるため環境にやさしい材質でもあります。
材質の特徴まとめ
ここまでご紹介してきた素材を下の一覧表にまとめました。
表にしてみると、各素材にはそれぞれメリット、デメリットがあるのがよりわかりやすくなるかと思います。
各素材の特徴をよく理解し、提供するメニューに合った素材選びをすることで、食品の良さを引き立て、お客様満足へつなげることもできます。
材質 | 耐油性 | 断熱性 | 耐熱性 | 耐熱温度 | レンジ可否 |
---|---|---|---|---|---|
PP | 〇 | × | 〇 | 110℃ | 〇 |
PPF | 〇 | × | 〇 | 130℃ | 〇 |
HIPS | × | × | △ | 80℃ | × |
PSP | × | 〇 | △ | 80℃ | × |
OPS | × | × | △ | 80℃ | × |
A-PET | 〇 | × | × | 60℃ | × |
SD | 〇 | 〇 | 〇 | 130℃ | 〇 |
BF | 〇 | 〇 | 〇 | 105℃ | 〇 |
MSD | 〇 | × | 〇 | 110℃ | 〇 |
エコO-PET | 〇 | × | △ | 80℃ | △ |
特徴を知り、メニューに合った容器を選びましょう
食品容器に使われるプラスチックの成り立ち、材質やその特徴など機能面のご紹介しました。
実際に容器を選ぶ際は、機能面はもちろんのこと、容器の色や形などの見た目、使用・保存するときの温度帯、また環境への配慮など複数の観点から選ぶことが大切です。
一見どれも同じように見える容器でも、ひとつ工夫をするだけで、食品の魅力をより多く引き出せることもあります。ぜひ、さまざまな観点で比較し、ぴったりの容器を見つけてみてください。
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