使い捨てカトラリーと環境問題
近年、環境問題の解決へ向けて日本ではレジ袋の有料化が義務化され、紙袋、エコバックの普及など消費者のエコに対する意識が高まっていると考えられます。
しかしそれでもなお、使い捨てプラスチックによる環境問題は深刻なものであり、プラスチックの使用方法、提供方法について見直しが求められています。
そして、プラスチック製品の中でも使い捨てカトラリーの提供方法の見直しは消費者、事業者にとっても課題となっており、今後の環境問題の解決へ向けても重要視されています。
使い捨てカトラリーと環境問題のつながり
世界では、毎年約3億トンのプラスチックがごみとして発生していると推定されており、今後も増えていくことが予測されています。容器や包装に使われるプラスチックはそのうちの約4割を占めており、使い捨てにされやすいため問題となっています。
使い捨てカトラリーは食品容器とセットで使用されることが多く、使い捨てカトラリーも環境問題と深く関わっているといえます。
プラスチック製品、また使い捨てカトラリーが抱える環境問題は大きく2つに分かれます。
プラスチックごみによる二酸化炭素排出問題
日本では、年間約850万トンのプラスチックごみが発生しています。その約8割はリサイクルされていますが、そのうち半分以上はエネルギー源としてのサーマルリサイクルです。
サーマルリサイクルとは廃棄物を焼却処理した際に発生する排熱を回収し、エネルギーとして利用することです。このリサイクルでは、焼却処理する際に二酸化炭素が排出され、単純焼却とあわせると、年間1,600万トンの二酸化炭素が排出されています。
プラスチックごみによる海洋汚染問題
世界中には、1億5,000万トン以上の海洋プラスチックごみが存在していると言われ、毎年約800万トンに及ぶ量が新たに流れ出ていると推定されています。
そのうち、2~6万トンが日本から発生したものだと考えられています。
また、このままでは2050年の海は、魚よりもごみの量が多くなるとも予測され、SDGsの項目の2030年までに達成すべき17の目標の1つ「14.海の豊かさを守ろう」に挙げられています。
これらの環境問題の解決策の1つとして、使い捨てカトラリーに対する工夫が求められています。
プラスチック資源循環促進法とは
プラスチック資源循環促進法とは、プラスチック製品の設計から販売、廃棄物の処理という全体の流れの中で3R+Renewableを進め、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行を推し進めるための法律です。この法律は前述にあるようなプラスチックが関係する環境問題への対応のため、2022年4月1日に施行されました。
プラスチック資源循環促進法では、12品目の特定プラスチック製品の使用の合理化がこれらの製品を扱う事業者に求められています。つまり、この12品目について、廃棄物の排出抑制の取り組みや、排出抑制に向けた消費者への情報提供が必要になります。消費者への有償提供は義務付けられていませんが、提供する方法や量について検討する必要があります。
フォーク・スプーン・テーブルナイフなどの使い捨てカトラリーはこの12品目に該当しており、使い捨てカトラリーの提供について検討する必要がでてきたということになります。
今後カトラリーはどうなるか
環境問題の原因の1つであるプラスチック製の使い捨てカトラリー。
これらは、ワンウェイプラスチックと呼ばれ、一度だけ使われて廃棄されるプラスチック製品のことです。外食店で商品を購入しついてきたスプーンも、コンビニでパスタを購入しついてきたフォークも、性能に問題がなくても、ほとんどの場合洗って繰り返し使われることはありません。
なくなると困ってしまいますが、あると1度だけ使われて捨てられてしまい、環境問題の原因の1つとなってしまう。これが使い捨てカトラリーの問題点となっています。
では、今後使い捨てカトラリーはどうなっていくのでしょうか。
カトラリーの有料化も視野に
プラスチック資源循環促進法により、コンビニ、外食チェーン店では使い捨てカトラリーの有料化を視野に進めている企業もあります。
例えば、大手コンビニではカトラリーの有料化実験が行われました。10店舗を対象に、金額はそれぞれ2円から4円。有料化により客数や辞退率がどのように変化するのか、検証が行われました。
また、実際に有料化に踏み切った企業もあります。大手外食チェーンでは、レジ袋だけでなくカトラリーを1本10円と有料化を導入しました。これによりレジ袋の有料化とともに年間プラスチック使用量を50%削減することを目標としています。
さらに、スイーツ店でも使い捨てカトラリーの有料化が進められています。プラスチック製のスプーンとフォークを1本3円に有料化することで、環境問題への貢献を図っています。また、資源価格上昇を受けて商品価格の値上げが相次ぐ中、無償提供品の調達コストも増しているため、コストダウンの観点でも利点があると考えられます。
しかし、有料化によりカトラリーの購入を辞退する消費者が多いというのが現状です。
環境への負担を減らすことができる一方で、企業は在庫を抱えてしまうという問題も発生しています。使い捨てカトラリーの有料化には様々な課題があるのが現状です。
エコなカトラリーで環境への貢献へ
使い捨てカトラリーの有料化に踏み切る企業はまだ多くありませんが、カトラリーを軽量化、木製への切り替えなどを行っている企業は少なくありません。
例えば、大手コンビニではバイオマス素材を30%混合させたカトラリーの導入、また、持ち手部分に穴が空いたデザインに変更し、従来品に比べプラスチック使用量を約10%削減したカトラリーの導入が進んでいます。
穴あきデザインのカトラリーを導入することで、プラスチックの使用量を年間で約87トン削減できる見込みとしています。
使用感は変わらず 、プラスチックを削減できるので導入する企業も多くあります。
また、木製カトラリーの導入も進められています。一部コンビニでは木製スプーンの導入実験が行われ、一部スーパーではスプーンがプラスチック製から木製へ順次切り替わっています。
内容は様々ですが、プラスチック資源循環促進法の施行により、エコなカトラリーへの切り替えを行っている企業が多くあります。
企業はそれぞれのイメージにあったエコな使い捨てカトラリーの導入を進め、環境問題解決への貢献を進めているのが現状です。
エコなカトラリーの素材とは
使い捨てカトラリーの素材といえばプラスチックが一般的ですが、前出のように木製などのエコなカトラリーの素材の普及も進んでいます。
エコなカトラリーの素材も様々あり、それぞれどんな特徴やメリット・デメリットがあるのかご紹介していきます。環境問題解決への貢献だけでなく、使用される食品のイメージにあった素材選びにぜひご活用ください。
木・竹
エコな使い捨てカトラリーとしてはじめに思い浮かぶのが木製・竹製素材のカトラリーではないでしょうか。木製のカトラリーは導入を開始している企業も多くあり、見かける場面も増えてきています。
木製・竹製カトラリーのメリットとしては
- 非プラスチックの素材である。一目見るだけでエコな商品であることが伝わる。
- サイズが様々あり、用途によって使い分けることができる。
- プラスチックよりも見た目に温かみがでる。
デメリットとしては
- 天然素材であるがゆえに、ささくれなどが生じやすい。
- 木製・竹製特有の味が残ってしまい、食品の風味が損なわれてしまう恐れがある。
などが挙げられます。
紙
紙製のストローの普及など紙製の商品にも注目が集まっています。
木製に比べまだ導入は少ないですが、今後注目が高まっていくものと思われます。
紙製カトラリーのメリットとしては
- 木製と同様、非プラスチックの素材である。エコであることがよく伝わる。
- 木などの天然素材と違い、ささくれなどのリスクがない。
デメリットとしては
- 耐水性・強度が弱く、長時間水分を伴った使用や硬いものへの使用には向かない。
などが挙げられます。
バガス
バガスとは、砂糖の生産過程で出るサトウキビの搾りかすのことです。
サトウキビは全世界で年間約12億トン生産され、そのうちバガスは年間約1億トン排出されます。燃料や紙の原料にも使われますが、残りは捨てられているため、再利用できる素材として注目されています。
使用後は可燃ゴミとして処理でき、また生分解性も持つことから、安心して廃棄することができます。また、バガスに竹・麦わらを混合して使用すると容器の強度が増すほか、廃棄物の削減にもつながります。
バガスカトラリーのメリットとしては、
- 非プラスチックの素材であり、見た目からもエコな商品であることがよく伝わる。
- 繊維が詰まった素材であるため、比較的丈夫で型崩れしにくい。
- ナチュラル色で、温かみのある見た目である。
デメリットとしては
- 天然素材であるため、口当たりが少しざらざらしてしまう。
- 耐水性がプラスチックに比べ弱く、長時間の水分を伴う使用には向かない。
などが挙げられます。
バイオプラスチック
バイオプラスチックとは、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの総称で、環境問題解決へ向けて近年注目されている素材のひとつです。
バイオマスプラスチック
原料として植物などの再生可能な有機資源を一部使用するプラスチックのことを指します。
例として、バイオPE、バイオPETなどが挙げられます。
バイオマスプラスチックのメリットとしては
- 通常のプラスチックと近い使用感である。
- 通常のプラスチックと比較し、CO2排出量の削減に貢献することができる。
デメリットとしては
- バイオマス度は25%程度のものがほとんどで、脱プラスチックにはならない。
- 見た目がプラスチックのため、消費者に環境配慮が伝わりづらい。
などが挙げられます。
生分解性プラスチック
生分解性プラスチックとは、微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解され、自然へ還る性質を有するプラスチックのことを指します。プラスチックの機能や物性に加えて、ある一定条件下で微生物により分解されるため、海洋汚染問題などへ貢献することができます。
化石資源を原料とするものとバイオマスを原料とするものがあり、部分的にバイオマス由来になっているものもあります。
例として、PLA、BioPBS、PHBHなどが挙げられます。
生分解性プラスチックのメリットとしては
- 自然界に流出してしまっても、比較的短時間で分解され、長時間残留することを防止できる。
- 適切な処理をすれば微生物により分解でき、焼却処理と比較しCO2を抑制することができる。
デメリットとしては
- 通常のプラスチックと比較し、非常に高価である。
などが挙げられます。
エコな素材を使用したカトラリーをご紹介
これまで紹介してきた素材を使った、エコなカトラリーを6つご紹介します。
ぜひイメージにあったエコなカトラリー選びにご参考ください。
木製カトラリー:スプーン・フォーク・ナイフ3点セット
天然素材の白樺でできていて、見た目に温かみがあり、肌触りもよいカトラリーになります。 3点セットになっているため、これ一つで、様々なメニューを楽しむことができます。
紙製カトラリー:紙製スプーン158mm
清潔感があって、肌触りのよい紙製のスプーンです。紙製ですが、強度は十分で様々なメニューに使用することができます。他のサイズ展開もあるので、用途にあったサイズでご使用いただけます。
バガスカトラリー:BBカトラリー スプーン150mm
耐油・耐水性があるのでスープなどの水分、油分の多いメニューにもお使いいただけます。 持ち手に溝があるため持ちやすく、バガス素材の弁当容器と一緒に使うことで温かみのある見た目になるのでおすすめです。
バイオマスカトラリー:CPLAスプーン155
トウモロコシ由来の植物性原料から作られており、一定の条件下での生分解性を持つカトラリーです。耐熱温度は約85℃と、通常のPLAよりも高く、マットな質感で幅広い食品に使用することができます。 また、持ち手の部分に穴が空いたデザインになっており、プラスチック原料の削減にも貢献することができます。
バイオマスカトラリー:バイオプラ25 フォーク
バイオPEを25%含むバイオマスカトラリーです。通常のプラスチックとほとんど変わらない肌触りで、どんな食品にも使用することができます。紙包装のため、環境にもさらに貢献することができる商品です。
バイオマスカトラリー:お米のスプーン160
非食用のお米を25%使用しているライスレジン製カトラリーです。通常のプラスチックに比べ、CO2、石油資源を削減することができるエコな商品です。通常のプラスチックと同程度の強度を持つため折れにくく、耐熱温度も120℃と、十分な性能も持ち合わせている商品です。
素材ごとの特徴を踏まえたエコカトラリー選びを!
今回は、使い捨てカトラリーについてご紹介してきました。
今までは無料で提供が当たり前でしたが、環境問題解決のため有料化、軽量化など使い捨てカトラリーにも今後さまざまな変化が予想されます。
生分解性 | コスト | 使用感 | 機能性(耐水性・耐油性・耐久性等) | |
木製 | 〇 | △ | △ | 〇 |
紙製 | 〇 | △ | △ | × |
バガス | 〇 | △ | △ | △ |
バイオマスプラスチック | × | △ | 〇 | 〇 |
生分解性プラスチック | △ | × | 〇 | 〇 |
環境に配慮した素材のカトラリーを使うことで、環境問題への貢献だけではなく、食事には欠かすことのできないカトラリーに変化を持たせてみるのはいかがでしょうか。
今回紹介した商品をはじめ、容器スタイルではさまざまな使い捨てカトラリーを販売しておりますので、ぜひチェックしてみてください。