
DXって実は身近な存在?
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DX(デジタルトランスフォーメーション)と聞くと、どうしても難解なIT用語のように感じてしまう方もいるかもしれません。しかし実際には、DXは私たちの日常生活に深く浸透し始めています。
例えば、スマートフォンでのモバイル決済、商品の在庫管理に活用されるICチップを備えた「RFIDタグ」、そして今や生活に欠かせないECサイトでのショッピングなど、これらはすべてDXの恩恵といえるでしょう。
そしてこのDXの波は、私たちにとって最も身近な小売店のひとつであるスーパーマーケットにも押し寄せています。従来のスーパーマーケットは人手による作業が多く、業務効率化や顧客満足度の向上に課題を抱えていました。
しかしDXの導入によって、レジでの待ち時間短縮、商品の在庫切れ防止、顧客一人ひとりに合わせた最適なサービス提供などが可能に。
スーパーマーケットの未来を大きく変える可能性を秘めています。
スーパーマーケットDX化の現状と導入メリット

スーパーマーケット業界は今、生き残りをかけてDX化に積極的に取り組んでいます。
その背景には、少子高齢化による人手不足、消費者の購買行動の多様化、そして競争の激化といった厳しい経営環境があります。DXはこのような課題を解決し、スーパーマーケットの成長を支える重要な戦略となっていくでしょう。
DXは単なるITツールの導入ではありません。
ビジネスプロセス全体を改革し、顧客中心のビジネスモデルを構築できれば、スーパーマーケットは将来にわたって成長を続けられるのです。
導入メリット
業務効率化
レジ業務の自動化、在庫管理の最適化、発注業務の自動化などにより、人手不足の解消やコスト削減につながります。
顧客満足度アップ
スムーズな買い物体験、パーソナライズされた情報提供、新たなサービスの提供などにより顧客満足度を高めることで、リピーター獲得につながります。
新たなビジネスモデルの創出
オンラインとオフラインを融合したオムニチャネル戦略、データ分析に基づく新たな商品開発など、DXを活用することで新たな収益源の創出が可能になります。
食品ロスの削減
AIによる需要予測や賞味期限管理の高度化により、廃棄される食品を大幅に減らせます。
これはSDGsの目標達成にも貢献する重要な取り組みです。
最新テクノロジーがもたらす買い物体験の革新

スーパーマーケットのDX化は、顧客の買い物体験を劇的に変化させています。最新のテクノロジーを活用することで、より便利で快適、そしてパーソナライズされたショッピング体験が実現しつつあるのです。
以下に、代表的な事例を3つ紹介します。
レジなし決済
Amazon社が運営する無人店舗「Amazon Go」を筆頭に、レジでの会計を必要としない「レジなし決済」システムが注目を集めています。
店内に設置されたカメラやセンサーによって顧客が手に取った商品を自動的に認識し、退店時に自動で決済が完了する仕組みです。
レジでの待ち時間がなくなりスピーディーな買い物が可能になるだけでなく、店舗側もレジ業務の人員を削減できるメリットがあります。
スマートカート
商品をスキャンしながらカートに入れ、そのまま決済できる「スマートカート」も登場しました。
レジで商品をスキャンする手間が省けるだけでなく、カートに搭載されたディスプレイで商品の情報やおすすめ商品を確認することもできます。
さらに、AIを活用したナビゲーション機能を搭載したスマートカートも開発されており、目的の商品まで最短ルートで案内してくれるなど、顧客の利便性を高める機能が充実しています。
パーソナライズドサービス
顧客の購買履歴や嗜好を分析し、パーソナライズされたサービスを提供する動きが進化しています。例えば、アメリカの「クローガー」はアプリ「クローガープラス(Kroger Plus)」で、顧客の履歴に基づいた個別クーポンを配信しています。また購買履歴を分析し、おすすめ商品をアプリ上に表示するサービスも展開中です。
そのほか、位置情報と連携したサービスも登場しています。イギリスの「テスコ」は、顧客の位置情報に基づき近くの店舗の特売情報やクーポンをプッシュ通知で配信しています。また、店舗内のデジタルサイネージでパーソナライズされた広告を表示するなど、きめ細やかなサービスを提供しています。
業務効率化を実現する最新テクノロジー

スーパーマーケットのバックヤードや店舗運営には無数の業務があり、人手不足やコスト負担に悩む経営者も少なくありません。
こうした課題を解決するため、さまざまな形での最新テクノロジー活用が進んでいます。
ここでは、代表的な3つのテクノロジーを紹介します。
ロボットによる自動化
商品の陳列、在庫管理、清掃など、これまで人が行っていた作業をロボットが代行することで、業務の効率化と人件費の削減を実現します。
具体的には以下の例が挙げられ、労働力不足の解消に大きく貢献すると期待されています。
- 自動搬送ロボット:倉庫から店舗への商品搬送を自動化し、従業員の負担を軽減。
- 陳列ロボット:商品棚への商品の補充を自動で行い、品切れを防ぐ。
- 清掃ロボット:営業時間外に店舗内を自動で清掃し、清潔な環境を維持する。
- 接客ロボット:商品の紹介や案内を行い、作業員が本来の業務に集中しやすくする。
AI需要予測
AIを活用した需要予測は、過去の販売データ、天候、曜日、季節、イベント情報、近隣の競合店の状況など、さまざまなデータを分析し、将来の需要を予測します。
高精度な需要予測は、最適な仕入れ量や在庫量を決定するのに役立ち、食品ロスの削減と在庫管理の効率化にも貢献するでしょう。
過剰な在庫による廃棄ロスを最小限に抑え、欠品による機会損失も防げば、収益性の向上にもつながります。また、AIは予測の根拠を提示できるため、担当者がデータに基づいた判断をしやすくなる点もメリットのひとつです。
スマートシェルフ
スマートシェルフは、商品棚にセンサーやカメラ、デジタルサイネージなどを搭載したシステムです。商品の在庫状況をリアルタイムで把握し、品切れを検知すると自動でアラートを発信します。
これにより、従業員は迅速に商品を補充でき、顧客満足度の維持・向上につなげられます。
また、デジタルサイネージ機能を活用すれば、商品の価格や情報を自動的に表示したり、顧客の属性に合わせたターゲティング広告を配信したりすることも可能です。
顧客の購買行動を分析すれば、商品配置の最適化や販売促進施策の立案にも役立ちます。
国内スーパーマーケットのDX事例

日本のスーパーマーケットでもDX化に向けた様々な取り組みが進んでおり、具体的な成果を上げている事例も出てきています。
ここでは、代表的な3つの事例を紹介します。
ファミリーマート:無人決済
コンビニエンスストア業界ですが、スーパーマーケットへの応用も期待される事例として、ファミリーマートの無人決済店舗が挙げられます。
天井に設置された多数のカメラと棚の重量センサーを活用し、顧客が手に取った商品を自動で認識するシステムを導入しています。
レジでの会計が不要となるため、人手不足解消と混雑緩和を実現しています。
ライフコーポレーション:AI予測による自動発注システム
ライフコーポレーションでは運営店舗「ライフ」にて、AI需要予測による自動発注システムを導入しています。
過去の販売データや天候、イベント情報などをAIが分析し、最適な発注量を算出することで、食品ロスの削減と在庫管理の効率化を実現しました。
これにより、従業員は発注業務に費やす時間を削減し、顧客対応などの業務に集中できるようになっています。
ヨークベニマル:スマートカート
ヨークベニマルの実店舗では、スマートカートの実証実験が開始されています。
顧客は商品をスキャンしながら買い物し、そのまま決済も可能です。
レジでの待ち時間をなくし、スムーズな買い物体験を提供するだけでなく、顧客の購買データ分析にも活用できるため、今後のマーケティング戦略への応用も期待されています。
世界のスーパーマーケットのDX事例

日本だけでなく、世界各国でもスーパーマーケットのDX化は急速に進んでいます。
ここでは、海外の革新的な事例を3つ紹介します。
セーブマート (アメリカ):スマートカート
北カリフォルニアなどを中心に194店舗を展開する「セーブマート」では、AIを搭載したスマートカート「ケイパーカート(Caper Cart)」を導入しています。
商品スキャン、クーポン適用、レジなし決済に加え、店内ナビゲーション機能も搭載しており、顧客の利便性を高めています。
また、ケイパーカートはアプリシステム導入やカメラの設置が不要で導入ハードルが低いため、零細スーパーでも採用され、注目を集めました。
アルバートハイン (オランダ):電子棚札
オランダの大手スーパー「アルバートハイン」は、電子棚札を全店舗に導入しました。
価格変更をリアルタイムで行えるだけでなく、商品情報や在庫状況、さらには特売情報なども表示できるため、業務効率化と顧客への情報提供を強化しています。
また、電子棚札は紙の価格札と比べて環境負荷も低く、持続可能な社会の実現に貢献できる点も大きなメリットです。
セントラル・フード・リテール(タイ):AI接客ロボット
タイの小売り大手セントラル・グループ傘下のセントラル・フード・リテールが運営する「トップスマーケット」や「セントラルフードホール」では、接客を担うAIロボットを導入しました。
ロボットは店内を巡って顧客に新商品や販促品を紹介するほか、探している商品の棚まで案内することも可能です。これにより従業員の負担を軽減し、顧客のさらなる満足度アップを目指しています。
スーパーマーケットのDXにおける課題と展望

スーパーマーケットのDX化は多くのメリットをもたらす一方で、課題もあります。
課題と対策を確認するとともに、今後の展望を考えていきましょう。
課題① 導入コストとROI
DX推進には、システム導入費用や人材育成費用など、多額の投資が必要です。
そのため、投資対効果(ROI)を明確にし、経営層の理解を得ることが当面の課題となります。
ただし、近年はテクノロジーのさらなる進展により、導入ハードルの低いサービスも増えています。
また、クラウド型のサービスや、サブスクリプションモデルの導入により、初期費用を抑えつつ段階的にDXを進めるのもひとつの方法でしょう。
自社の課題や目標に合わせた、最適なソリューションの選択が求められます。
課題② データプライバシーとセキュリティ
スーパーマーケットのDX化は、顧客の購買データや行動履歴など個人情報の取り扱いを伴います。
そのため、データプライバシーとセキュリティ対策は最重要課題です。
不正アクセスや情報漏洩は、企業の信頼失墜に直結する深刻な事態を引き起こします。顧客の個人情報の適切な管理と万全のセキュリティ対策によって顧客の信頼を確保し、安全なDX推進を実現する必要があります。
具体的には、アクセス制限の設定、暗号化技術の活用、セキュリティシステムの導入、従業員教育の徹底などが挙げられます。また、個人情報保護法などの関連法規を遵守することも不可欠です。
課題③ 従業員のスキルアップと再教育
DX推進には、新しいシステムやツールを使いこなせる人材が必須です。
しかし、既存の従業員にはこれらの技術に関する知識やスキルが不足している場合が多く、DX推進の大きな障壁となります。そのため、従業員への研修や教育プログラムの提供を通じて、スキルアップを支援する必要があります。
DXに関する基礎知識から、システムの操作方法、データ分析の手法まで、段階的な教育プログラムの構築により、従業員がスムーズにDXに対応できるようサポートすることが重要です。
また、社内でのOJTや外部研修などを活用し、実践的なスキルを習得できる機会を提供するのも効果的でしょう。
課題④ 消費者への理解促進
新しいテクノロジーに対する消費者の理解不足は、DX推進の阻害要因となる可能性があります。
セルフレジやスマートカートなどの新しいシステムに抵抗感を抱く消費者もいるため、DXのメリットや使用方法を丁寧に説明し、理解促進を図る必要があるでしょう。
例えば、店舗内に案内スタッフを配置したり、分かりやすい説明動画を作成したりすることで消費者の不安を解消し、スムーズな導入を促せます。また、高齢者などデジタル機器に不慣れな消費者への配慮も大切なポイントです。
これらの課題を克服すれば、スーパーマーケットのDXはさらに進化していくでしょう。
AIやロボット技術などの進化により、よりパーソナライズされたサービスの提供やさらなる業務効率化が期待されます。
進化を続けるスーパーマーケットの未来
DXは、スーパーマーケット業界に大きな変革をもたらしています。
最新テクノロジーの活用により、買い物体験の変化、業務効率化、新たなビジネスモデルの創出などが実現しつつあります。
もちろんDXにはまだまだ課題もありますが、経営者にとっても顧客にとっても、それを上回るメリットがあるといえるでしょう。
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