スーパーでのSDGsへの取り組みを知ろう
SDGsとは持続可能でよりよい世界を目指すために、2015年に国連で定められた世界共通の「行動目標」です。日本政府もSDGsの目標達成のために力を入れており、様々な取り組みを進めています。企業の取り組みも盛んになってきました。
今回は、スーパーマーケットがSDGsを導入するメリットや実際の取り組みを事例と一緒にご紹介していきます。
そもそもSDGsとは何か
SDGs=環境問題対策と思われる方もいるかも知れませんが、半分は正解であり半分は不正解です。
今、世界中で温暖化や海洋プラスチックなどの環境問題だけではなく飢餓や貧困、内戦や紛争など様々な問題が発生しています。世界がこれからも持続的に成長を続けていくためには、これらの問題を解決していかなければなりません。
繰り返しになりますが、これらの問題を解決するための行動目標が、「SDGs」なのです。
SDGsとは
SDGsでは、17 のゴール(⽬標)と、より具体的な169 項⽬のターゲット(達成基準)が定められています。2030年までに世界全体で貧困や飢餓、環境問題、経済成長、ジェンダー平等まで幅広い課題を解決するための取り組みです。
このSDGsは、前身の「MDGs」(ミレニアム開発目標)をベースにゴールが作られました。MDGsは貧困や飢餓の撲滅など2015年を期限に8つのゴールが設けられていました。しかし、期限までに目標を全ては達成できなかったため2015年9月の国連サミットで新たなゴールを追加し、SDGsが採択されました。
17の目標と169のターゲット
SDGsは17の目標を169のターゲットから構成されています。
《17の目標》
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
それぞれの目標に対してターゲット(達成基準)が決められています。
※ターゲット(達成基準)の詳細は下記リンクから
日本でのSDGsへの取り組み
世界共通の行動目標を立てて、取り組んでいるSDGsですが、日本での取り組みはどの程度、進んでいるのでしょうか。
ここでは、下記の項目について、お話していきます。
- 日本政府の取り組みと評価
- 日本企業での取り組み内容
- 日本企業での取り組み事例
日本政府の取り組みと評価
SDGsが採択された後、2016年5月に政府は総理大臣を本部長、官房長官、外務大臣を副本部長とし、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」を設置して、国内実施と国際協力の両面で率先して取り組む体制を整えました。
さらに行政・民間・NPO・有識者などを含む幅広い関係者で協議し、同年12月に「SDGs実施指針」を決定しました。「ジャパンSDGsアワード」として取り組みが顕著だった企業を表彰したり、SDGsに積極的に取り組んでいる都市を選定して補助金を出し、その優れた取り組みを世界中に発信していくこと、などを実施しています。
また、評価については、国連での取り決めで、毎年SDGsの達成度を発表することになっています。2020年のレポートでは、日本は総合点では、193カ国中17位でした。日本は過去、2018年、2019年ともに15位でしたがランクダウンの結果となりました。
(データ出典:Sustainable Development Report)
また、ターゲット別での達成度発表もあり、日本が進んでいるのは「目標04.質の高い教育」、「目標09.産業と技術革新」、「目標16.平和と公正をすべての人に」です。
達成が遅れている分野は目標5のジェンダー平等、目標12の消費と生産、目標13の気候変動、目標14の海の豊かさを守ろう、目標15の陸の豊かさも守ろう、目標17のパートナーシップで目標を達成しよう、です。
改善評価では、目標10 の人や国の不平等をなくそう、が2年連続で大幅な後退をとなっています。
出典:Sustainable Development Report 2020
日本企業での取り組み
近年では日本の企業でも経営リスクを回避するとともに新たなビジネスチャンスを獲得し、持続可能を追求するためのツールとして、SDGsに取り組む企業が増えています。
企業が SDGs に取り組むメリットは、新たな事業機会の創出、企業価値の向上、優れた人材の確保やリスク回避などがあげられます。また、取引先などからも SDGs への対応が求められる時代になりつつあります。
日本企業での取り組み事例
SDGs達成に向けて優れた取り組みを行っている日本企業を表彰する「ジャパンSDGsアワード」という制度があります。
2017年第1回アワードで表彰された、洗剤メーカーの「サラヤ株式会社」さんの取り組み事例をご紹介します。
サラヤさんは、アフリカや東南アジアで「手洗いプロジェクト」を推進し、手洗い石鹸と消毒用アルコールを積極的に普及し感染症発生率と死亡率の低減に貢献しています。また、洗剤の原料でもあるパーム油のフェアトレードやアブラヤシ生産地の生物多様性の保全に取り組んでいます。
これらの取り組みにより、
目標03:すべての人に健康と福祉を
目標12:つくる責任つかう責任
目標15:陸の豊かさも守ろう
などが評価されて表彰を受けました。
これは、洗剤メーカーの取り組み事例ですが、日本の大手スーパーでもSDGsへの取り組みが既に始まっています。
スーパーでのSDGsに対する取り組み事例
本格的にSDGsに取り組みを始めているスーパーマーケットはまだまだ少ないですが、大手企業や上場企業は既に取り組みを始めています。ここでは大手スーパー3社の、SDGsに対する取り組み事例を具体的に紹介をしていきます。
イオンの事例
イオンモール株式会社(以下、イオン)は企業成長と社会の発展の両立を目指し2011年に「イオン サステナビリティ基本方針」として以下の4つを掲げました。
- 低炭素社会の実現
- 生物多様性の保全
- 資源の有効利用
- 社会的環境への対応
そして、2014年には「イオン持続可能な調達原則」を制定し水産物に関してMSC(※1)やASC(※2)認証の商品の販売を開始しました。
(※1)MSC:海洋管理協議会
持続可能で社会的に責任ある方法で漁獲された天然水産物の認証制度を運営
(※2)ASC:水産養殖管理協議会
環境や社会に配慮した養殖場で生産された水産物の認証制度を運営
2017年には農産物や畜産物などに対象商品を拡げ、達成目標を設定した「2020年調達目標」を策定した。特に、紙・パルプ・木材については主なプライベートブランドについて、持続可能な認証(FSC認証(※3)等)原料の100%利用を目指しています。
(※3)FSC®:森林管理協議会
管理や伐採が環境や地域社会に配慮して行なわれている森林の認証制度を運営
セブンアンドアイの事例
株式会社セブン&アイ・ホールディングスは2014年に取り組むべき「5つの重点課題」を設定しています。
- 高齢化、人口減少時代の社会インフラの提供
- 商品や店舗を通じた安全・安心の提供
- 商品、原材料、エネルギーのムダのない利用
- 社内外の女性、若者、高齢者の活躍支援
- お客様、お取引先を巻き込んだエシカルな社会づくりと資源の持続可能性向上
いずれもSDGsとの関連性が深い項目となっています。
特に「商品、原材料、エネルギーのムダのない利用」の中では、セブンプレミアム(PB品)の容器・包装について、具体的な行動が示されています。
(SDGsの目標12、13、15の実現)
その他の具体的な取組として、
- リサイクル可能な包材への変更(酒の紙パックなど)
- 植物性由来原料の活用(おにぎりフィルムのインクなど)
- 間伐材の活用(セブンカフェのホットカップの外側スリーブ部分)
- リサイクル素材の導入(エコマーク認証を受けた生鮮用の再生トレー)
- バイオマス素材の導入(サラダカップにリサイクルPET、バイオマスPETを採用)
- 「セブンカフェ」の環境配慮(資材の軽量化、アイスカップでのリサイクルPETの使用)
また、これ以外にも、2030年までにプラスチック製レジ袋の使用量をゼロにし、レジ袋の素材は紙等の持続可能な天然素材にすることを目指しています。
成城石井の事例
株式会社成城石井はCSR活動の一環として、「社会が抱える課題と向き合い、社会と調和ある持続的な発展を目指す」と提言し、SGDsの目標2、3、7、8、11、12、13、14、15に対して具体的な行動目標を設定しています。
その中の、目標13「気候変動に具体的な対策を」では、容器・トレーにおいて、次の具体的な行動目標を発表しています。
- 軽量化・・・容器トレーの重量を最小限に抑えることでCO2排出を低減
- タルコン容器・・・天然未利用資源のタルクを活用することで、石油資源の節約とCO2排出量を低減
- CO2削減・・・燃焼時のCO2の排出量そのものが少ない素材の積極的な採用
SDGsへの取り組み・エコ容器導入による5つのメリット
ここまで、SDGsの概要や、企業の取り組み事例をご紹介してきました。
実際に大手スーパーでは、SDGsの目標12.13.15達成のため、エコ容器の採用が施策のひとつとして掲げられていることがわかりました。
それでは、SDGsへの取り組みや、エコ容器を導入することで、企業側にどのようなメリットが生まれるのでしょうか。
ここでは、4つのポイントを挙げることができます。
- 社会変化への対応
- 企業イメージの向上
- 経営リスクの回避
- ビジネスチャンスの拡大
①社会への対応
SDGsには、今の社会が抱えている様々な課題が含まれており、特に環境に関する課題に取り組む企業が増えています。
企業がエコ資材を導入することで地球温暖化、水質汚染、ごみ処理の限界、自然資産の枯渇など、環境へ貢献ができます。企業は事業を通して、その課題に取り組むべきだという考えが急速に広がっています。
②企業イメージの向上
SDGsで環境問題への取り組みをアピールすることで、多くの人に「この会社は信用できる」「この会社で働いてみたい」という印象を与え、企業イメージが向上します。それにより、製品や商品に付加価値が生まれ、価格競争を回避することができます。
また、継続的に商品やサービスを選択してもらえたり、多様性に富んだ人材確保につながります。エコ資材を導入している事を消費者にもわかるようにアピールし、取り組むべき課題に対応していれば社会や地域での信頼獲得にもつながります。
③経営リスクの回避
世界全体がSDGsの達成を目指す中、これを無視して企業活動を行うことは消費者がその企業の商品を購入しなくなるといった恐れがあり、社会の課題に対応することは経営リスクの回避にもなります。
また、実際に大手スーパーではSDGsへの取り組みを年々強めており、今後はSDGs への対応がビジネスパートナーに求める条件になってくる可能性もあります。
④ビジネスチャンスの拡大
SDGsを採用することで地域との連携や新しい取引先・事業パートナーの獲得、新たな事業の創出など今までになかったイノベーションやパートナーシップを作り出すことができます。特に環境意識の高い企業や官公庁との取引では有利になる可能性があります。
中小企業の場合は大企業にはない、自社の専門性、意思決定の速さ、地域との密着性、柔軟性などの強みを活かしビジネスチャンスを広げていくことができます。
今すぐ導入できるエコ容器集
ここまでSDGsのスーパーでの事例や導入のメリットについて説明してきました。食品スーパーでも、SDGsへの取り組みや、PB品を中心にエコ資材(容器)の導入がすすんでいます。
大手食品メーカーのPB品のようにたくさん使用しなくても容器メーカーから小ロットでも仕入られ、導入できる既製品のエコ容器が多数発売されています。
ここでは手軽に使えるエコ容器を紹介していきます。
- 軽量・薄肉な容器
- リサイクル可能な容器
- 廃材を利用した容器
- 植物由来の容器
軽量・薄肉な容器
容器の「軽量・薄肉化」は限りある資源を有効に使うという観点で非常に有効な環境対策です。消費者にアピールをすれば身近であり実際に手にとる商品となるため、消費者にとっても非常にわかりやすいエコと言えるでしょう。
例えばどんぶり容器などの耐熱レンジ容器は、発泡することにより軽量・薄肉化され、従来と変わらず耐熱性のある容器が開発されています。
MFPドリスカップ
発泡素材のため、従来のレンジ対応容器と比較して軽量化・省資源化された素材。保温性・断熱性にも優れています。
から揚げなどを入れる惣菜容器を、トレーから袋に変更することも省資源化に貢献できます。
エコくるむ
惣菜持ち帰り用の袋。フードパックなどの容器よりもゴミの量を大幅に削減できます。片面は紙を使用しているので、プラスチック使用量削減にもつながります。
リサイクル可能な容器
プラスチック容器を回収して原料に戻し、その原料を使って、再度プラスチック容器を製造している容器メーカーがあります。消費者が、使い終わった容器をスーパーや生協などの回収拠点に持ち込み、それをメーカーに戻すことで、容器リサイクルシステムを実現しています。
容器リサイクルシステムの循環に乗っている限り、リサイクル容器は何度でも容器として生まれ変わることができます。したがって、リサイクルトレーの使用は天然資源の使用削減とともに、ごみ減量に大幅に貢献することができます。
BPフルーツ
再生ペレットから製造されたリサイクルのフルーツトレー。エコマーク(公益財団法人 日本環境協会)を取得。
C-APGシリーズ
PETボトルのリサイクル原料を使用した環境に優しい容器。再生原料は中間層に使用し、食品に触れる部分はバージン原料を使用しているため、衛生面でも安心です。
廃材を利用した容器
食品用の使い捨て容器で多く使われている材質は、「プラスチック」と「紙」の2種類で、プラスチックの原材料は主に「石油」、紙製品の原材料は「木」で、どちらの製品も原料は天然資源を使用しています。
近年では、もともと廃棄していたバガスなど原料を元にした容器を作られてきています。バガスとは、さとうきびの搾りかすのことで、一部はボイラーなどの燃料に使われていますが、それでも使い切れない分は廃棄されていました。
BBシリーズ
バガスと竹を主原料とした植物由来100%の環境対応容器。無漂白の風合いに温かみがあり、テイクアウトやデリバリー容器に相性が良い容器。
植物由来の容器
植物は生育する際に、光合成により大気中の二酸化炭素を取り入れて成長します。そのため、植物を燃やした際に空気中に排出される二酸化炭素の量は、光合成で取り入れた量と同等なので大気中の二酸化炭素総量の増減には影響を与えない「カーボンニュートラル」という考え方があります。
植物由来の素材には、紙やバイオマス(植物由来)プラスチックが該当します。
SMPどんぶりシリーズ
環境に優しい紙製のどんぶり容器。断熱性に優れているためスープなどにも使用できます。
バイオデリカ シェルBOX
植物由来原料配合の嵌合パック。耐熱温度が130℃なのでレンジアップも可能。
バイオマスレジ袋
バイオマス30%配合の環境に優しいレジ袋。単品販売用のJAN入り。※レジ袋有償化対象外です。
SDGsに取り組みビジネスチャンスを拡大しよう
SDGsは、持続可能な社会を実現するために、世界全体で17 のゴールと169 項⽬のターゲットを共有して、行動していることがわかりました。日本の大手スーパーマーケットもSDGsの施策のひとつとしてエコ容器の導入を積極的にすすめています。
エコ容器を導入することには、次の通り4つのメリットがあります。
- 社会変化への対応
- 企業イメージの向上
- 経営リスクの回避
- ビジネスチャンスの拡大
エコ容器も選択の幅が非常に拡がってきました。SDGsの取り組みとしてエコ容器を導入しビジネスチャンス拡大につなげていきましょう。