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食品リサイクル法とは?対象となる食品廃棄物や事業者が行なうことについて解説

2021.08.17

食品リサイクル法について解説

世界中で大量のフードロスが問題になるなか、日本も食品の廃棄に関する課題に直面しています。食品リサイクル法は、食品廃棄物の発生を根本的に抑えて減量するため、広く食品を扱う店を対象とする形で制定されました。
本記事では、食品事業者が知っておくべき「食品リサイクル法」について、対象や事業者側が行なうことについて解説していきます。

フードロスについて

食品リサイクル法成立の背景には、フードロスの深刻な現状があります。フードロスとは、食品ロスともいわれる「まだ食べられるにもかかわらず廃棄される食品」のことです。

日本のフードロスは年間522万トンにものぼると言われ、この数字は、国民1人につき一日約113グラムのフードロスを出している計算になり、国民全員が毎日茶碗1杯分ほどのご飯を廃棄しているのとほぼ同量です。
年間で換算すると、1人あたり約41キログラム廃棄していることになり、国民1人あたりの米の年間消費量約54キログラムと大差がない量です。これは、世界の飢餓に苦しむ人々への援助量の1.6倍にあたります。
※農林水産省・環境省「令和2年度推計」

フードロスのうち54%を占めるのが、事業活動をともなって発生する「事業系食品ロス」です。フードロスは非常にもったいないことであり、資源の有効活用や環境負荷の観点からも、減らすための取り組みが必要とされています。

また、2019年には「食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)」が施行され、フードロスを減らすための基本方針や国や地方公共団体の責務が定められました。行政がフードロス削減を総合的に推進する目標を立てるのと同時に、企業や飲食店も足並みをそろえて対策に取り組んでいます。

食品リサイクル法とは?

食品ロス削減推進法のあとに制定された「食品リサイクル法」について、その概要や成立の理由などを解説します。

食品リサイクル法とは?

食品リサイクル法は、正式名称を「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」といい、2000年に制定されました。
全7章内で、食品廃棄物等の排出を抑えて資源を再生利用するために、食品関連事業者が取り組むべき事項をまとめています。売れ残った食品や食べ残し、製造過程で出る食品廃棄物の削減、または畜産農業などで使用する飼料や肥料への再生利用を推進する内容です。

食品リサイクル法が成立した背景と理由

フードロスは食事の場面だけでなく、製造から加工、販売などあらゆる場面で発生します。食品の大量廃棄はもったいないことで、なおかつ廃棄にかかるコストも決して安くはありません。
しかし、食品リサイクル法の成立以前は大量のフードロスが発生しているにもかかわらず、その実態が十分に把握されていませんでした。

そうした中、国際社会で地球環境や資源への負荷が問題視されるようになり、日本でも大量廃棄の時代から資源循環型のモデルへと、社会のあり方を変える必要性が生じたのです。
そこで、フードロスの現状を把握し発生を抑え、資源として再利用することを目的に、食品リサイクル法が成立しました。フードロスを減らすための取り組みによって、持続可能な社会を目指しています。

食品リサイクル法の対象について

前述のとおり、食品リサイクル法はフードロスを減少させ、資源として再利用することを目的としている法律ですが、どういったものが対象となるのでしょうか。
この章では、対象となる食品廃棄物や事業者について解説していきます。

対象となる食品廃棄物

食品リサイクル法第二条において、食品や食品廃棄物等は次のように定義されています。

第二条 この法律において「食品」とは、飲食料品のうち医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品以外のものをいう。
2 この法律において「食品廃棄物等」とは、次に掲げる物品をいう。
一 食品が食用に供された後に、又は食用に供されずに廃棄されたもの
二 食品の製造、加工又は調理の過程において副次的に得られた物品のうち食用に供することができないもの

出典:平成十二年法律第百十六号 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律

以上の定義から、食品リサイクル法が対象とするのは食品の売れ残りや食べ残しだけでなく、製造や加工、調理の過程に生じたクズも含まれます。
ただし、家庭から排出される生ごみは対象にはなりません。

対象となる事業者

前述のとおり、食品リサイクル法で対象となるのは「食品関連事業者」のみであり、同法令第二条で次のように定義されています。

4 この法律において「食品関連事業者」とは、次に掲げる者をいう。
一 食品の製造、加工、卸売又は小売を業として行う者
二 飲食店業その他食事の提供を伴う事業として政令で定めるものを行う者

出典:平成十二年法律第百十六号 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律

  • 食品の製造、加工、卸売又は小売を業として行う者
    (食品メーカーや百貨店、スーパー、八百屋など)
  • 飲食店業、その他食事の提供を伴う事業として政令で定めるものを行う者
    (レストランや食堂、カフェ、飲食物を提供するホテルや旅館などの宿泊施設、結婚式場など)

具体的には、上記のような事業者を指します。
食品リサイクル法はこれらの食品関連事業者に、食品廃棄物等の発生抑制、再生利用、減量などの取り組みを実施するよう求めています。また、年間100トンを超える食品廃棄物が発生する事業者には、再生利用等を促進するよう義務付けられました。

【食品リサイクル法】事業者は何を行なえば良いのか?

食品リサイクル法は、前述した食品関連事業者に食品廃棄物の発生抑制を求めるものです。
食品の製造・流通・消費の各段階において、業種全体で再生利用等実施率の目標を定め、目標数値の達成を目指しています。
そのため、事業者は発生した食品廃棄物を家畜の飼料や農業肥料などに再利用できるようにする必要があります。再生利用が難しい場合は熱回収、もしくはそのための譲渡が有効です。このような措置も難しいときは、脱水や乾燥などで量を減らし、処理しやすい状態にすることが求められています。

また、事業者はその年度の再生利用等実施率が「事業者ごとに設定されたその年度の基準実施率」を上回らなければいけません。
再生利用等実施率を求める計算式は、次のとおりです。

再生利用等実施率=
(当年度の発生抑制量+再生利用量+熱回収量×0.95+減量量)÷(当年度の発生抑制量+発生量)

この計算式では、熱回収量は省令で定められた基準を満たす場合にのみ加えられます。この時、食品廃棄物の約5%は利用できない灰であることを考慮して0.95を乗算することが決まりです。

そして、再生利用等実施率の算出に必要な「発生抑制量」は、以下のように算出します。
・今期原単位を基準年原単位が上回る場合
発生抑制量=(基準年原単位-今期原単位)×今期原単位分母値
・今期原単位を基準年原単位が下回る場合
発生抑制量=0

こうして算出した再生利用等実施率を毎年上回るように、各事業者は食品廃棄物の再生利用を実施しなければなりません。

食品事業者の取り組み事例を紹介

最後に、事業者が行なっている食品リサイクルの事例を2つ紹介します。

セブン&アイ・ホールディングス

コンビニ大手のセブン‐イレブン・ジャパンやイトーヨーカドーといった食品関連事業会社を中心として、食品廃棄物を減らすためのさまざまな取り組みを実施しています。
まず、食品廃棄物の発生抑制のため、消費期限の近い対象商品を電子マネーnanacoで購入した際に、ボーナスポイントを付与するという取り組みです。
これは、セブン-イレブン・ジャパンが2020年5月から全国で行なっている「エシカルプロジェクト」の一環であり、利用者と一緒になってフードロスの削減を目指しています。

また、イトーヨーカドーなど一部の店舗では、賞味期限内でも店頭へ置けなくなった商品や加工食品などの在庫を、フードバンクへ寄付する取り組みも開始しました。さらに、販売期限の切れた商品は飼料や堆肥にする取り組みも実施しており、その飼料・肥料で育てられた鶏の卵や野菜が、同社の商品に使用されるサイクルを形成しています。
こうした取り組みにより、廃食油と販売期限切れ商品を合わせた食品リサイクル率が、2019年度には42.5%になったことが発表されました。

株式会社アレフ

「びっくりドンキー」を運営する株式会社アレフは店舗では食べきり推奨運動を行なうほか、食品加工場では製造段階の食品廃棄量を抑える活動、販売数に基づく在庫管理などで食品廃棄物をできるだけ発生させない仕組みを作りました。
それでも出てしまう廃棄物は、生ごみ粉砕乾燥処理機を導入して処理しています。処理された廃棄物は、堆肥づくりの発酵促進材にリサイクルされ、園芸肥料などとして販売されています。

食品廃棄物の発生を減らしましょう

食品リサイクル法は、フードロスをはじめとした食品廃棄物の発生抑制と再生利用を促すために制定された法律です。この法律により、事業者ごとに毎年設定される再生利用等実施率を達成できるよう、さまざまな取り組みを行なっています。
食品リサイクル法を念頭に置いた食品の再生利用には、正しい知識と道具が必要です。

折兼では、フードロス削減に必要なツールを幅広く取り扱っていますので、お気軽にお問い合わせ・ご相談ください。

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