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プラスチックから紙へ!エコ容器にするメリットと移行事例を紹介

2020.12.14

プラスチックから紙に変える企業が増えている!

紙ストローイメージ画像

近年、プラスチックごみによる環境破壊が世界中で問題視され、問題解決に向けさまざまな対策が進められています。

環境問題へ対する企業の取り組みとして、大手製菓メーカーがパッケージ素材を紙へ切り替えたり、カフェチェーン店が紙ストローを導入したり、大手コンビニエンスストアが紙製どんぶり容器を採用するなど、紙製品を取り入れる事例が増えています。

実際に各企業がエコ容器に対応するにはコストなどの負担がありますが、対応する事で得られるメリットも沢山あります。  
 
この記事ではこれから環境にやさしい資材の導入を考えている方に、

  • エコ容器導入のメリット
  • エコ容器への移行事例
  • エコ容器の種類

についてご紹介していきます。

そもそもプラスチックは何が良くないのか?

白いプラスチック容器

プラスチックは耐久性があり、低コストで大量生産できるとても便利な素材です。
世界中で毎年4億トン、日本国内では1200万トンも生産されています。

しかし、近年「脱プラスチック」や「プラスチック削減」というワードを耳にする機会が増えてきました。
SDGsの採択やサミットの開催でプラスチック問題についての議論が行われ、世界中でレジ袋やプラスチックストロー、使い捨てプラスチック容器の有料化、製造・販売禁止などの対策が進められています。
日本でもプラスチック削減の動きは進んでおり、2030年までに「使い捨てプラスチックを25%削減」という目標が掲げられています。

この章ではプラスチックごみ問題の原因と、問題を解消するために私たちにできることについて紹介していきます。

プラスチックごみが問題になっている

プラスチックの使用量が増え続けた結果、プラスチックごみが適切に処理されず、環境へ流出してしまうという問題が起きています。

中でも、海洋プラスチックごみ問題は特に深刻です。
世界には計1.5億トンのプラスチックごみが存在していると言われており、毎年約800万トンものプラスチックごみが新たに海に流れていると推定されています。
海洋プラスチックごみによる海の生き物への影響も決して小さくありません。
ウミガメ、海鳥など700種もの生物が傷付き、命を落とす被害を受けており、その内92%に海洋プラスチックごみが影響しています。

日本は全世界でプラスチック生産量が第3位、使用量はアメリカに次いで第2位であり、この問題に対して国際的責任を持たなければいけません。

プラスチックごみ問題を解消するために

プラスチックごみ問題を解消するための「3R」と言われる取り組みがあります。

  • リデュース(=Reduce)…ごみを減らす
  • リユース(=Reuse)…再利用する
  • ・リサイクル(=Recycle)…再生産する

これらの3つを徹底する事が求められます。

プラスチック使用量が多い日本では、問題解決のために使い捨て容器やレジ袋などのリデュース=プラスチックごみを減らすことが有効です。
リデュースの例としては、2020年7月1日からスタートしたレジ袋有料化や、プラスチック製以外の資材の導入、ストローを使わなくても飲み物が飲める蓋への変更などがあげられます。

プラスチックに代わる資材の導入を始める企業、飲食店は年々増加しています。
企業、飲食店が環境問題に対して取り組みを進める事が重要と考え、今まで使っていた資材の素材を見直す意識が広がっています。

エコ容器を導入する5つのメリット

エコ容器イメージ

環境や資源を守るためにエコ容器を導入する事が大切であると理解していても、事前準備の負担やコスト面の問題から、なかなか導入を決断できない企業や飲食店が多く存在すると考えられます。

しかし、SDGsへの取り組みやプラスチック削減の意識が世界中で高まるなか、エコ容器の導入は企業にとっても多くのメリットがあります。

この章では、エコ容器を導入した際に得られる5つのメリットを解説していきます。
エコ容器をより効果的に使うためにも、早い段階でエコ容器へ切り替えることをおすすめします。

1. 環境への配慮

エコ容器導入による1番のメリットは、環境保護に大きく貢献できることです。
海洋ごみの削減やごみ処理の負担緩和に繋がるなど、様々な面で環境保護に貢献出来ます。

・自然資源枯渇の抑制
プラスチックは有限な資源である石油を原料として作られています。
そのため、プラスチック使用量を削減する事で資源の枯渇を抑制することが出来ます。

・地球温暖化防止
日本ではプラスチックの有効利用率が84%と高く、そのほとんどは燃焼時のエネルギーを回収し再利用されています。しかし、ごみの燃焼時には二酸化炭素が発生します。
まずはプラスチック使用量の削減を心がけることで地球温暖化の防止に繋がります。

・水質汚染の防止
海中には、河川などを通じて流れてきた工業用途で使われた農薬などの汚染物質が現在も残り続けています。石油製のプラスチックは海中を漂う汚染物質と親和性があり、汚染物質を吸収しやすい特徴があります。
海洋プラスチックごみが汚染物質を吸収し、海中をさまよい続けることにより、意図せず人体に悪影響な汚染物質を運んでしまう恐れがあります。

2. 企業イメージの向上

環境問題についてテレビ番組やネットニュースで取り上げられることが増え、消費者にとってより身近な話題になりました。
消費者の関心が高まると、環境問題に取り組んでいない企業は消費者から非難されたり、信頼を失う事にもなりかねません。

エコ容器への移行はコストがかかる場合もありますが、環境問題への取り組みを行い、それを発信することで消費者からの信頼を獲得し、企業のイメージアップに繋げることができます。
まずは消費者の目に入る部分から変えることで、広告効果が期待できるのです。

3. おしゃれなイメージの打ち出し

バガス容器使用イメージ

中食化が進み、飲食店や惣菜コーナーのテイクアウト需要が高まっています。
さらに、SNSの影響で料理に美味しさだけでなく見栄えやおしゃれさを求める消費者が急増しています。料理を引き立てるおしゃれな容器選びは、ますます重要になっていくでしょう。

エコ容器は、クラフト紙や木材などの天然素材を使用したものが多くあります。
材質の特徴を活かしたエコ容器はナチュラルな雰囲気を出すことができ、料理をおしゃれに演出するのに最適です。
エコ容器で見栄えを良くすることで、集客率のアップにも繋がります。

ひとことでエコ容器と言っても材質や形状のバリエーションは豊富にあります。
お店や料理のテイスト、使いやすさに合わせて選べるのもエコ容器の魅力のひとつです。

4. 経営リスクの回避

環境問題は地球上全ての生き物に影響があり、レジ袋の有料化など日常生活に関わることも多いため、関心を示す人が増えてきました。
大手企業だけでなく様々な規模、業種で環境問題への取り組みが進むなか、SDGsの目標や環境保全への取り組みに注力しなければ、社会からの信頼を失うだけでなくビジネスパートナーを喪失することに繋がりかねません。

社会の流れに遅れを取らないためにも、小さなことから少しずつ環境問題に取り組んでいく必要があります。

5. ビジネスチャンスの拡大

いきなり全てのプラスチック容器をエコ容器へ切り替えたり、環境保全の取り組みを大きく進めることは難しいと感じる場合は、まずは自分達に合った取り組みから始めてみましょう。

環境問題への取り組みが世界中で広がるなか、日本でも環境に優しい取り組みを進めることが重要視されるようになっています。
環境問題に取り組む姿勢が評価され、新たな事業や取引先の獲得に繋がりビジネスの拡大を期待することができます。

エコ容器への移行事例

エコ容器テイクアウトイメージ

前の章では、エコ容器導入による5つのメリットについて紹介しました。
実際に脱プラ、プラスチック削減の取り組みを進める企業、飲食店は増えてきましたが、どんなことから始めればいいのか分からず、なかなか取り組みを進められないことも多いと思います。

しかし、大きなコストや手間を必要とせず、比較的簡単にプラスチック削減に貢献できる方法もあります。
この章では、さまざまな企業が取り組んでいるエコ容器への移行事例についてご紹介します。

カフェなど飲食店のストロー

スターバックス、すかいらーくグループでは、国内外全店舗でプラスチックストローの廃止を実施しています。
プラスチックストローの代わりに、スターバックスでは紙ストロー、すかいらーくグループではトウモロコシ原料から作られているバイオマスストローを必要に応じて提供しています。

エコ素材のストローは従来のプラスチックストローに比べコストが4~10倍となる点や、耐久性が低いというデメリットも考慮する必要がありますが、対応策として

  • ストローなしで飲めるよう飲み口が付いた蓋に改良
  • 要望があったお客様のみにストローを提供
  • マイストロー持参の推奨

などの工夫でプラスチックストローの廃止を進めています。

また、2022年10月からはマクドナルドでも紙製のストローの提供が始まると発表されました。
同時にカトラリーやマドラーも木製に切り替えることが決定となり、合わせて年間約900トンのプラスチック使用量削減になる見込みです。

パックスタイル紙ストロー

お菓子の包装パッケージ

ネスレが2019年9月よりキットカットの包装紙を紙包装に移行し、さらに2022年までに個包装含め100%リサイクル可能、あるいはリユース可能にするという目標を発表しました。
この取り組みで年間380トンのプラスチック削減を期待することが出来るそうです。

キットカット紙包装

また、包装紙がごみになるなら食べてしまおう、といった取り組みも広がっています。

例えば、愛知県碧南市の株式会社丸繁製菓では食べられるトレー「イートレイ(eat tray)」を販売しています。イベント等で使われる使い捨て容器を食べられる器にすることで、プラスチックごみ削減に貢献しています。
他にも、インドネシアの企業Evoware社では海藻ベースで作られた包装紙「Seaweed-Based Packing」が話題となっています。水に弱い一方、賞味期限は2年と長く、お菓子はもちろん、様々なものを包装できます。

飲料のパッケージ

ローソンはPBブランドのカップ飲料でプラスチックの削減に取り組んでいます。

従来カップに貼られていた製品情報のフィルムを無くし、カップに直接印刷する仕様に変更することで、1本あたり約1.5g、年間約70トンのプラスチック削減を目指しています。
その他、カップ飲料のプラスチック製上蓋を廃止し年間約320トン、店内で提供するアイスコーヒーのカップを紙製に変更して年間約540トンのプラスチック削減を見込んでいます。

これらの取り組みには多大なコストがかかる場合がありますが、ローソンやその他の企業ではマイボトル持参でドリンクの割引キャンペーンも行っています。
このように、多大なコストや手間をかけることなくプラスチック削減に貢献している事例もあります。

エコ容器にはどのような種類がある?

エコ容器テイクアウトイメージ

今回の記事で紙に関する事例を多く取り上げているため、エコ容器=紙製と感じる方もいるかと思います。しかし、エコ容器は紙だけでなく数多くの材質と種類があります。
環境問題への意識の高まり、需要の増加に合わせて、今後さらに種類が増えていくでしょう。

材質ごとにメリット・デメリットがあるため、目的や企業イメージ、お店の雰囲気によって使い分けることが大切です。
この章では4つの材質の特徴についてご紹介します。ぜひ容器選びの参考にしてみてください。

1. FSC認証の紙

プラスチック削減の影響から紙素材を導入する企業が増えていますが、紙素材の需要が高まりすぎると、木材過剰使用で森林破壊問題の深刻化に繋がります。
この問題を解決するためには、FSC認証のマークに注目してみましょう。

FSC認証とは、FSC(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)の基準に則り、適切な森林管理を認証する制度です。
世界中で森林破壊や劣化が大きな問題となっていますが、木材は私たちの生活に必要不可欠な材質です。そこで、適切な管理が行われている森林の木を使い、森林破壊や劣化を招くことなく木材消費を促進ようという取り組みです。

プラスチック容器をFSC認証の紙から作られた容器に切り替えることで、プラスチックごみの削減に貢献することができます。
最近では持ち帰り用の紙袋や紙パック飲料、ストローなどにFSC認証の紙が使用されており、生活の中でFSCマークを見かける機会が増えています。

FSCマーク

2. 生分解性プラスチック

紙製品の導入はプラスチック削減に貢献出来ますが、中身が見えなくなるというデメリットがあります。「中身を見て商品を購入したい」という消費者の要望に応えるため、中身が見えるプラスチック容器を取り入れる場合があると思います。

そのような場合は、生分解プラスチックを使うのがおすすめです。
生分解性プラスチックは、使用後一定の条件のもと微生物によって水とCO₂に分解されます。

食品関係だとストローやトレー、弁当容器、レジ袋など数多くの製品に使うことが出来ます。
ただし、現時点では耐久性の低さや使い捨て前提の素材であること、分解スピードが微生物や天候に左右されるデメリットを持つため、他のエコ容器と用途によって使い分けることが大切です。

3. 植物由来原料

バガス(サトウキビの搾りかす)や麦などの不可食部分から作られる植物由来原料の資材が話題になっています。
本来廃棄されるものを原料として利用している、環境に優しい容器です。
100%天然素材から作られているため、生分解性があります。
耐水・耐油性があり、容器に入れたまま電子レンジで温めることもできます。

ただし、一般的なプラスチックに比べるとコストが高く、強度や、長時間の耐水・耐油性はありませんので注意する必要があります。

ABランチ150-150使用イメージ

4. 石灰石

石灰石を主原料とした「LIMEX(ライメックス)」という新素材が開発されています。

枯渇リスクが低い資源である石灰石を主な原料としており、耐久性、耐水性に優れている点が大きな特徴です。
さらに100%日本で自給自足が可能で水をほぼ使用せずに製造できるため、今後幅広い分野への展開が期待されています。

紙やプラスチックの代替品として活用できるLIMEXは、現在主にレジ袋、お皿、名刺などに使われています。
使用後は燃えるゴミとして処分できる反面、古紙としてリサイクルはできない点、コストが少し高い点がデメリットとして挙げられますが、環境問題への取り組みとして大きくアピール出来ます。

LIMEXレジ袋

エコ容器導入はメリットが多い

エコ容器使用イメージ

プラスチックはとても便利なため、現代に必要不可欠な存在であると言えます。
しかし、このまま何も対策をせずプラスチックを大量消費する社会が続くと、海洋プラスチックごみがさらに増加し、2050年には海洋プラスチックごみが海の魚の量を上回ると言われています。
海洋プラスチックごみが海の生物に悪影響を与えるのはもちろん、それを食べる私たちにとっても様々な悪影響を及ぼします。

エコ容器への移行はコスト面など負担が大きいことは事実ですが、早めに環境問題に着手することで、将来的に企業イメージアップ、新しいビジネスにつながるなど、大きなメリットを得られる可能性があります。
プラスチック使用量の削減を、小さなことから始めてみませんか。

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