深刻化する環境問題の解決につながるエコ容器の登場
近年環境問題が大きく取り沙汰され、私たちが暮らす地球の悲惨な現状が明らかになっています。
この現状を解決していくためには、国や自治体、企業、そして私たち一人ひとりが地球環境のためにできることを考え、行動しなければなりません。
食品業界においては、プラスチックで作られた容器やトレーが一般的に広く使われ、ごみとして大量に廃棄されていることが大きな問題となっていますが、最近ではその問題を解決する「エコ」なアイデアが詰まった容器が続々と開発されています。
今回の記事では、環境問題への意識が高まる中で登場した、さまざまな機能性を持つエコ容器をご紹介します。
日本が抱える環境問題の現状とは?
全世界で環境問題への関心が高まっています。
ここでは、日本が抱える3つの環境問題について、それぞれ掘り下げていきます。
- ごみ処理問題の現状
- プラスチックがもたらす環境への影響
- フードロス問題の現状
ごみ処理問題
家庭から排出される日本全体のごみの量は、1年間で4272万トン。
東京ドームに換算すると約115杯分で、ひとり当たり1日に約920グラムのごみを出しています。
ちなみに、この数字は家庭から出される一般廃棄物のみの量なので、産業廃棄物も加えれば、日本ではさらにごみを排出していることになります。
家庭ごみの内訳は、厨芥類(台所ごみ)、紙類、プラスチック類が大きな割合を占めています。
ごみは、リサイクルできるものとリサイクルできないものに分けられます。
リサイクルできるごみは、工場に運ばれて新しいものへと生まれ変わります。
リサイクルできないごみは、埋め立てをするために最終処分場に運ばれます。
最終処分場に運ばれてくるゴミは1年間で約400万トンなので、数字だけをみれば「家庭から排出されるごみの約90%がリサイクルされているのでは」と思われるかもしれません。しかし、実際には最終処分場にごみを運ぶ前に焼却工場でごみを燃やし、体積を大きく減らしているのです。
これは、日本の国土が狭く、最終処分場をたくさん確保することができないからです。現存する最終処分場は、約20年で満杯になるといわれているため、燃やすことでごみの体積を減らし、少しでも長く最終処分場が使えるようにしています。
日本では焼却処分が主流のため、燃やす際に発生するCO2の排出が大きな問題になっています。
さらに、ごみを運搬する際にも多くのCO2 が排出されているので、ごみを減らすことは温室効果ガスの削減にもつながるのです。
プラスチックがもたらす環境への影響
プラスチックが一般に広く普及したのは1950年代以降です。
現在の世界のプラスチック年間生産量は約3.8億トンで、この数字は過去50年間で20倍にも拡大しており、全人類の体重に匹敵する重量です。
日本は、世界でも有数の「プラスチックごみ大国」です。
2019年実績では、1年間で822万トンのプラスチックが廃棄されており、そのうち47.5%が使い捨て用途の容器・包装類です。
2018年6月に発表された国連環境計画(UNEP)の報告書「シングルユースプラスチック」によれば、日本人1人あたりのプラスチック容器包装廃棄量は、アメリカに次いで世界第2位となっており、過剰包装や利便性を重視したライフスタイルが、プラスチックごみを増やし続ける要因になっています。
一般的に使用されるプラスチックの多くは、石油由来の原料によって製造されています。限りある化石燃料を原料とするうえ、採掘・生産・廃棄、自然への流出も含め全ての段階で CO₂ を発生させ、環境に負荷をかけています。
また、プラスチックの多くは自然環境中で分解されにくいため、さまざまな環境問題を引き起こしています。
特に近年では、マイクロプラスチックの海洋汚染が深刻になっており、毎年約800万トンのプラスチックごみが陸上から海洋へ流出していると推定されています。海洋中のマイクロプラスチックについては、私たちは現時点でも、食物連鎖を通じて一人当たり毎週クレジットカード1枚相当の5グラムを摂取し、さらに2050年には海洋プラスチックごみの量は魚よりも多くなるとの報告もあり、極めて深刻な状況なのです。
フードロス問題の現状
まだ食べられるのに、捨てられてしまう食べ物のことを「フードロス(食品ロス)」といいます。食べ物を捨ててしまうのは、もったいないだけでなく、地球環境の悪化にもつながります。
国際連合食糧農業機関(FAO)の報告書によれば、世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンの食料が毎年廃棄されています。日本でも、1年間に約612万トン(2017年度推計値)の食料が捨てられており、これは東京ドーム5杯分とほぼ同じ量です。日本人1人あたりでは、お茶碗1杯分のごはんの量が毎日捨てられている計算になります。
日本での食品ロスの原因は、大きく分けて2つあります。
1つ目は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど小売店での売れ残りや返品、飲食店での食べ残し、売り物にならない規格外品といった事業系食品ロス(328万トン)です。
2つ目は、家庭での料理の作り過ぎによる食べ残しや、購入後使わずに捨ててしまうこと、料理を作る時の皮のむき過ぎなどの家庭系食品ロス(284万トン)です。
実は、開発途上国でも先進国と同様に食品ロスが発生しています。せっかく食べ物を作っても技術不足で収穫ができない、流通環境や保存設備、加工施設などインフラが整っていないため、市場に出回る前に腐ってしまうなどの理由でやむを得ず捨ててしまうことが多いのです。
捨てられた食べものは、焼却工場に運ばれ可燃ごみとして処分されますが、水分を含む食品は運搬や焼却の際にCO2を排出し、焼却後の埋め立ても環境負荷につながってしまいます。
日本は事業系食品ロスを、2030年度までに2000年度比で半減するという目標を立てており、同様に家庭系食品ロスについても2030年度までに半減させる目標を設定しています。私たち一人ひとりが身近なところから食品ロス削減を意識することが、目標達成には必要不可欠です。
エコにつながる具体的な取り組みとは?
このような深刻な環境問題の現状を改善していくためには、私たち一人ひとりが環境問題の現状と真剣に向き合い、地球未来のために行動していかなければなりません。
しかし、どこから手を出せば良いのかわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここからは、エコにつながる具体的な取り組みとして、下記について紹介していきます。
- ごみの容量を減らす
- シールやテープの使用量を減らす
- 発泡トレーに変更する
- フードロスを減らす
ごみの容量を減らす
ごみの容量を減らすことによって、廃棄物の運搬回数を減らすことができます。運搬回数を減らすことで、運搬にかかるエネルギー消費や CO₂ 排出を抑え、環境負荷の最小化につながります。
また、環境面だけでなく事業面にもさまざまなメリットがあります。ごみの容量が減れば、運搬回収にかかるコストや作業時間を減らすことができるので、廃棄物処理に関わるコストの削減にもつながります。
シールやテープの使用量を減らす
環境問題への意識の高まりから、食品スーパーなどでは今まで使っていた包装資材の見直しがされています。
特に見直すべきポイントは、シール、テープ類です。これらは、一度に使用する量は少なくても、年間で考えると相当な数量が使用されています。テープの幅を狭くするだけでも、十分にプラスチック使用量を削減できます。また、食品容器ではテープがなくても蓋がしっかり閉まる、嵌合性に優れた商品も数多く登場しています。
ちなみに、日清株式会社の「カップヌードル」では、プラスチック製の「フタ止めシール」を廃止し、2021年6月からシールがなくてもしっかり止められるような新形状のフタに切り替えが行われています。日清株式会社は、「フタ止めシール」の廃止によって年間33トンのプラスチック使用量が削減できるとしており、環境負荷の軽減だけでなく、コスト削減も同時に実現させました。
非発泡トレーから発泡トレーに変更する
発泡トレーは、5~10%のポリスチレン樹脂と90~95%の空気によってできています。
その原料は石油ですが、使用量はごくわずかなので、他の石油製容器よりも省資源でできています。
フードロスを減らす
スーパーの売り場などに並べられるお刺身ですが、「ツマは食べない」という消費者も多く、家庭ごみとして捨てられてしまうケースが少なくありません。このような余分な食材を極力なくすことで、フードロスの削減にも貢献できます。しかし、やりすぎてしまうと食材の見栄えや彩りが見劣りし、消費者の購入につながらない場合もあるので、容器や盛り付けなどに工夫が必要です。
エコにつながるおすすめの容器の紹介
ここまでは、エコにつながる具体的な取り組みについて紹介してきましたが、ここからはエコにつながる機能性容器を紹介します。
ごみの減容化でエコ!「TFボウル」
中央化学株式会社の「TFボウル」は、ペットボトルのリサイクル原料を使用した容器で、中身が入った状態ではつぶれにくいですが、空の状態で上から一定数の力を加えるときれいにつぶれる構造になっています。つぶして捨てることで、ごみの減容化(減容化率約50%)につながります。これによって、ごみ袋の使用量が減らせるため、余分なコストも削減できます。
さらに、ごみ収集車の運搬回数も減らし、運搬にかかるエネルギー消費や CO₂ 排出を抑えることができ、環境へ負荷も軽減できます。
切り取って小分けでエコ!「キリトレール」
リスパック株式会社の「キリトレール」は、トレーの真ん中にミシン目が付いているので、大容量パックでも量目がわかりやすく、使う分だけ中身を取り出して切り取れば、そのまま冷蔵庫へ保管できます。
コロナ禍によって内食の需要が拡大したことで、食材のまとめ買いをする消費者が多くなっていますが、スーパーで精肉の大容量パックを買うと、ラップなどで包んで小分けするのが手間なので、小容量パックをいくつも買うという方もいるのではないでしょうか。しかし、そのような行動はスーパーなど店舗におけるトレーやラップの使用量を増やすことになってしまい、家庭ごみも増えてしまうため、決して環境に良いとはいえません。
そこで、「キリトレール」は、トレーの真ん中のミシン目で切り取れば、大容量でも小分けの手間を省くことができ、残りはそのまま冷蔵庫へ保管できるので、プラスチック使用量の削減やごみの減容化につながるエコな便利トレーです。
テープなしでエコ!「BFNホットカツ」シリーズ
シーピー化成株式会社の「BFNホットかつ」シリーズは、商品を持ち上げた時やテイクアウト時にも蓋が外れにくい「強嵌合」を採用しているため、容器本体と蓋のテープ止めは必要ありません。そのため、プラスチックの使用量を削減でき、作業効率アップにもつながります。
この容器は、盛り付け面が傾斜状になっているので、とんかつのボリューム感をアピールでき、ズレを防止するストッパーも付いているため、きれいな盛り付け位置をキープできます。
傾斜面奥側の空間にソースを立てかけたり、キャベツの盛付けをすれば、主役の食材の⾒栄えを遮ることなく、機能的にスペースを有効活用できます。また、植物由来の原料を10%配合しており、環境にも優しい容器です。
ツマを減らしてコスト削減!「Uステージ盛台」シリーズ
株式会社エフピコの「Uステージ盛台」シリーズは、本体が発泡性素材(PSP)で、蓋もしっかり閉まるので、テープ止めは必要ありません。そのため、プラスチック使用量を抑えることができます。
こちらの容器は盛台形状なので、ツマも減らせるうえ、時間が経っても刺身のボリューム感をキープします。ツマは食べずに捨ててしまう消費者も多いので、フードロス削減にも貢献できる環境に優しいエコな容器です。
エコな容器の採用がどんどん広がっていく!
今回は、日本が抱える環境問題の現状とその解決につながるエコな最新容器をご紹介しました。
環境問題への危機感が高まるなか、世界各国ではさまざまな取り組みが行われており、特に使い捨てプラスチックの使用量が多い食品業界においては、エコにつながる商品への切り替えが急速に進められています。
今後も環境に優しいエコ容器などが続々と登場し、世の中へ普及することによって、環境問題は少しずつ解決へと向かっていくことでしょう。