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脱プラスチックはなぜ必要なのか。国内外の取り組みと脱プラに向けたエコ容器の紹介

2021.08.20

脱プラスチックは世界的な課題

2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を皮切りに、2019年のプラスチック資源循環戦略の策定や、G20大阪サミットでの大阪ブルー・オーシャン・ビジョンの提言など、日本でも脱プラスチックについて関心が高まっています。
しかし、脱プラスチックがなぜ必要なのかについて、まだまだ十分な理解が進んでいないのが現状です。ここでは食品事業者の皆様に向けて、脱プラスチックが必要な理由や国内外での脱プラスチック問題、具体的な取り組み事例などについて解説していきます。

国内外の企業が脱プラスチックに取り組む理由

プラスチックは軽い、耐久性が高い、加工しやすいなどのメリットがある一方、自然分解されず、環境中に流出すると半永久的に残ってしまう点が大きな問題です。以前よりも企業の社会的責任は増し、機関投資家や個人株主までも投資先を選ぶ際、企業のESG(※)への取り組み度合いが高いか低いか注目するようになってきました。このことが、国内外の企業が脱プラスチックに取り組む背景の一つにあります。

※ESG:Environment(環境)・Social(社会)・Governance(統治のあらゆるプロセス)の頭文字から取った言葉

廃プラスチックが汚染する3つの環境

プラスチックごみのイメージ

海洋汚染
使用後にごみとなったプラスチック製品のうち、適切に処理されなかったものの多くは海へと流れます。そして波や風、紫外線にさらされてマイクロプラスチックとなります。マイクロプラスチックは海や海洋生物、最終的には人間にも化学的被害、物理的被害などの悪影響をもたらす存在です。

海への影響
海水には、農薬や潤滑油などの汚染物質が低い濃度で含まれています。こうした汚染物質は油と親和性があり、原油由来のプラスチックは汚染物質を吸収する性質があります。その結果、プラスチックは汚染物質を吸着しながら広い範囲を移動し、海洋汚染を広げてしまうのです。

海洋生物と人体への影響
魚が海に流れたマイクロプラスチックを食べると、プラスチック自体は体外へ排出されますが、食べたプラスチックに含まれる有害な汚染物質は魚の体内に蓄積し、炎症反応や摂食障害を起こすとされています。
そして、汚染物質を体内に含んだ魚を私たちが食べることで、ガンの発生や免疫力低下、生殖能力低下といった健康被害を起こすと考えられているのです。

水産業への影響
水産品へ細かいごみが混入すると、ごみの取り除き作業が発生するだけでなく、商品価値を下げてしまいます。ごみの取り除きについては、その確認にも相当な手間がかかり、漁業者はかなりの負担を強いられることになるのです。
それに加え、社会全体の経済損失にもつながります。実際、海洋プラスチックごみが大きな問題となっているアジア太平洋地域では、漁業や養殖業で年間3.6億ドルもの損失が出ているとされています。

観光業への影響
海水浴やダイビングなどのマリンレジャーを、美しい海で楽しみたいと考える観光客は多くいます。
しかし、プラスチックなどにより汚染され、美しさが損なわれた海では、観光客の足は遠のいてしまいます。
海は貴重な観光資源の一つです。環境汚染が原因で観光業への収入が減少すると、経済的にも大きな損失になります。こちらも、アジア太平洋地域での観光業での経済損失は、年間6.2億ドルともいわれています。

土壌汚染
プラスチックごみは燃やして処理することもありますが、土に埋められることも多くあります。しかし、埋めたまま放置されると土の中に含まれる水分や化学物質などがプラスチックと反応し、有害物質を発生させるなど、深刻な土壌汚染につながる可能性があります。

大気汚染
放置されたプラスチックごみが劣化する過程で、メタンなどの温室効果ガスが発生することが近年の研究で判明しました。また、何らかのきっかけで放置されたプラスチックが低温で燃えると、ダイオキシンなどの有害物質が発生することも知られています。
このようにプラスチックごみの放置によって、大気汚染や地球温暖化進行が懸念されるでしょう。

日本国内における脱プラスチック問題の現状

プラスチックごみのイメージ

この章では日本国内における、脱プラスチック問題の現状について説明します。

廃プラスチックの処理問題

2018年のUNEP(国連環境計画)による報告書『シングルユースプラスチック』によると、日本人1人当たりのプラスチックごみ発生量はアメリカに次いで世界第2位となっています。

日本は2017年まで、廃プラスチックの半分量を中国に輸出して処理を任せていました。しかし中国国内の環境問題が悪化したことから、中国が廃プラスチックの輸入を規制したため、近年はプラスチックごみの行き場がなくなってきている状況です。

2018年以降は東南アジアや台湾などへの輸出を増やしているものの、これらの国々も廃プラスチックの輸入基準を厳格化する動きを見せています。そのため、今後も同じ水準で輸出を続けることは難しく、日本は早急に大きな転換をする必要があるといえるでしょう。

廃プラスチックごみのリサイクル状況

リサイクルのイメージ

プラスチック循環利用協会の2017年の発表によると、日本ではプラスチックごみの約86%が有効利用されており、以下の3つの手法でリサイクルされています。

マテリアルリサイクル
廃プラスチックを原料としてプラスチック製品に再生する手法です。「材料リサイクル」ともいいます。もう一度プラスチック製品化し、飲料用ボトルや作業着、コンテナ、建設資材から自動車部品に再生する手法です。

ケミカルリサイクル
化学的な分解などにより、廃プラスチックを化学原料に再生する手法です。素材を分解して、製鉄所で温度を上げる材料や、ガスや油にして燃料として再利用する手法です。

サーマルリサイクル
廃プラスチックの素材を分解して固形燃料に変えたり、焼却後熱エネルギーを回収しセメント製造時の原燃料にしたりする手法です。ケミカルリサイクルと大きく違う点として、焼却して発生する熱エネルギーを温水プールや暖房、発電などに形を替えて再利用する手法です。

海外における脱プラスチック問題の現状

世界的に見た場合、積極的に脱プラスチックを推進している国は多くあります。
この章ではEU、アメリカ、中国、インドの取り組みをご紹介します。

EUの取り組み

プラスチックリサイクルの経済性及び質の改善
2030年までにすべてのプラスチック容器包装のコストを抑え、効果的にリユースやリサイクル可能にすること。
また、再生プラスチックの品質基準設定や分別収集と選別のガイドライン発行などによって、リサイクルによる経済の向上と高品質化を目指した方針です。

プラスチックの廃棄と投棄の抑制
プラスチックごみと海洋ごみ削減を目指す取り組みです。使い捨てプラスチックに法的な対応や、海洋ごみのモニタリング調査、マイクロプラスチックの意図的な添加の抑制、製品からの非意図的な排出の抑制、などの取り組みを行なっています。

技術革新・投資促進
商品の製造時から消費、破棄にいたるまで価値を損なうことなく、できる限り長く保ち再利用していくことで、破棄対象のプラスチックを極力少ない状態に抑えていくという考え方です。
この方法で、ヨーロッパではすでにコストを6,000億ユーロ節約、EU域内で8%の年商増加、温室効果ガスの総排出量2~4%の削減などの効果を上げており、プラスチックに対してより戦略的な研究・イノベーションを推進するため1億ユーロの追加投資を計画しています。

国際間取り組みの醸成
さらなる努力を各国に求めるため、国際行動の申し入れや多国間イニシアティブの援助、欧州外部投資計画などの協調ファンドの造成などを取り入れ、国際的なアクションの醸成を推進していく方針です。

アメリカの取り組み

各州や企業単位で積極的に脱プラスチックを推進しています。
カリフォルニア州やニューヨーク州を含む8州でレジ袋廃止、または廃止予定としています。ワシントン州シアトルの飲食店においては、プラスチック製のストローやスプーン、フォークなどの配布を禁止しました。

中国の取り組み

2021年から飲食店では使い捨てストローの提供を禁止しました。
2022年までに中国全土においてプラスチック袋を原則使用禁止に、宿泊施設では2025年以降、使い捨てのプラスチック製アメニティの無料提供を終了する予定です。

インドの取り組み

使い捨てのプラスチック製ストローや小型ペットボトル、皿、ビニール袋、特定の個別包装などの使用を全国で禁止にする施策を2022年までに開始すると宣言しています。

国内外のプラスチック削減事例を紹介

紙ストロー

国内外では具体的にどのような取り組みをしているのか、それぞれプラスチック削減の事例を紹介します。

国内での削減事例

外食チェーン

スターバックス
2020年1月より段階的に使い捨てプラスチック製ストローから紙製ストローへの切り替えを開始しています。2020年3月には1,500店以上の日本のスターバックス全店舗において実施されました。

マクドナルド
すでにイギリスとアイルランドの1,000以上の店舗で紙製ストローへの移行を進めており、2025年までには世界の全店舗の移行を完了予定としています。

すかいらーく
プラスチック製ストローを2019年6月6日より約1,400ある全店舗で廃止し、さらに国内のグループ店舗の約9割にあたる2,700以上もの店舗でストローを廃止しています。

小売業

サントリー
植物由来の原料を100%使用したキャップ(※)を飲料用のペットボトルに世界で初めて採用しました。100%植物由来ペットの普及など、環境負荷の低いペットボトル開発やリサイクルシステムの実現に取り組んでいます。
2025年までの目標として国内における清涼飲料事業で使用する全ペットボトル重量の50%以上に再生ペット素材を用いることを発表しました。
※主原料のエチレンを100%植物由来にしたポリエチレン製のキャップ。
(製造ライン切り替えた際のごく少量の着色剤成分や石油由来成分を除く)

イオン
2050年 CO2を排出しない持続可能なプラスチックの実現を目指し、2030年までに、使い捨てプラスチックの使用量を2018年比で半減させるとしています。
2030年までには、すべてのPB商品で環境・社会に配慮した素材を使用し、同年までに、PB商品のペットボトルを100%再生あるいは植物由来素材へ移行することを目標に設定しています。

海外での削減事例

小売業

イケア
ホームファニッシング製品に対して使い捨てプラスチックを使用することを2020年1月に世界中で廃止しました。これには、プラスチック製ストロー、プレートやカップなども含まれます。イケアレストラン、カフェ、ビストロでは使い捨てプラスチック製品も、よりサステナブルな使い捨てアイテムに切り替えています。

ユニリーバ
プラスチックパッケージを全世界で2025年までに10万トン削減し、販売量よりも多く回収・再生できるよう支援しています。

観光宿泊業

マリオット
2020年12月までにアメニティの一部を廃止すると発表しました。廃止対象は、ボディソープのプラスチック製ミニボトル、シャンプーやコンディショナーで、大型のポンプ式ボトルに切り替える計画です。
2019年9月時点で、北米にある1,000軒以上の宿泊施設でバスアメニティの切り替えを完了しています。大型ボトル1個の容量は小型ボトル10~12個分で、切り替えで年間約5億本のペットボトル、重さに換算して約770万トンのプラスチック、年間30%の削減につながります。

ウォルト・ディズニー
2018年、ホテルやクルーズ船のバスアメニティの切り替えにより、客室内のプラスチックを80%削減すると発表しました。さらに、リゾートやテーマパークすべてから使い捨てプラスチック製マドラー、ストローを廃止し、マドラーは年間1,300万本以上、ストローは1億7,500万本以上の削減を目標としています。

自動車メーカー

ボルボ
全世界でのイベントやオフィス、社員食堂で使い捨てプラスチックを2019年中に使用停止に。
また、2025年までにすべての新車種で使用する部品のプラスチックの25%以上を再生素材に移行すると発表しました。

プラスチック問題に取り組むメリット

このように、日本をはじめとする世界中の国々で、プラスチック問題に対する規制や政策がより厳しくなってきました。
国内においては、大手外食チェーン、食品メーカー、コンビニ、スーパーなど、幅広い業種や規模の企業で、プラスチック問題への対策として、エコ容器・エコ資材の採用が非常に速いスピードで進んでいます。

プラスチック問題に取り組むことは、一人当たりのプラスチックごみ排出量が世界2位の日本にとっての責務ではありますが、同時に企業として取り組む場合にメリットもあります。
この章では、エコ容器を導入した際に得られるメリットを5つ解説していきます。

① 環境への配慮

エコ容器導入による1番のメリットは、環境保護に大きく貢献できることです。海洋プラスチックごみの削減だけでなく、地球温暖化防止や資源の枯渇防止につながるなど、さまざまな面で環境保護に貢献出来ます。

② 企業イメージの向上

テレビ番組やネットニュースで環境問題について取り上げられることが増え、消費者にとって身近な話題になり、以前に比べ関心が高まっています。
消費者の関心が高まると環境問題に取り組むことが当たり前という認識が広まり、環境破壊をもたらすような商品を取り扱う企業は消費者から非難されたり、信頼を失う事にも繋がりかねません。

その反面、環境問題に取り組むことで消費者からの信頼を獲得し、企業のイメージアップに繋がります。エコ容器へ入れ替える事はコストがかかる場合もありますが、エコ容器を導入した事例を発信することで、この取り組みが広告となり、集客効果や大きな収益に繋がることもあります。

③ おしゃれなイメージの打ち出し

中食化が進み、飲食店や惣菜コーナーのテイクアウト需要が高まっています。さらにSNSの影響から料理に美味しさだけでなく見栄えやおしゃれさを求める若者が急増しており、今後、容器選びがさらに大切になるでしょう。

エコ容器はプラスチック容器と比べ、クラフト紙や木材、バガスなどの天然素材などを使用しており、素材の特徴をそのまま表現できます。それが、商品によってはオシャレにもつながります。お店や料理のテイストに合わせて材質だけでなく、数多くの形状から容器を選ぶこともできます。中身にあったエコ容器で見栄えを良くし、集客率のアップにもつながります。

④ 経営リスクの回避

環境問題は地球上全ての生き物に影響があり、レジ袋の有料化など日常生活に関わることも多いため、関心を示す人が増えてきました。そのため、大手企業だけでなく様々な規模、業種で環境問題への取り組みが進んでいます。つまり環境保護やSGDsへの取り組みに注力しなければ、社会からの信頼を失うだけでなく、ビジネスパートナーを喪失することに繋がりかねません。

社会の流れに遅れを取らないためにも、小さなことから少しずつ環境問題に取り組んでいく必要があります。

⑤ ビジネスチャンスの拡大

環境問題への取り組みが世界中で広まっており、日本でも環境に優しい取り組みを進めることが重要視されるようになっています。
しかし、いきなり利便性の高いプラスチック容器から全てをエコ容器へ切り替えることや、環境保全の取り組みを進めることは難しいと考えます。そのため、自分達に合った、自分達でもできる環境問題から取り組みましょう。
環境問題に取り組む姿勢で、新たな事業や取引先の獲得に繋がりビジネスの拡大を期待することができます。

環境に優しいエコ容器 バガス容器の紹介

バガスとは、「さとうきびの搾りカス」です。従来から主にボイラーの燃料などで使われていましたが、使いきれない場合は廃棄していました。
それを食品容器の原料として再利用するため、非常に環境に優しい容器です。

100%天然素材から作られるため100%生分解できるだけでなく、耐水・耐油性があり、製品によっては電子レンジを使用することもできます。
ただし、一般的なプラスチックに比べるとコストが高く、多少強度が劣る点や、長時間の耐水・耐油性はありませんので、注意が必要です。

BBランチシリーズ

環境問題は世界的な課題

SDGs(持続可能な開発目標)が国連で採択されるなど、いかに環境問題へ取り組むかはグローバルな課題です。
今回説明したように、プラスチックごみが海へ流れ込んでマイクロプラスチックとなると、海や海洋生物、ひいては私たち人間にもさまざまな被害をもたらすと考えられています。このような被害や環境への負荷を減らすために、すでに国内外の多くの企業では、廃プラスチックを削減するための取り組みを始めています。

多くの企業の取り組みを参考に、食品事業者の皆様は、脱プラスチックの必要性について改めて考えてみてはいかがでしょうか。

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