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特集+(プラス)高質路線
「価格競争」だけでは生き残れない。
既存店に高質型の店舗を追加することにより、
新たな顧客層開拓に挑むローカルチェーン2社を追った。


高質化で価格競争からの脱却をめざす!
ローカルチェーンの生き残り戦術。


「株式会社フードD」

 大手SMチェーンの出店により、激しい価格競争が繰り広げられる北海道・札幌エリア。その中にあって、株式会社豊月は、「もはや価格競争だけでは生き残れない」との判断から2年前、思い切った高質路線への転換に踏み切った。高質SM4店舗体制となった同社のいまに迫った。

 海道・札幌エリアは、年商3000億円のアークスグループと、同2500億円のコープさっぽろ、そしてイオングループの3強が価格競争を繰り広げる全国屈指の激戦エリアである。さらに2008年、トライアルカンパニーの北海道に進出によりディスカウント競争はますます激化し、ローカルチェーンは厳しい状況に追い込まれている。

 苫小牧市を本拠とする株式会社豊月は、現在、道南を中心に13店舗を展開する。もともとグロサリーを中心としたDSとしてスタートした同社であったが、価格競争力の強い競合店の出店が続き、従来型のモデルが通用しなくなった。そこで同社は9年前より「クオリティ&ディスカウント」という新たなコンセプトを掲げ、低価格に加えて品質も追求する方針に転換。「食彩館」という名称で新たな店舗展開に取り組んできた。

 従来型の価格訴求の施策の柱は、5日、15日、25日に実施する「五の市」。毎回特定の商品を格安で販売するタイムサービスなどを実施し、合わせて毎回ほぼ同じ内容のチラシを繰り返し配布することで、商圏内の認知度を高めてきた。その一方で、鮮度へのこだわりによる生鮮の強化、こだわり商品の充実をはかることで高質SMへの転換を模索してきた。こうした高質路線をさらに一歩推し進めた展開がはじまったのが、2010年に入ってからのこと。9月に「フードDリスタ店」(江別市)、同年11月に「フードDヴィアン店」(苫小牧市)を立て続けにオープン。翌11年4月には、既存店を「フードDバリュー店」(札幌市)に改装。さらに同年9月には「フードDボスコ店」(札幌市)を新規オープンし、新型の高質SMは4店舗体制となった。

 同社がDS店の展開を主体としているときは、年収500万円以下の層をターゲットとしていたが、これからは700〜800万円の層も取り込める店づくりをしていこうとの考えで高質SMの展開に切り替えたという。安売りだけを続けていたら、大手のディスカウント店にはかなわない。生き残るためには、より幅広い所得層を取り込んでいかなければならないというのが同社の認識だ。

 新型の高質SMは、「クオリティ&ディスカウント」のコンセプトを踏襲しつつも、既存店より一歩も二歩も高質路線を推し進めた店づくりがなされている。強化を進める生鮮の中では、特に同社の戦略部門に位置付けられている鮮魚に力を注いでいるという。毎朝、苫小牧漁港から直送された朝どれ商品が並ぶ。鮮度の良さはもちろん、豊富な魚種と量は競合店を圧倒するほど、同社の一番の強みとなっている。鮮魚売り場は、対面式のオープンキッチンを導入。お客との対話を重視した活気のある売り場づくりが展開されている。リスタ店では日曜日ともなれば開店直後から閉店間際まで4名体制で休む間もなくお客の購入した魚を調理する。30分待ちもざらという盛況ぶり。また「今日はカ スベが安いですよ、煮つけ、唐揚げにいいですよ」といった威勢の良い声が飛ぶ。

 北海道では、家庭料理を手作りする人がまだ多く、素材がよく売れる地域であるため、業界全体的に総菜の強化が遅れているといわれる。しかし高齢化の進展は進んでおり、北海道においても確実に総菜のニーズは高まってきている。そこで、同社においても総菜の強化は急務と捉え、高質SMの4店舗は、デリカにオープンキッチンを導入した。商品開発にホテルの元シェフを迎え、オムレツやシチュー、丼などを開発。「おいしい」とお客の評判も上々で固定客もついているという。ただ、売上高構成比でいうとまだ7%程度なので、将来的には10%を超えるところまで持っていきたいとのことだ。

 同社では、対面式販売を活かすためには、お客様との会話力が重要であると考えている。ライブ販売と言っても、コミュニケーションがなければ活気が生まれない。その点、鮮魚コーナーではそれがよく実践できているという。 18〜20%という売上高構成比にあらわれている通り、鮮魚は同社の一番の強みになっている。

 また、青果部門においても、対面売場を導入。大根やキャベツといった差別化が難しい商品については競合店と価格を合わせているが、嗜好品の要素が強い商品で利益率を高めるべく、フルーツをその場でカットするなど、お客と会話しながら販売できる体制を整えた。やはり、ここでも従業員のコミュニケーション能力がカギとなるのだが、そのための人材教育が同社にとっての課題となっているようだ。

 高質SMでは接客やクリンリネスにおいて高いレベルが求められるため、人材教育が重要になる。ところが同社は、もともとDSを中心に展開してきたため、まずは価格を優先し、接客やサービスは二の次にしてきたところがある。最初から高質SMの会社に入社した人間であれば、当たり前のようにできるのだろうが、途中から切り替える場合は難しい。店が変わっても従業員は変わらないので、どうしても教育に時間がかかってしまうことが、同社にとって目下の課題となっている。

 人材教育にある程度時間がかかるように、お客に対しても、高質SMのコンセプトを浸透させていくには時間がかかる。DSのようなわかりやすい業態であれば、認知度アップにさほど時間はかからないだろうが、高質SMの場合、足を運んでもらって、店の良さを実感していただいて、少しずつ浸透させていかなければならない。そのため、高質SMは、既存店と比較するとオープン時の売上は、どうしても下がってしまう。それでも同社は、2〜3年はかかるだろうという覚悟で高質化に取り組んできた。2010年のリスタ店のオープンから2年が経過して、着実に売り上げが伸びてきており、いまは確かな手ごたえを感じているところだ。

 今後は、既存店の高質化にも取り組んでいきたいとのことだが、そのためにはさらなる従業員のレベルアップが必要だという。新しい試みというのは、上からの押しつけでやらせているようではだめだというのが同社の考え。トップダウンではなく、ボトムアップで成長していける企業をめざしている。

 株式会社豊月が、生き残りをかけて取組みをはじめた高質路線への転換。徐々に結果が出始めたいま、さらに大きな成果につなげるために、同社のチャレンジは続く。

鮮魚売り場には大型のオープンキッチンを
採用。4人体制で調理にあたっている。




カウンター越しにお客と対話することで
コミュニケーションが深まる。




毛ガニの試食販売も盛況。



高質SMとして2010年9月にオープンした
「フードD LISTA店」(江別市)



オープンキッチンを設えた惣菜売り場は
手づくり感にあふれている。




鶏肉たっぷりのチキンライスを封じ込めた、
名物「とろたまオムライス」(398円)




昔ながらの甘めテイストが人気の
「昔ながらのナポリタン」(298円)




アイランド型のオープンキッチンで
天ぷらを揚げる。




青果売り場のオープンキッチンでは
カットフルーツを作る。




精肉売り場では試食販売を実施。





 
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